“幻の川魚”と呼ばれる「ヤマノカミ」の繁殖に、福岡市の「マリンワールド海の中道」が、国内の水族館で初めて成功した。

ヤマノカミは、カジカの仲間で、ゴツゴツとした岩のような体と、鮮やかなオレンジ色のエラぶたが特徴。諸説あるが、「山の神」に供え物として捧げられたことに由来するとも言われている。

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「ヤマノカミ」水族館で初の繁殖

東アジアに分布するが、日本国内では、九州にのみ生息する川魚で、有明海とそこに流れ込む川にのみ生息している。

成魚は、全長15センチほど。近年は、生息数が減少し、環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている。川に堰が建設されたことなどにより、川を上れなくなったことが一因とされる。

そのヤマノカミの繁殖にマリンワールドが、国内の水族館では初めて成功したのだ。

「待ちに待った状態だったので、繁殖チームから『生まれてます』と連絡が来た時は、やったー!っていう気持ちでした」と飼育員の野田早智さんは、当時を振り返る。

マリンワールドが、繁殖に向けたプロジェクトを始めたのは、2024年11月。まず、水槽内に“産卵場所”となる竹筒などを設置。

ヤマノカミは、産卵のため、冬にかけて川から海に下る習性があるため、水温を徐々に下げ、塩分濃度を濃くするなど、繁殖シーズンである春の有明海を再現。

繁殖を促したところ、2025年3月、巣穴で産卵しているのが確認された。

稚魚生まれると「父」の命尽きる

産卵後の約1カ月間、卵を守り続けたのは、オスの親だった。近づく魚を追い払ったり、胸びれを使って卵に新鮮な水を送り続けていたという。

そして4月、稚魚が無事に卵からかえると、オスは、直後にその命を終えた。

「彼らは産卵を終えると寿命を迎える魚。命をかけて守ってるんだなというのを間近で見ることができた」と野田さんは感慨深げに話す。

父親が守り抜いたヤマノカミの稚魚約100匹は、すくすくと成長し、現在の体長は、3センチほど。7月中旬ごろまで一般に展示されている。

(テレビ西日本)

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