町工場がトイレでの“非接触グッズ”を開発

新型コロナウイルス感染防止のため、つり革やドアノブなど不特定多数の人が触れた部分に触れたくない。そう考える人も多いだろう。

そんな箇所の1つがトイレの鍵だが、いま大阪の町工場がドアに手を触れずに開閉できる“非接触グッズ”を開発し、人気となっている。それが「アームスライダーmini」だ。

アームスライダーmini(画像提供:甲子化学工業)
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トイレのスライド式の鍵に取り付けることで、手を使わずに手首や肘、かばんなどで鍵を開閉することができる。鍵に両面テープで貼り付けるだけで、取り外す際にも専用ツールを使うことできれいに剥がせるという。

また、抗菌剤の銀イオンが配合されており、菌を原因とする悪臭を防止する効果も期待できる

(画像提供:甲子化学工業)

開発したのは、大阪のプラスチック製品メーカーの甲子化学工業。従業員16人の町工場だ。

「アームスライダーmini」は、2個入りで2280円(税抜)。2020年12月に発売を開始して以来、ほとんどPRしていないにもかかわらず、病院、研究所、メーカー、食品工場、学校などから注文が入り、多い時は月に5000個ほど売れている。購入した人からは「こういった商品が欲しかった」「ありそうで無かった」といった声もあったという。

たしかに、ありそうでなかった“非接触グッズ”だ。そして、この「アームスライダーmini」には、どんな町工場の高い技術が使われているのか? 甲子化学工業の南原徹也さんに話を聞いてみた。

きっかけはウイルスの接触感染の論文

――甲子化学工業は、主にどんなものを作っている会社?

オフィス家具やコンビニレジのプラスチック部品などを製造しています。書庫や袖机の引き出しの取手をたくさん製造していますので、多くの方が弊社の工場で生産したモノを知らない内に触られているかと思います。


――アームスライダーmini、開発のきっかけは?

ウイルスの接触感染に関する論文を見ていた時に、トイレの鍵が非常に汚れていることを知ってしまったことが、「アームスライダーミニ」の開発のきっかけです。「便はトイレットペーパーを貫通して手に付着する」や「トイレの後に手を洗わない人が15.4%いる」ことなど、あまり知りたくない事実にたくさん直面しました。


――南原さん自身、潔癖なの?

新型コロナウイルス感染症が拡大する前は、潔癖とは無縁でした。電車の吊り革やトイレの鍵など、何も気にすることなく掴み、そのままの手でお菓子をつまんだり、鼻や目をこすっていました。

感染症を意識するようになった今でも潔癖とまではいきません。しかし、ドアノブやトイレの鍵などの不特定多数が触れる場所を触る際は少し躊躇するようになりました。肘や手の裏側で無理やり操作しています。

金属を樹脂に置き換える技術や特殊な両面テープを利用

――町工場の技術はどんなところに使われている?

金属を樹脂に置き換える技術や両面テープに関する知見が商品の開発および安全面に活かされています。アームスライダーミニは新幹線座席のテーブルアームに利用されている特殊な樹脂を利用しています。これにより、薬品への耐性だけでなく、金属並の強度を確保しています。操作中に商品が割れて人を傷付けないように安全面に配慮しています。

また、特殊な両面テープを利用することで、簡単な取り付けで強力な接着が可能になることに加えて、強い力が加わった時には外れることが可能になりました。これは、背の低いお子様のマフラーなどが商品に引っかかり、首を締め付けた際には外れるように安全面に配慮しています。
既存の構造物を傷つけずに取り付け、取り外しが出来ることもポイントです。

特殊な両面テープ(画像提供:甲子化学工業)

デザインにも配慮しており、圧迫感を与えない丸みを帯びた形状にすることに加えて、ものが引っ掛かりにくい形状にしています。

――トイレ以外には、どんなところに使うことができる?

軽量のスライドドアで利用することも可能です。アルミサッシのスライドドアなどは、手をかける部分が元々あまり無いため、操作性の観点からも好評をいただいています。例えば、大型工事現場のプレハブ事務所のスライドドアなどでも利用されています。

軽量のスライドドアにも利用できる(画像提供:甲子化学工業)

町工場の強みは「小回りの良さ」「判断の速さ」「情熱」「技術」

――今後、新商品を出す予定は?

詳しいことは言えませんが、新商品を出す予定で開発を進めているものが何点かございます。どれも「ありそうで無かった必要なもの」ですので、困っている方々のお役に立てれば嬉しいです。


――全国の町工場で働く人にメッセージを。

町工場は特徴がなく元気がないと言われることが多いですが、そのポテンシャルに気付いていないだけで、上手に活用すれば必ず今よりもプラスの効果を生み出すと考えています。

これは、大阪大学、東大阪市と共同で全国の指定感染症病院に不足していたフェイスシールド10万個以上を製造・寄付した際に感じました。このような取り組みは国内初だったかと思います。非常に短期間でのプロジェクト立ち上げでしたが、町工場の4つのポイントが活かせたと思います。

1.小回りの良さ
2.判断の早さ(技術・コストを熟知した人間がプロジェクトを動かす)
3.モノづくりに対する情熱(愛のようなもの)
4.技術


それぞれの会社の持ち味を生かして、共に社会に役立てていきましょう!


コロナの影響で売り上げが下がった町工場も少なくない。そうした中、甲子化学工業のように町工場の強みを見つけ、コロナ禍でうまれたニーズにこたえることで、新たなヒット商品をうみだすことにつながるケースもある。
 

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