大好物を「ネコにマタタビ」と例えるように、ネコに植物のマタタビを与えると、体にこすりつけながら床をゴロゴロと転がり喜んでいるような行動を見せる。

このような「マタタビ反応」をなぜ示すのかは長年の謎とされていたが、実は蚊を遠ざけるための行動でもあったことが、研究によって明らかとなった

リリースより
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岩手大学の宮崎雅雄教授や名古屋大学などの研究グループが、マタタビの抽出物からネコが「マタタビ反応」を起こす物質「ネペタラクトール」を発見したのだ。

さらに、このネペタラクトールには蚊を遠ざける効果があることを突き止め、ネコはマタタビ反応によってネペタラクトールを体に付け、蚊を忌避していることを立証。「研究成果は、なぜネコがマタタビに反応するのかという長年の謎に一つの重要な解答を与える」としている。

ネコとマタタビ(岩手大学提供)

また研究グループは、「マタタビ反応」を起こす前後でネコの血液を調べたところ、人間で言えば「多幸感」に関わる神経系が活性化していることも分かったという。

さらにネペタラクトールを、アムールヒョウ(神戸市立王子動物園)やジャガー(天王寺動物園)などに与えたところ、やはり床をゴロゴロ転がる「マタタビ反応」が見られた。

左:アムールヒョウ、右:ジャガー

このような大型のネコ科動物といわゆるネコは、約1000万年前に種が分かれており、このことから「マタタビ反応」はそれより昔の祖先が獲得していた可能性があるとのことだ。

研究グループは、「マタタビ反応」は単にネコが陶酔して起こすものではなく、何らかの重要な機能を持っていて、現在のネコ科動物に引き継がれてきたものであると推測。そしてネペタラクトールと似た化合物に蚊を忌避する性質があったことから、ネペタラクトールにも同じ性質があることを見つけたという。

ではネコは、蚊を遠ざけられることを知っていて、マタタビを体に擦り付けているのだろうか?また犬はなぜ「マタタビ反応」をしないのか? 岩手大学の宮崎雅雄教授にお話を聞いた。

意図的にマタタビを塗るワケではない

――ネコは蚊を遠ざけるためマタタビを使っているの?

これは勘違いをされている方がいて「ネコが意図的にマタタビを塗って蚊を忌避しているとは思えない」という意見が結構ありました。

「マタタビ反応」というのは本能行動の1つで、つまり意図しなくてもマタタビの香り嗅ぐと勝手に身体をこすりつけたり転がったりという行動が起きるのです。ですから、ネコたちは意図しなくてもマタタビがあると匂いを体につけ、蚊が寄ってこなくなるのです。

蚊に刺されないというのは動物にとって伝染病予防のため重要です。ずっと昔のネコ科の動物が「マタタビ反応」を獲得し、遺伝子の中に組み込まれ、マタタビを嗅ぐと勝手に体が動くというシステムが備わったのだと思います

ですから、今のネコが蚊に刺されたくなくて体を擦り付けているわけではなく、無意識のマタタビ反応によって蚊が寄らなくなるというわけです。生存戦略としては、すごい仕組みだと思います。


――ではなぜ、犬は「マタタビ反応」をしないまま進化した?

ネコ科の動物は、蚊などの虫がたくさんいる茂みに潜んで狩りをします。茂みに潜んでいるときに刺されにくくなるように「マタタビ反応」をするのかもしれません。

犬はどちらかというと茂みに潜むよりは、走りまわっている動物なので、そこがネコ科とイヌ科の違いかなと考えています。


――マタタビ反応をしているネコは喜んでいる?

これに関しては、私たちは科学者なので注意しているところなのですが、人間でしたら多幸感などに関わると言われている神経系の一種が、ネコで活性化されているんですね。

人間とネコの脳のメカニズムが似ていれば、その神経系が活性化されるとネコは喜んでいるはずなのですが、実際に喜んでいるかは分かりません。人と同じでしたら喜んでいます。しかし、見た感じは喜んでいそうなのですが、断言はできないので気を付けています。
 

「人間が塗っても効きそうです」

――蚊の忌避成分は人間でも効果ある?安全性は?

ネコだけ蚊に刺される実験をするのは悪いので、自分でも右手にはネペタラクトールを塗って左手はそのまま、蚊のケージに手を入れたら塗った方は刺されませんでした。ですから人間が塗っても効きそうです。

安全性に関しては興味を持った企業に調べていただければいいと思いますが、古くから日本人は「マタタビ酒」を飲んでいたので、塗っても大丈夫ではないか、と思っています。
 

――もしマタタビの虫よけが出来たらネコも寄ってくる?

それは難しいです。例えば、ネコの飼い主さんが自分に虫よけを吹き付けたら、飼いネコは寄ってくると思います。しかし、例えば野良ネコなどは気になる匂いがしても、知らない人なら怪しんでスリスリしてこない可能性は十分あります。

昆虫のような生き物なら寄ってくると思いますが、ネコのような頭がいい動物は人間の顔色をうかがうので、匂いを嗅ぎたいけどやっぱりやめておこう、となるのではないでしょうか。
 

リリースより

――ちなみに、リリースに写真が出ているネコは飼いネコ?

ここに出てくるネコたちはみんな大学で飼っています。


――先生はネコ好き?

ネコ好きですけども…こう言ってしまうと問題かもしれませんが今は犬を飼っています。今回の論文の筆頭著者で、主体的に研究を行った修士学生の上野山玲子さんは非常にネコ好きで、ネコも飼っています。
 

左:論文の筆頭著者である岩手大生の上野山怜子さん 右:宮崎雅雄教授

宮崎教授は、研究の途中から「蚊」を使った実験を始めることになり、30匹の蚊をケージに移す作業などでは大変苦労したそうだ。難しかった「蚊」の扱いも今ではプロフェッショナルになったという。

ちなみに、「なぜマタタビの成分に蚊を遠ざける効果あるのか」「蚊の他にノミなどにも効果があるのか」などについては今後の課題だとしている。これからの研究にも期待したい。

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