新型コロナウイルスの感染拡大はいまだに終息の兆しが見えない。
シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。
今回は、福岡県飯塚市にある、飯塚病院感染症科部長の的野多加志先生に、「ファイザー」「モデルナ」のmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンのメカニズムとその有効性などについて話を聞いた。
この記事の画像(7枚)ワクチンのリスクをどう考える?
飯塚病院感染症科部長・的野多加志先生:
ワクチンを打った後に亡くなったという事例が報道されていますが、因果関係を説明するのは非常に難しいことです。
もしかしたらリスクはゼロじゃないのではないか、という不安が出てきます。 これは今回のワクチンに限らず、いろいろな新薬において議論が過去にされてきました。
「亡くなった」というのと、「ワクチンを打った」ということの因果関係は、現状の流通しているワクチンではほぼ無いと科学的には考えられています。
それは我々日本よりも世界中で先に打ったデータを元にしているので、かなりの膨大なデータからこのワクチンと死亡の因果関係はかなり低いというふうに考えられています。
もちろんゼロかと言われるとわかりませんので、今後データの蓄積が必要になってきますが、個人的には朝お茶やコーヒーを飲んで亡くなった方が、それが死亡原因だとするのと同じような状況だと思っていますので、因果関係はかなり薄いと考えて良いと思います。
mRNAワクチンの特徴は?
新型コロナウイルスワクチンで話題になっている「mRNAワクチン」(メッセンジャーRNA)とか、「ウイルスベクターワクチン」などいろいろな名前が出ていますが、日本で採用されていて、かつ流通しているファイザー社とモデルナ社に限っては、今までの生ワクチンや不活化ワクチンというカテゴリーとは、全く別のカテゴリーになります。
とっても弱い、あっという間に消えてしまう「mRNAワクチン」という情報伝達物質を体の中に入れて、ウイルスのごくごく一部が入ったかのような錯覚を起こして体の中で免疫を作るのが「mRNAワクチン」です。
今回の新型コロナウイルスは、トゲトゲが付いていますよね。
あれは体の中に入るときに必要なものですが、スパイクタンパクという部分にだけ攻撃できるような小さな鋳型を作るような、いわゆるひな形を体に入れて免疫を作ってあげる。
体の遺伝子を書き換えることはない
遺伝子の鋳型みたいなものを入れるとなると、体の遺伝子が書き換えられそうと不安に思われている方も多いんですけど、実はこのmRNAというものは、DNAの中に送り込むことはできません。
体の中に遺伝子を組み込んでいるのではなく、体の中なんですけど、核と言われている遺伝子の中じゃないところに置いておいて、そこを読みに行くようなイメージ。
一般的には筋肉の中にいると最も免疫が起こりやすいと言われていますので、だから筋肉注射なんです。
体の中に入って、それほど長くは持ちません。mRNA自体は数日で失活すると言われていますので、その数日間で体が免疫を呼び起こしてしばらく効果が発動するという、上手く出来たワクチンです。
(後編:なぜ接種2回目は副反応が大きい? 「ファイザー」「モデルナ」ワクチンを感染症専門医が解説)
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