新型コロナウイルスの影響で、県内でも夏祭りが軒並み中止となる中、2021年 2年ぶりの開催が決まった「にいがた総おどり」。
しかし今、踊り子たちの足元を支える下駄に異変が起こっている。

外出自粛で「下駄」を履く機会が減少

2021年で20周年を迎える「にいがた総おどり」。
迫力のある舞いに欠かせないのが、音で一体感を演出する“下駄”の存在だが…

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街の人:
(下駄を)履く習慣がない

街の人:
祭りでもスニーカーを履くことが多い。私もサンダル

街の人:
特に去年、今年は祭りに出られないから。履くのは総おどりくらい

そもそも下駄を履く機会が減っている中で、2020年から祭りの中止も相次いでいる。

小林履物店4代目・小林正輝さん:
正直うちも大きな打撃を受けた

下駄を専門に扱う、1919年創業の小林履物店。
4代目の小林正輝さんはお客の足に合わせて、その場で鼻緒を繕う“セミオーダーの下駄”にこだわる全国でも数少ない職人。

小林履物店4代目・小林正輝さん
小林履物店4代目・小林正輝さん

そこで、長谷川珠子アナウンサーもセミオーダーの下駄を作ってもらうことに。
数種類ある中から長谷川アナウンサーが選んだのは、灰色の鼻緒。

小林履物店4代目・小林正輝さん:
これ実は紳士物。でも最近、紳士物を選ぶ女性が増えた。昔は赤っぽいものを選んだけど、最近は「赤くないほうが良い」と言う方が多くてびっくりする

こうして約10分で完成した下駄は…

長谷川珠子アナウンサー:
合わせてもらったのでぴったりフィットしますし、鼻緒のところも無理なく、はまっている感じがします

小林履物店4代目・小林正輝さん:
だいたい身の丈とか見ると、こんな感じかなと。会話しながら合わせていくと、うまく履きやすいものが作れる

会話を大切にする下駄職人

今はインターネットやデパートでの販売にも力を入れる小林さんだが、職人として大切にしているのは客との会話。

小林履物店4代目・小林正輝さん:
対話して物を作るというのは、ものすごく良いこと。大事にしていきたい、貴重なものだと思っているので絶やしたくない

しかし、新型コロナウイルスの影響は大きく、売り上げは感染が広がる前と比べて半減していると言う。
それでも小林さんが下駄作りにこだわるのは…

小林履物店4代目・小林正輝さん:
20年前から、「にいがた総おどり」や地域の文化など色々なものに関わってきた。僕が下駄を作ることによって、その人たちの助けになったり、古くから続く文化を好きになってくれる人が増えたり、そのような“つなぎ目”になれたらという気持ちがすごくある

全国的な助け合いの中から、良い素材集めて作った下駄

実は小林さんは、「にいがた総おどり」で使う歯の高い「小足駄(こあしだ)」の製作を1人で担っている。

小林履物店4代目・小林正輝さん:
昔、沼垂や新潟駅周辺は沼地が多くて、橋がいっぱいかかっていた。その橋の上で踊るときに、この歯の下駄のほうが音がダダダっと鳴って、太鼓がいらないくらい賑やかな祭りだったと言われている

小林さんの小足駄を愛用する踊り子たちの評判も良い。

踊り子:
(鼻緒を)替えられるのは小林履物店さんだけで、柔らかくて良い。長く履ける

2年ぶりの開催、そして「にいがた総踊り」20周年に向け、練習に励む踊り子たちへ、小林さんは記念の刻印が入った小足駄の製作を提案。
高級下駄に使われる“正絹鼻緒”を、東京・浅草の鼻緒店から特別に譲り受けたと言う。

小林履物店4代目・小林正輝さん:
お互い全国的なところで助け合いをしながら、良い素材を集めて作った下駄

ーー支え合いから生まれた小足駄を履いた感想は?

踊り子:
生地の肌触りも良くて、三日三晩踊れそうなくらい履き心地が良い。軽やかな音というか、いつもよりも響く良い音になっている

その出来には踊り子たちも大満足の様子。

新潟総踊り祭実行委員会・岩上寛総合ディレクター:
小林さんのご尽力がなければ、「にいがた総踊り」をここまで広げることはできなかった。こうして祭りを応援していただいていることがありがたいし、パートナー。
新潟の文化を守っていただいていること、それに少しでも私たちの活動がプラスになっていることが非常にありがたいなと思っている

新潟が育んできた文化を守り育てるため、強く結ばれていく絆。

小林履物店4代目・小林正輝さん:
これもまた運命かなと思うし、人とのつながりの中で下駄を作るという使命があるのかなと思っている。これからも感謝の気持ちを忘れないで50年、100年後も続けられたら

多くの人の縁を育みながら、下駄文化は受け継がれていく。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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