知多半島の魅力が詰まったフルコースを子供たちに…フレンチのシェフが母校に恩返し

2021年3月に、愛知・常滑市の有名フレンチレストランのシェフ渡辺大佑さんが自身の母校である西浦南小学校を卒業する子供たちへ、フルコースの料理を振る舞った。

子供たちが「この地域で育って良かった」と思えるように、知多半島の魅力を凝縮した特別な料理に子供たちの笑顔が広がった。

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常滑市の西浦南小学校の給食の時間。この日ばかりは「いただきます」ではなく「カンパイ」。テーブルを彩るのは、フレンチのコース料理だ。

おいしさの演出に欠かせない器も、乾杯のジュースも、テーブルに並んだ全てに地元・常滑をはじめ、知多半島の魅力が詰まっている。

このフレンチ給食を手掛けたのは、常滑市のフレンチレストラン「ル・クーリュズ」のシェフ渡辺大佑さん。地元のこだわりの食材を使ったコース料理が人気の名店だ。

卒業する子供たちに特別な体験をしてほしいと、30年前に卒業した母校への恩返しだ。

コースは地元の食材で構成…子供たちに好奇心を呼び覚ます食材を選別

渡辺さんは、コース料理に使う食材は自らの目と舌で確かめる。この日、愛知・南知多町の鮮魚店で目を付けたのはサワラ。

渡辺さん:
タイやヒラメみたいな高級魚だけが良いものではなくて、とれた場所がちゃんとしたものなら、おいしいんだというのを(子供たちに)知ってもらいたい

続いて渡辺さんは農家へ。前菜には、なかなか家では食べる機会のない“大人の味”を忍ばせることを考えていた。それは苦みのきいたルッコラ。たっぷりの春野菜のアクセントにする。

初めて見る食材に、なかなか好奇心を持たない最近の子供たちに、渡辺さんは「子供たちの閉じた扉をノックして開けてあげるのも僕らの仕事」と話す。

子供たちに食べてもらう料理の構想が、固まってきた。

器ごとに子供たちの名前を刻印…自慢の器は地元の伝統文化・常滑焼

目と舌で味わうフレンチには器も大切。パステルカラーの焼きものが人気の「TOKONAME STORE」を運営する「山源陶苑」の鯉江優次さんが一肌脱いだ。

山源陶苑の鯉江さん:
(渡辺さんの)思いがすごく、地元愛が非常に強くて。常滑焼がどうしてもいいと熱く語られたので

江戸時代から続く常滑焼の伝統を受け継ぎながらも、時代に合わせてアレンジした特別な器を作ることにした。せっかくなら大事に使ってほしいと、器ごとに子供たちの名前を入れた。

鯉江さんは大人になって地域を離れても、生まれ育った町の常滑焼の器を自慢してもらいたいと話す。

火事の時に子供たちから送られた激励…乾杯のジュースに173年続く酒蔵が協力

乾杯の“食前ジュース”には、173年続く常滑の酒蔵 「澤田酒造」の人気商品を用意。常滑市の隣、愛知・知多市で100年以上前から地元の人が大切に育ててきた佐布里梅の実を、江戸時代からの製法で仕込んだ甘ずっぱいシロップだ。

澤田酒造と西浦南小学校とは、ある縁があった。
2020年11月、澤田酒造は大きな火事に襲われた。社会見学の時に巡った酒蔵。子供たちはすぐに激励の言葉を入れたモザイク画を作り、澤田酒造に送った。

澤田酒造の澤田さん:
胸いっぱいになって涙が出ました。一時期続けていくこともあきらめないといけないかと思ったのですけど…。力に代えて、前を向いて再開できましたので

普段店で出している味に近い形で…メインは「都築ぽーくの赤ワイン煮込み」

フレンチ給食の前日。渡辺シェフが仕込んでいるのは、メイン料理の常滑のブランド豚「都築ぽーく」の赤ワイン煮込みだ。

南知多のサワラは、マリネにしてルッコラと春野菜を盛り付けた前菜に。

デザートはフランスの味「リオレ」。美浜町のお米を常滑の牛乳で甘く炊いてイチゴを添えることにした。

渡辺シェフ:
せっかくならちゃんとしたもの、こういうものだよって体験してもらいたいので、普段お店で出している味に近い形で提供します

渡辺さんは、子供たちの笑顔を思い浮かべながら仕込みを続けた。

卒業生たちの乾杯の声響く…いつもの教室が「海の見えるレストラン」に

2021年3月3日。いよいよ卒業する子供たちにフランス料理のフルコースを贈る。

この日はどこまでも子供たちファースト。
子供たちの母親がメニュー表作りや会場の準備を。ウェイターは蝶ネクタイをした先生だ。

渡辺シェフは、家庭科室で35人分の料理の仕上げをする。

酒蔵の澤田さんと、常滑焼の器を作った鯉江さんも駆けつけた。いつもの教室が、今日だけは“海の見えるレストラン”になった。

「カンパーイ!」。知多半島の魅力を届ける、特別なフレンチ給食だ。

女子児童:
食べたことない味ですごく美味しかったし、ちょっと苦かったけど、大人の味だなと

男子児童:
最後に、6年1組のクラスで思い出を作れたのはよかった。感謝したいです

渡辺シェフ:
せっかくならこの地域で育ったってことが、大人になっても良かったなって思えるように

渡邊シェフは「地元にはいいものがたくさんあり、とても恵まれた環境で生まれ育ったことが伝わってほしい」と話す。

(東海テレビ)