いつでもどこでもCO2濃度を測定
新型コロナウイルスの感染が全国的に再拡大する中、注目されているのが、換気の状況を調べる目安として使われる、「CO2(二酸化炭素)濃度測定器」だ。
CO2濃度測定器は、政府の分科会がリバウンドを防ぐ対策として、今年2月にまとめた提言などの中で飲食店に利用を求めているほか、「まん延防止等重点措置」が適用されている大阪府も飲食店などに設置を要請している。
なお濃度の目安としては、分科会が「室内のCO2濃度を1000ppm以下にすることが重要」と具体的な数値で示している。
こうした中、映像解析AIプラットフォームを運営するフューチャースタンダードは、持ち歩きが可能で、外出先でも簡単にCO2濃度を測定できる「ハンディ換気チェッカー」の予約受付を4月16日からスタートし、4月下旬より順次販売を開始する。価格は2万9700円(税込)。

大きさは縦17センチ×横5センチ×幅3センチで、重さが150グラムとコンパクト。CO2の濃度によって、ライトの色が3段階(ブルー→イエロー→レッド)に変化し、換気のタイミングを教えてくれる。
CO2濃度が「0ppm~999ppm」であれば“ブルー”、「1000~1999ppm」であれば“イエロー”、「2000ppm以上」であれば“レッド”に変化する。
ライトがブルーからイエローとなったら、換気をした方が良いということになる。

また、ブルートゥースで無料アプリと接続すれば、スマホでデータをモニタリングすることもできる。

どこにでも持っていける携帯サイズで、飲食店での設置だけでなく、外出先の換気状況が気になる人にも使いやすそうだ。
この「ハンディ換気チェッカー」、映像解析AIプラットフォームを運営する会社が開発したわけだが、測定の精度はどのくらいなのだろうか? また、使用する際はどのようなことに気を付ければよいのか?
フューチャースタンダードの担当者に話を聞いた。
「CO2濃度測定のノウハウを保持しています」
――なぜ映像解析AIプラットフォームを運営する会社が、CO2濃度を測定する機器を開発した?
映像解析AIの会社ですが、カメラから取得する情報以外にCO2や温湿度などの目に見えない情報を取得し、子供の成育にどのような影響を及ぼすかの研究にご協力しておりました。
このため、昨今のCO2濃度の測定に関する注目度の高まりに伴い、過去の経験を活かして、何かご協力できないかと考えました。
――開発には、すでにCO2濃度測定器を開発している会社からアドバイスをもらった?
数年前からCO2濃度の測定を実施しており、当社がノウハウを保持しています。
厚生労働省が推奨する方式のセンサーを使用
――CO2測定の精度について。開発する際、特に気を付けたことは?
CO2の測定に必要なのは「正しいセンサーの選択」と「正しい取り付け」です。
センサーの選択については、厚生労働省の換気推進ガイドラインにも「使いやすい」と記載されている、NDIR方式のものを選択していまして、非常に正確です。
また、当然、正しいセンサーが正しく機能するように、一定程度の通気性を確保した形で取り付ける必要があります。
――「NDIR方式」とは具体的にはどのようなものなの?
「Non-Dispersive InfraRed(非分散型赤外線吸収法)」の略です。赤外線を放出・反射されたうち、どの程度CO2が含まれているかによって、減衰率(減衰が大きい=CO2濃度が高い)が変わるというものです。
「NDIR方式」以外にも、「電気化学式」や「半導体式」などがありますが、これらはアルコールの影響を受けるため、消毒や調理などにアルコールを利用している場合、気化したアルコールの影響で、正しくCO2濃度が測定できない場合があります。
このため、厚生労働省もNDIR方式を推奨しています。また、精度に関しても、他の方式と比べ、NDIR方式の方が高いという研究結果が出ております。
使用する際の注意点
――「ハンディ換気チェッカー」を使用する際の注意点は?
直接、測定器に息を吐きかけると、人間の息でCO2濃度が急上昇します。
CO2濃度は、大気中は400ppm、平均的な屋内ですと800ppmと言われています。一方で、人の呼吸は20000(2万)ppm以上です。直接、息が吹きかけられないようにする注意が必要です。直接でなければ、大きな影響はありません。
また、CO2は比較的重いため、地面に近いと少し濃度が上がり、天井に近いと濃度が下がります。設置する位置は、人の顔の高さくらいにしておくのが良いでしょう。
CO2濃度が高くなるのは「人数は少ないが換気が不十分」か「人数が多く、換気をしていても追いつかない」のどちらかが考えられます。その場所がどちらの状態なのかの判断は必要となります。
――頭の高さくらいに設置する必要があるということは、常にカバンに入れ、外出先の飲食店や映画館で手に持ってCO2濃度を測る、みたいな使い方はできないの?
想定している使い方としては、カバンに入れて持ち歩き、喫茶店などでテーブルの上に置いておくという形になります。
試しに映画館で測ってみましたが、LEDランプが他の方のご迷惑にならないよう配慮が必要かと存じます。3分の1ほど埋まった映画館で「放映開始前」と「開始後」に計測したところ、800~900ppmという値で、屋内としてはよく換気がされていることが確認できました。
人の顔の高さぐらい、というだけで厳密に顔の高さに合わせる必要はありませんが、前述の通りCO2自体が大気と比べて少し重たいため、地面や天井に置いてしまうと、実態とは少し違う数値になる、という意味合いです。
空気の流れが全くないところでも、差異は50ppm程度と想定していますが、そもそも換気がなされている場所だと地面や天井の方が風通しが良く値が低いこともあります。あくまで理論上は人の顔の高さが望ましいというだけで、そこまで神経質になる必要は無いと考えます。「人の顔の高さ=吸い込む可能性の高い空気=もっとも測りたいCO2濃度」という想定です。
――正しくCO2の濃度を測定するためには、その空間(飲食店や部屋の中)のどこで測定すれば良い?
CO2は有毒ガスのように滞留するものではありません。どこで測るのが正解、というものはありません。

コロナ対策以外にも色々な用途
――「ハンディ換気チェッカー」をどのように使ってほしい?
個人であれば、コロナ対策における自衛目的として、「クラスターになり得る環境か否か」の測定に、利用いただけると考えています。
映画館、バス、電車などの一般的にリスクを指摘されている場所も、実際に測ってみると、適切な人数であれば800ppm程度になっています。
逆に換気をしていない場合は1500ppm程度になる場合もあり、リスクの可視化が可能です。コロナ対策以外の視点で言うと、受験勉強など、集中して作業をしたいときの目安にもなります。
1500ppmを超えてくると、眠気など集中力が落ちる症状が出始めるのですが、5畳くらいの部屋で閉め切っていると、1時間もしないうちに1500ppmに到達します。定期的に換気をすることで、作業の効率化も図ることができます。
法人の場合も、自らの施設の換気状況の把握に使っていただければと思います。例えば、個室などすべてにCO2センサーを置くことが難しい場合でも、ハンディ換気チェッカーであれば、簡単に持ち運べるため、簡易な調査ができます。
会議室など一時的に人数が増える場合は、近くにハンディ換気チェッカーを置いておくことにより、換気のタイミングを可視化することもできます。「CO2濃度測定巡回」のような形で利用できることも、一つの強みではないかと考えております。
――「ハンディ換気チェッカー」の予約受付は4月16日。すでに問い合わせは届いている?
すでに購入したいとのお声を、いくつかいただいております。早く実物を触りたいという声が多いです。
感染が再拡大する中、GWも近づいてきている。「CO2濃度測定器」が、目には見えない換気の状況が数値となるのは分かりやすい。外出先のCO2濃度が気になるという人は、購入を検討してみてもいいかもしれない。
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