悪縁を燃やして灰に…病気の縁切りを願う女性
愛知・愛西市にある「大法寺」は、「縁切り寺」として信仰され、人間関係や病気など様々な悩みを抱えた人が、多い時には1日30人訪れる。
コロナ禍で、参拝客が倍増しているという「縁切り寺」には、悪い縁と向き合い、心機一転スタートを切る人の姿があった。
この記事の画像(23枚)「縁切り寺」として信仰されている、愛知・愛西市の室町時代創建の「大法寺」。
午前9時、2020年8月に大きい病気が分かり、現在治療中という女性がやってきた。願うは、病気の縁切りだ。
まずは、切りたい縁を絵馬に書く。そして人型の赤い紙にも…。女性は「治療の副作用」など切りたい縁を10個書いた。
住職の長谷雄蓮華さん:
赤い紙を1枚ずつ胸に当ててください。思いを込めてください。嫌なこと、辛かったことを全部、体の中から出す、そんなイメージで息をふっとかけて炎で燃やしてもらっていいですか
燃えて灰になる人型の赤い紙。一枚一枚、思いを込めて…。
悪縁を灰にした後は境内へ。境内にある樹齢650年のクスノキ。この大木に宿る、龍神の力で悪い縁を絶つと言い伝えられている。女性は、御神木を時計回りに3回周り、絵馬を奉納した。
縁切りに訪れた主婦(40代):
きれいに縁が切れそうです。灰が燃える姿を見ていると、病と別れができるなって。家族みんなで元気に旅行に行ったり、楽しく生活したい
多く舞い込む男女関係の「縁切り」…受け継がれてきた「縁切り供養」を再開した住職
不倫している夫が相手と縁を切るのを願いに、女性がやって来た。
縁切りに訪れた主婦(50代):
同じ会社の中で、何年も不倫関係なので…。いい加減別れてほしいなと
時代を問わず、「男女関係」の悩みを抱える人が多いようだ。
住職の長谷雄さん:
夫婦だったり、逆に不倫とかいろんな方がおられます。コロナ禍になってからは(参拝客が)倍増しました。不安感が増すんでしょうね
大法寺9代目の住職、長谷雄蓮華さん(48)は、23歳で父親の跡を継いだ。
しかし、昭和58年に寺の本堂が火事で全焼してしまった。
住職の長谷雄さん:
私が住職になった時には何もなかったんです。昔やっていた縁切り供養を、どうしても復活したいと思って
この時、御神木だけは難を逃れ、代々受け継がれてきた「縁切り供養」を再開。長い歴史ゆえ、人が人を呼び、全国で広く知られるようになった。
住職の長谷雄さん:
悩んでいる方って多いですよね。誰にも言えない人はいっぱいいる。誰かに話したり、仏様に伝えるだけでも救われることがある、そう思ってやらせていただいています
御利益があると聞いたので期待して待ちたい…自己中心的な上司との縁を切りたい女性
午後も続々と、悩み多き人々が訪れる。
この女性は、これまで京都の縁切り神社などを参拝。ここで4回目という。この女性が切りたい縁は、関係がうまくいっていない会社の上司との縁切り。人型の赤い紙に「自己中心的で思いやりのなさ」と綴った。
縁切りに訪れた女性(50代):
この空気感がすごく良かったなと思って。変な話、切れなくても、ちょっとスッキリはしました。でも、結構ご利益があるって聞いたので、期待して待っています
「息子のような被害者が無くなりますように」…5年前に息子を亡くした女性
知人とのトラブルで、息子を亡くした女性も訪れた。
あま市から来た主婦(58):
(写真を見せて)これ息子です。イケメンでしょ。家族思い、夜中まで働いて、すごい頑張り屋
写真の男性は自慢の息子。しかし5年前(2016年)、33歳の頃に知人と男女関係のトラブルになり、帰らぬ人となった。
同・主婦:
悔しいね…、ただただ悔しい。後を追いたいなという気持ちもありましたけど、やっぱり周りの人が助けてくれる…。ここのお寺に来たことが、いい方向に向いたのかなって思っています
今も納骨できず、遺骨は自宅に置いているという。絵馬に書いたのは「息子のような被害者が無くなりますように」。息子の死から5年…。少しずつ現実を受け止めようとしている。
同・主婦:
自分の思いも一緒に上がっていったような気が。前を向いて息子と共に、思いを一緒に生きていこうかな
コロナに病気に人間関係…それぞれの縁切り
コロナとの縁切りにきたという女性は、知人がコロナに感染して亡くなった。
犬山市から来た女性(57):
コロナって本当に怖いですよね…。少しでも早く前のような生活に戻りたいと思います
続いてやってきた親子は、それぞれの縁切りのお礼参りにやってきた。
母親(50代):
脳腫瘍から縁を切ってもらって、手術して無事成功して
娘(20):
人との縁を切れた。こうしてお礼参りに来れたことが、すごくよかったです
娘は人間関係、母は病気との縁切りがうまくいったという。
いい人と巡り合えるように…元カレと縁を切り新たなスタート切る女性
夕方、恋人と別れたという女性がやってきた。
知立市から来た女性(27):
結婚できたらいいよねって話はしていたんですけど。別れたくなかったです
住職の長谷雄さん:
胸に刺さっていること全部書いて…。文字で込めることであなたの胸からなくなります。よく頑張ったね
別れた恋人への未練を絶つ…。さらに、自分の弱さとも決別。
同・女性:
頑張ったねって一言で、全てが救われたような気がしました。たまっていたものが全部出せた気がしたので、すごくスッキリしました
女性は、今後いい人と巡り合えるように頑張る、と前を向いた。
人生、山あり谷あり…。縁切り寺では、悪い縁と向き合い、心機一転、新たなスタートを切る人の姿があった。
(東海テレビ)