処理水の海洋放出はグローバルスタンダード
福島第一原発における放射性物質を含む処理水について、政府は海に放出する方針を決定した。

2019年の9月、当時の原田環境相が退任直前の会見で「海洋放出しかないというのが私の印象だ」と発言したのに対し、後任の小泉進次郎氏が福島の漁業関係者に対し「おわび」をしたことをよく覚えている。あの時に「これはまだまだ時間がかかるな」と思った。
しかしその1年半後、菅義偉首相は「処理水の海洋放出」を決断した。漁業に携わっている人たちのことを考えると政治家としては苦渋の決断であるが、あえてそれをするところが菅さんらしい。
これについて米国政府は「日本は透明性を保ち、世界的な原子力安全基準に合致した手法を採用したようだ」と評価した。つまり処理水の海洋放出はグローバルスタンダードだということだ。
中国と韓国の「言いがかり」は無視せよ
実際に原発を持つ世界の国々は放射性物質トリチウムを含む処理水を海洋放出している。今回中国は「きわめて無責任なやり方」、韓国は「絶対に容認できない」と批判しているがどちらの国の原発も、日本の放出予定よりはるかに多くのトリチウムを含む処理水を毎年放出している。

だから中韓両国からの「言いがかり」については全く無視しなければならない。
しかし日本の漁業関係者からは風評被害を心配する深刻な声が聞こえる。菅首相と会談した全国漁業協同組合連合会の岸会長は「海洋放出に反対との考えはいささかも変わることはない」と強い反対意見を首相に伝えた。

「科学が風評に負けるわけにはいかない」
風評被害は起こるのだろうか。処理水を海洋放出したら日本国民は福島の魚を食べなくなるのだろうか。
民主党政権で原発事故対応に当たった細野豪志元環境相は最近出した著書「福島原発事故 自己調査報告」の中で「科学が風評に負けるわけにはいかない」として処理水の海洋放出を主張している。
細野氏は読者に対し「あなたが福島のためにできることは福島の魚を美味しく食べることだ」と言う。福島沖では黒潮と親潮がぶつかり、おいしい魚がとれるのだ。
だから菅さんも海洋放出する前もした後も、ぜひ福島の美味しい魚を食べてほしい。海洋放出は2年後らしいからその時も首相をやってるかどうかわからないが(まだやってる気もする)、河野さん、岸田さん、あるいは進次郎さんでも、首相になった人は必ず福島の美味しい魚を食べてほしい。
我々もみんなで食べて風評被害など吹き飛ばさなければいけない。
【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】