2004年に日本で見つかった恐竜の化石が実は新種で、恐竜が繁栄した要因の解明につながるかもしれない。こうした研究成果を、北海道大学の教授らによる研究グループが発表した。

恐竜は、白亜紀の後期(約1億~6600万年前)に繁栄した植物食恐竜・ハドロサウルス科の仲間とみられ、研究グループは「ヤマトサウルス・イザナギイ」と命名。研究成果が学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に4月27日付で掲載され、注目を集めている。

ヤマトサウルスの復元イメージ(制作:服部雅人氏)
ヤマトサウルスの復元イメージ(制作:服部雅人氏)
この記事の画像(9枚)

淡路島で発見…恐竜の化石「実は新種」

北海道大学によると、恐竜の化石は2004年、兵庫県洲本市(淡路島)にある約7200年前の地層から見つかったもの。2005年には、ハドロサウルス科の仲間である、ランべオサウルス亜科の化石として、学会で発表されていた。

発見当時の恐竜の化石(提供:岸本眞五氏)
発見当時の恐竜の化石(提供:岸本眞五氏)

しかし、他のハドロサウルス科との特徴を比較する解析などを行ったところ、この化石は歯の嚙み合わせなどで、他の恐竜にはない特徴を持っていたことが判明。新種でハドロサウルス科の祖先に近い、原始的な恐竜であることが分かったという。

さらには、ハドロサウルス科が白亜紀の後期に大繁栄した理由や、東アジアがレフュジア(昔のままの種が残存している地域)だった可能性にもつながるともしている。

見つかったヤマトサウルスの骨とその部位(シルエット:増川玄哉氏)
見つかったヤマトサウルスの骨とその部位(シルエット:増川玄哉氏)

なお、ヤマトサウルス・イザナギイという名前の由来は、日本神話に登場する「倭」(ヤマト)と「伊弉諾」(イザナギ)にちなんでいるとのことだ。

日本で新種の恐竜の化石が見つかったことはロマンある話だが、なぜ、2004年に見つかった化石が今になって新種だと判明したのか。そしてヤマトサウルス・イザナギイが、どんな恐竜なのかも気になるところだ。

研究グループの中心である、北海道大学の古生物学者・小林快次教授にお話を伺った。

きっかけは標本を見たときの違和感

ーーヤマトサウルスはどんな恐竜?

大きさは7~8メートル、体重は4~5トンと推定されます。顎の骨の大きさなどから、現在の北海道むかわ町で化石が発見された、恐竜「カムイサウルス」と同程度と推定されます。

ヤマトサウルス(左)とカムイサウルスの復元画(制作:服部雅人氏)
ヤマトサウルス(左)とカムイサウルスの復元画(制作:服部雅人氏)

ーー化石を再び調査したのはなぜ?

今回の化石はもともと、収集家が発見して博物館に持ち込まれ、ランべオサウルス亜科と発表されていました。私が関与したのはこの後で、今回の研究のきっかけともなります。2014年に私が博物館で化石の標本を見たとき、何かが違うと感じたのです。

この化石は恐竜にとって最後の時代である、白亜紀末の地層から発見されたものです。生物は時代が新しいほど進化をするものですが、原始的な特徴があるように感じました

見つかった骨の化石の詳細(提供:兵庫県立人と自然の博物館)
見つかった骨の化石の詳細(提供:兵庫県立人と自然の博物館)

ーー新種であることはどう調べた?

他の恐竜との違いを調べるため、ハドロサウルス科に分類される世界中の化石を調べ、骨などの特徴を数値に当てはめ、統計用のソフトで比較しました。この過程で、人間の家系図にあたる「系統樹」を出すと、どの恐竜に近いかが分かるのですが、ヤマトサウルスの特徴を持つ組み合わせは、まったく見られなかったのです。ここで、新種とわかりました。

ヤマトサウルスは歯や肩の骨に特徴

ーーヤマトサウルスにはどんな特徴がある?

他の恐竜との違いにもつながりますが、一つは歯の形態や嚙み合わせです。恐竜は歯が何度も生え変わり、一つの歯の穴(歯槽)に3つ4つも歯があるのが普通です。複数の歯列が重なり合うこともあります。ところが、ヤマトサウルスはこの歯の数が少なかったのです。

肩にある「鳥口骨」という骨にも特徴がありました。白亜紀の後期、ハドロサウルス科ではランべオサウルス亜科とサウロロフス亜科という、2大勢力が繁栄していました。これらの恐竜は鳥口骨に突起を持つのですが、ヤマトサウルスにはそれがありませんでした。こうしたことから、ヤマトサウルスはより原始的な恐竜であると結論づけました。

他のハドロサウルス科の歯(右下)に対して、ヤマトサウルスの歯(右上)は数が少ない(シルエット:増川玄哉氏)
他のハドロサウルス科の歯(右下)に対して、ヤマトサウルスの歯(右上)は数が少ない(シルエット:増川玄哉氏)

ーーなぜ進化したか、想定される要因はある?

進化した要因などについては、これからの研究になります。ただ、ヤマトサウルスに近い恐竜は、アジアと北米に広く生息していた可能性があるので、その中からヤマトサウルスが誕生し、日本を含む東アジアに棲んでいたのでしょう。

肩や前肢の進化も繁栄につながったか

ーーハドロサウルス科の繁栄にはどうつながる?

原始的な恐竜というお話をしましたが、ヤマトサウルスの鳥口骨には突起がなく、他のハドロサウルス科にはあることから、ここにかなりの進化があったと示唆されます。この突起は腕を曲げるような筋肉、強い力を持つようになったことで生まれたと推定されます。

ハドロサウルス科が繁栄した理由はこれまで、顎や歯の進化による効率の良い口内消化、食べ物の栄養素を取り入れられる能力が鍵になったと言われてきました。これに加えて、肩や前肢の進化が影響したことも、今回の研究でわかってきたのです。

鳥口骨の形状(左)などから、系統樹(右)のような関係性が分かったという
鳥口骨の形状(左)などから、系統樹(右)のような関係性が分かったという

ーー東アジアがレフュジアだったことはどうしてわかった?

今回の化石は、約7200万年前の地層で見つかりましたが、系統樹から解析すると、ヤマトサウルスは9000万年かそれよりも古い時代に誕生していたはずです。つまり、約2000万年前の恐竜が生き残ったのが、ヤマトサウルスということになります

また研究では、ハドロサウルス科の祖先に近い恐竜として他にも、モンゴルのプレシオハドロスや中国のタニウスが、同様に数千万年間生き延びていたこともわかりました。

そのため、東アジア一帯が世界の他の場所とは異なり、隔離された特異な環境であったことで原始的なものが生き延び、それらが生活できる豊かな環境が広がっていた可能性があります。

緑の星マークが化石の発見地点。赤丸は白亜紀後期のハドロサウルス類の化石が見つかった地点
緑の星マークが化石の発見地点。赤丸は白亜紀後期のハドロサウルス類の化石が見つかった地点

ーーヤマトサウルス・イザナギイと命名したのはなぜ?

日本神話の「国生み」では、最初に生まれた日本の国土が淡路島であるとされていて、今回の化石は淡路島で見つかりました。そして研究では、ハドロサウルスの起源にせまれました。そうした意味で「起源」につながっていると思い、命名しました。個人的には、ヤマトならみんなが覚えらえて、定着もしやすいと思っています。

日本の恐竜の見方が変わるのでは

ーー今回の研究の意義や今後の目標を聞かせて。

淡路島という近場で新種の恐竜が見つかったことに、驚く人もいるのではないでしょうか。恐竜を身近に感じることはあまりないと思いますが、日本にも恐竜時代の地層はたくさんあるので、「意外に自分の裏山からも恐竜が発見されるかも?」と見方も変わるのではないかと思います。また、ヤマトサウルスに関しては研究を続け、ヤマトサウルスやカムイサウルスがどのように生活していたかなど、あらゆる角度で研究を続けていきたいと思います。


7000万年以上の時を経て見つかった化石が、恐竜の進化を解明する手がかりとなる。今回は小林教授のちょっとした違和感が、大きな発見につながったようだ。恐竜と聞くと、海外をイメージするかもしれないが、遥か昔、日本の原風景にも恐竜たちの姿はあったのだ。

【関連記事】
夜になると恐竜の化石は動き出す? 泊まれる博物館の“ナイトミュージアム”が楽しそう
ネコがマタタビ好きなのは「蚊よけ」のためだった?“長年の謎”を解明した教授にその理由を聞いた

記事 4705 プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。