緊急事態宣言が解除され、緊張感を保ちながらも少しずつ日常生活が戻り始めている。
6月21日、1か月ぶりに通常営業を再開した「おたる水族館」。休館中の知られざる裏側に密着した。

北海道小樽の海を見つめる男性。ここはおたる水族館の屋上だ。

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おたる水族館 小竹 多聞さん:
一番の目標は、おたる水族館を日本一にすること

魚類飼育係の小竹多聞さん(23)。ここが昼休みの特等席だ。

おたる水族館 小竹 多聞さん:
おたる水族館じゃなければダメという水族館にしたい

しかし、働き始めてわずか1か月、コロナ禍で水族館は臨時休館に。
それでも命と向き合う新人飼育員に密着した。

新人飼育員の小竹さんが働き始めてわずか1か月。緊急事態宣言を受けて水族館は休業を余儀なくされた。

250種類、5000個体の海獣や魚類を展示するおたる水族館。命と向き合う仕事に「不要不急」はない。

コロナ禍でも「命と向き合う」日々…

おたる水族館 小竹 多聞さん:
めちゃめちゃ小さな粒粒がアルテミア。ミズクラゲやチンアナゴとか、口の小さな生き物が食べます

小竹さんは毎日2度、水族館で飼育しているほとんどの魚類や爬虫類へのエサやり、さらに健康状態をチェックしている。

おたる水族館 小竹 多聞さん:
うろこが剥げている。2日前はなかったと思う。新しくついてしまった。この子の左側のえらの後ろ側のほうですね

愛知県出身の小竹さん。おたる水族館にほかの水族館とは違う魅力を感じ、働くことにした。

おたる水族館 小竹 多聞さん:
ほかの水族館にいない生き物が充実している。ニシンの水槽とかエゾトミヨですね、ここのオオカミウオはよその水族館ではなかなか見られない、泳ぐ姿を日常的に見ることができるので見ごたえがあります

人間がいない間も動物たちの暮らしは続く。5月には5年ぶりにセイウチの赤ちゃんが誕生した。

そして、イルカなど海獣類は毎日ショーのトレーニングも欠かせない。

おたる水族館 志村 智行さん:
トレーニングはイルカたちの健康管理のためにやっています。いつもと比べて動きが鈍くないか、集中力やエサの食べ具合とか、日ごろから変化がないかチェックしながらトレーニングしています

また動物たちへ新型コロナウイルスが感染しないよう、対策も怠らない。

おたる水族館 志村 智行さん:
イルカたちも同じ哺乳類。動物にコロナウイルスがうつっているという事例が出ているので、マスクを着用して動物に接しています

水族館では、休館中のこうした姿をライブ配信することにした。

【ライブ配信】
おたる水族館 三宅 教平さん:
おたる水族館のライブ配信。きょうは、ニシン水槽の前からお送りしていきます。映像は、新人スタッフが震えながらとってますよ。あした筋肉痛にならないかな

おたる水族館 小竹 多聞さん:
鍛えているので大丈夫です

一方、水族館の経営は大きな影響を受けている。

おたる水族館 梅津 真平さん:
2019年は年間で40万人が来館しました。2018年が38万人、今の予測ですが2021年は大きく落として15~16万人になるといわれます

それでも小竹さんは前向きに取り組んでいる。

おたる水族館 小竹 多聞さん:
残念と言えば残念。それよりも客がいないうちに、生き物を観察して普段の状態をよく知っておいて、いざというときに適切な判断を下せるように、勉強する時期かなと思います

待っていた1か月ぶりの「再開の日」

小樽運河をバックに記念撮影する観光客。21日、緊急事態宣言が解除され、観光地・小樽市が動き始めた。

おたる水族館も午前9時から営業を再開。
コロナ対策として室内ショーの定員は50%に抑え、館内の消毒と換気を徹底している。

来館者:
楽しかった

来館者:
平日だし、あんまり人もいないかなと思って、ちょっと息子と来ました

また5月に生まれたセイウチの赤ちゃんも、この日から初公開された。

来館者:
かわいかった

来館者:
みなさんいい顔してるので再開はいいことだと思う

おたる水族館 小竹 多聞さん:
水族館がどれだけ客に愛されているか、支えられているか…目の当たりにしてありがたいと思いました

初日の入館者の予想は140人ほど。実際には、その倍近い265人が訪れた。
一方で、臨時休館前に発注したお土産の賞味期限が迫り、原価割れを覚悟で割引販売にも踏み切った。小竹さんや水族館の試行錯誤の日々が続いている。

おたる水族館 小竹 多聞さん:
自分が職場で発見した新鮮な驚きや感動を、客に伝えていくのが夢です。
達成できるよう自分の力をつけていって、生き物のすばらしさ、自然環境の尊さ、感動や驚きを伝えていけたらなと思います

(北海道文化放送)

北海道文化放送
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