ミャンマー国軍がクーデターで政権を掌握してから約4カ月が過ぎた。人権団体によると弾圧による死者は800人を超え、今もなお国軍側に4300人以上の市民が拘束されているという。

国軍はどのような理由でこうした自国民への「取り締まり」を正当化しているのか。クーデターを主導したミャンマー軍トップの側近であり、軍の顔である報道官ゾー・ミン・トゥン准将が5月24日、首都ネピドーでFNNのインタビュー取材に応じた。

インタビューに答えるゾー・ミン・トゥン准将
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FNNがまず報道官に直撃したのは、国軍側に「暴力の即時停止」の意思があるのか、という点だ。
2月のクーデター以降、弾圧による死者の数は800人を超えたとみられ、さらなる犠牲者が出ないよう暴力を停止することが喫緊の課題となっている。ミャンマーが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)も4月末に異例の首脳会議を開き、同国に「暴力の即時停止」を要請したが、現在も実現していない。

「暴力行為の停止のため、治安部隊で対応」

――ASEAN特別会議で要請された「暴力の即時停止」をいつ始めるのか?

報道官:
ミャンマーでは誰が先に暴力行為をしているのかを知る必要がある。ミャンマーでは2月1日に(クーデターが)起きた後、1~2週間デモが起きた。その後、騒乱や放火、武器による攻撃が起こるようになり、そうした行為について私たちは鎮圧を行うようになった。私たちは暴力行為の停止のため、国家の安寧のため、治安部隊で対応している。完全に平和な状態には至っていない。引き続き対応していく必要がある。

ミャンマー国軍に拘束されているアウン・サン・スー・チー氏

ASEANは首脳会議の場で、国軍に対して「全ての関係者による建設的な対話の開始」も要請している。しかし国軍側は、本来対話すべき相手であるはずの民主派勢力を次々とテロ組織に指定していて、ASEANの要請を無視して弾圧を強化しているように映る。

――「民主派との対話」はいつ始めるのか?

報道官:
(ASEANでは)「民主派との対話」とは言っていない。関係者全てとの対話だ。対話については先進国である日本のように関係者がそれほど明確ではない。
世界は、ミャンマーの問題は、国軍と民主化勢力、いまであれば(国軍の)国家統治評議会と民主派勢力が交渉して合意できれば解決できると考えている。実際はそうではない。ミャンマーには政党のほかに少数民族が135種族いて、長年にわたって武装して抵抗運動を行う少数民族武装組織もある。

――ミャンマー国軍は民主派のNUG(挙国一致政府)をテロ組織に指定するなど「民主派との対話」と反対の行動をしている。なぜ対話をしないのか?

報道官:
ミャンマーだけでなく、政府とは違う「二つ目の政府」がある国は世界に30カ国以上あるようだが、こうした「政府」と対話するほど寛大な国はない。どこの国も話しあわない。話しあう理由もない。
NUG(民主派が樹立した「挙国一致政府」)を私たちは2021年に第2号のテロ団体に指定している。非合法団体よりも法的に強いテロ団体に指定している。第1にテロ行為を扇動している、そして政府機能が停止するように(反政府行為を)仕向けた。さらに武装組織を組織すると正式に発表した。どこの国であろうが、反乱軍を結成すると言っている組織を許すことはない。

クーデターを主導したミン・アウン・フライン総司令官

――ミャンマー国軍はASEAN特使をいつ受け入れるのか?

報道官:
ASEANといえばミャンマーの家族みたいなものなので、トップ(ミン・アウン・フライン国軍司令官)が首脳会議に出席して、ちゃんと説明した。各国の首脳も納得したはずだ。今はミャンマー国内の治安を良くしている最中なので、まだ対話をしていない。安定したら特使を受け入れるつもりだ。

――条件となる治安の安定とは何か?

報道官:
我々が想定しているのは、都市部で起きているテロ行為、爆弾による爆破、放火、ダラン(手先やスパイ)と疑って殺害する事件などだ。こうしたことが無くなり平和になったときのことを意味している。

インタビューが行われた軍事博物館(ミャンマー・ネピドー)

経済制裁は「国民が直接的にダメージを受ける」

ミャンマーの国内外では、国軍に対する国際社会の圧力を求める声が高まっている。アメリカや欧州諸国は既に国軍を標的とする経済制裁を段階的に強めているが、現時点では国軍側の行動を抑制する効果はほとんど出ていない。経済制裁について国軍はどのように受け止めているのか。

――欧米諸国の経済制裁をどのように考えているのか? 

報道官:
経済封鎖(経済制裁)というのは、西洋諸国が用いる戦略だ。アメとムチの両方を見せて、よければアメをもらえ、悪ければムチで叩かれる。部分的には効果があると思うが、彼らの援助が政府に対してどれほどのウェートを占めているか、国民にとってどれほどのウェートを占めているか、明確に区別して見る必要がある。

日本からの援助も他の国からの援助も国民に直接届く援助だ。国民に直接届く援助を停止すれば…(中略)政府は、使いたいところに潤沢な資金を投入することができない。国民も貧しくなるし、政府も貧しくなる。貧しくなるのは同じだが、国民の方が直接的にダメージを受ける。
また経済封鎖しても、近隣5カ国が経済封鎖するだろうか。ありえない。絶対に封鎖しない。なぜ封鎖しないかというと、好きであろうが嫌いであろうが、これは政治とは関係ない。国境を接しているからだ。政府にダメージがあるのか、国民にダメージがあるのか、それを考える必要がある。

日本のODA停止なら「開発が早く進むか遅いかの違い」

日本政府もミャンマー国軍に対して、これまで何度か暴力の即時停止や拘束者の解放などを呼びかけているが、国軍側の行動抑制には結びついていない。欧米諸国のような経済制裁とは距離をおく一方で、茂木外相はミャンマーの状況が改善しない場合には政府開発援助(ODA)の全面停止もあり得るとの考えを示した。

――日本政府は民主主義の重要性を何度も主張している。日本の外相はODA停止の可能性に言及しているが、そうなった場合、ミャンマー政府はどう対応するのか?

報道官:
私の見方では、外相個人の意見だと思う。ODAがどういったところに行くかというと、保健医療、教育、上ビルマ(訳注:乾燥地域)の緑化、水利用などに行く。ODAは私の見方だが、政府を助けるものではなく、国民を直接助けるものだ。政府に影響があるものではない。国民の方に影響があるものだ。

政府は国民に対して、いかなるODAをもらおうがもらうまいが、既定の開発を行なわなければならない。違いがあるとすれば、日本がODAをくれれば、事業は早く進む。早いか遅いかの違いだけだ。ODAを与えるか与えないかは、日本との友好関係に影響はありえないと考えている。
 

日本政府は2020年11月のミャンマー総選挙に笹川陽平ミャンマー国民和解担当日本政府代表を団長とする選挙監視団を派遣した。しかしミャンマー国軍は後日、この選挙に「不正があった」としてクーデターを実施した。

――国軍はなぜ選挙を不正と判断し、クーデターを起こしたのか。この選挙を否定したことでミャンマー国軍は日本政府を裏切ったことにはならないのか。

報道官:
国軍は選挙が終わった後も、選挙が終わってからではなく、選挙が行なわれる前から、票の不正が起こりうるという話をしていた。私として申し上げたいのは、総合的に見てほしいということだ。それ以外は申し上げません。

北角さんは「扇動を続けたので拘束」

ミャンマーではクーデター以降、メディアへの弾圧も強まっている。これまでに現地メディア8社の免許が剥奪され、記者の逮捕や拘束が相次いでいる。日本人フリージャーナリストの北角裕樹さんも約1カ月にわたって拘束され、5月14日に解放され帰国した。背景に何があったのか。

5月14日に解放され帰国した日本人フリージャーナリスト北角裕樹さん

――北角さんはなぜ拘束され、そして解放されたのか?

報道官:
北角さんを2月に一度拘束している。2月に1度拘束して警告したことがある。ジャーナリストはジャーナリストの仕事をするように、扇動しないように、と私たちは言った。ダメだった。さらに(活動を)続けていたので、私たちは再度拘束せざるを得なかった。拘束して5月13日に彼を釈放した。

釈放した主な理由はミャンマー国民和解担当日本政府特使だ。彼自身が政府に要請してきたので、二国間の友好関係に鑑み、釈放した。釈放された後、彼(北角さん)は外国人記者や外国メディアに語っているが、それは北角さんの自由だ。ミャンマー国民和解担当日本政府特使からの要請とミャンマー・日本の友好関係から釈放した。

 

ミャンマー国軍の報道官は1時間超にわたるFNNのインタビューで、クーデターや「取り締まり」の正当性を繰り返し主張した。欧米諸国の経済制裁や、日本のODA停止に関しては直接ダメージを受けるのは国民だとけん制した。一方、フリージャーナリストの北角さん釈放の理由については日本政府の特使からの要請や日本との友好関係を考慮したと述べた。
しかし報道官は、対立している民主派勢力と対話する意向は一切示さなかった。

国軍報道官は終始、譲歩する姿勢を見せず、短期的に暴力が沈静化する見通しは暗い。

※報道官への質問はFNNが手配した逐次通訳を介して行われ、国軍側からの質問内容に対する制約はなかった。