新型コロナウイルスの影響で、不特定多数の人が触れる部分には触れたくないという人が多くいることだろう。

しかしトイレでトイレットペーパーを切り取る際、ペーパーホルダーに触れたくなくとも触れなければならない。そんな問題を解決できそうな新しいトイレットペーパーホルダーが登場した。

それがタッチレス方式トイレットペーパーホルダー「サワラナイデー」だ。

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片手で紙が切れるペーパーホルダーはいくつも市販されているが、多くは上部に重りを付け、その重さで紙の切断時にかかる力を抑えつけるものとなっているそうで、結局トイレットペーパーが残り少なくなると、上部を手で押さえる必要が出てくる。

市販のトイレットペーパーホルダーは切り取るために触る必要がある

しかし「サワラナイデー」は、正面右側にある紙導入部へペーパーを通すことで、ペーパーの本体から使用する部分が少し浮いたような状態を作り、上向きに設置された刃でペーパーを切断するようになっている。

トイレットペーパーの交換も非接触で、ホルダーの下から挿入するだけ。そして、「サワラナイデー」本体の取り付けは壁に3カ所のネジ止めする。

開発したセキトランスシステム株式会社(静岡・長泉町)がクラウドファンディングサイト「Makuake」で4月5日~5月7日までの間、早割の先行受注を始めた。
正式な発売は5月10日を予定しており、販売価格は6578円(税込み)を予定している。

サワラナイデーの使用方法

トイレ内ではホルダーを始め、扉の鍵やフタなど、考えてみると触る場所が多くある。しかし、このサワラナイデーを設置することで、気になる部分に触れる前にペーパーを切り取れば、接触リスクを軽減することができるとしている。
 

「Makuake」では10万円の目標金額を超え、すでに37万5000円が集まっている。(4月20日現在)
使用後は手を洗うからといっても、できれば触りたくないという願いを解決してくれる商品だが、実際小さい子や高齢者でも簡単に使用することができるのだろうか?そして上向きの刃は危なくないのだろうか?

開発責任者のセキトランスシステム株式会社の関則雄社長に話を聞いてみた。

蒸しかえる個室内でのいら立ちが開発の原点

ーーどうしてホルダーに触らないトイレットペーパーホルダーを開発することにしたの?

2019年夏に弊社技術部門の責任者である鈴木(当時71歳)によるアイデアから開発がスタートしました。きっかけは、猛暑日のゴルフ場のトイレで、大量の汗が滴る中で他人の指紋が付着したトイレットペーパーホルダー(以下:紙巻器)を押さえて紙を切るところにありました。

知らない他人が明らかに触れた痕跡を触りつつ、紙が湿気で貼りつく・逆回転して真下に垂れ下がる・それを戻すのにまた紙巻器を触るという、蒸しかえる個室内でのいら立ちが開発の原点となりました。それなら衛生上も良い紙巻器を我々で開発・製造してみようと構想を練り始めました。

当初は平均年齢72歳の社長を始めとするスタッフが、年相応のゆったりとしたペースで検討しており、下記の開発コンセプトを掲げていました。
・接触連鎖によるノロウイルス、ロタウイルスなどへの感染予防
・使いやすく衛生的であること
・片手で紙の充填と切断ができ、片手の不自由な人や被介護者や介助者が使いやすいこと。

2020年3月頃よりコロナウイルスの感染拡大が深刻化していく中で、感染予防の一助になればと開発をスピードアップ。静岡県の産学官連携機関であるファルマバレーセンターの開発支援補助事業にエントリーし、事業の採択を得ました。その後、基本設計のブラッシュアップ、3DCAD設計、3Dプリンター試作を繰り返し試作品の改良。金型製作や量産品試作改良を進め、現在量産品の製作に取り掛かっております。

実際のトイレ内での経験より誕生

ーーお年寄りや小さい子でも簡単に使用できるの?

紙をセットする方法は、商品を見ただけではわかりづらいと思います。そのためセット方法を明示した製品に貼り付けできるシールを同梱する予定です。一度使用方法を理解できれば、お年寄りや小さいお子様でも簡単にできる構造になっております。


ーー上向きについている刃は危なくないの?

上向きに取り付けされている刃はポリウレタンに似たエラストマーで作られており、ぷにぷにした弾性のある樹脂になります。身近な物ではボールペンのグリップなどに採用されています。力を加えてもケガをすることの無いよう設計しております。万が一に備え、製品出荷前にPL保険(製造物責任)にも加入いたします。

トイレットペーパー本体の交換も接触のしなくても大丈夫

ーー残り少ないトイレットペーパーでも大丈夫?

紙がなくなる最後のほうでも問題なく使用できます。ただし残り20センチ程度になると紙の芯に切れ残りが生じる構造となります。ワンタッチ式で紙以外の部分に触れず交換できるようになっております。

三日三晩悩み抜いたネーミング

ーー開発で苦労した部分は?

苦労した点としましては3つございます。
特に苦労したのが、下方に紙を引き、切り歯に押し付けて切断するのですが、紙が中途半端に切断されながらズルズルと切り歯上を滑りながら外に出てきてしまうことへの対処でした。

そこで、上フタと平行するシーソー状の部品を考案しました。片側先端に切り歯を設け、反対側の先端に押さえ用の歯を設けたものです。テコの原理を応用し、切り歯(外側に見えている歯)を押す力と同等の力を押さえ歯(上フタ直下に隠れている歯)に与え、紙がズルズルと引き出されない状態を作ることを工夫いたしました。

切り取り部分を横から見ると

また、狭い紙導入部へペーパーの先端部をどのように挿入するかという点でも苦慮いたしました。ペーパーを入れやすくするために、小さな板ばねを挿入時に邪魔にならないよう取付けするなど、3Dプリンター部品とお手製の部品を組み合わせ、試行錯誤を繰り返し、製品改良を重ねました。その過程ではメンバー間の言い争いも多々ございました。

最後にもう一つ苦労した点は、ユニバーサルデザイン化を目指したことです。健常者にもハンディキャップがある人にも使いやすくする。右利き・左利きの人でも同様に紙をつまみやすくするなど、シンメトリー性を極力高めるデザインを取り入れるなど工夫いたしました。

板ばね部分 左:製品分解図より 右:製品完成図より

ーー「サワラナイデー」というインパクトある商品名になった理由は?

「最大7文字以内」「発売前にネットの検索語句で競合する情報が少ない」「商品名から商品機能を連想しやすい」ことを念頭に、開発責任者かつ社長でもある御年73歳の関が三日三晩悩み抜きネーミングいたしました。

直前に使用した人が紙巻器に接触していても、ご使用者自身が注意して紙巻器に接触せずに使用することで、接触連鎖による感染が予防できると考えています。ですので、ご使用する方へ「サワラナイデー」というメッセージを持たせております。また「接触しないDay」という意味も含ませております。

当該製品は新しい日常に適した製品であるという考えから、「新日常品」というカテゴリーと弊社内で位置づけております。「新日常品」及び「サワラナイデー」は弊社で商標登録を行っております。

斜め下に引いて、上向きの刃で切り取る

「こんな商品待ってました」

ーー現在どういった反響がある?

肯定的なコメントを数多くいただいております。紙巻器には極力触れないようにしている方は一定数いらっしゃいますので、「こんな商品待ってました」というお声を多くいただきました。感染対策としてご家庭や介護施設・飲食関連で検討されるお客様も多いです。半身麻痺などハンディキャップがある方のご家族からも温かい応援をいただいています。


ーーその反響に対してはどう思う?

開発者冥利に尽きると思います。製品開発中は実際に手に取る使用者様の笑顔や満足をイメージしながら奮起しておりました。まだ商品はお届けできていないですが、商品開発では素人である我々が製品化したものへの共感をいただけたことに心より感謝しております。
実際に手に取っていただける日が少しでも早くなるよう、4月16日現在も成型部品の生産現場立ち合いなど努力しております。5月中旬には最初のお客様より順次出荷できる見込みです。

製造の様子

関社長は、「多くの場所に当該製品サワラナイデーが設置され、予防効果を発揮することを願っています。また、ハンディキャップのある方への自助に役立つことができれば大変嬉しく思います」とサワラナイデーへ込めた願いを話してくれた。

なお、現在はホワイトのみの展開だが、販売台数の推移を見て、パステルブルー・パステルピンク・ベージュといった清潔感のある色での複数展開も検討しているという。
 

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