16日火曜日、日米の外務・防衛閣僚による会談、いわゆる2プラス2が行われた。日米は台頭する中国への懸念を共有し、共同声明という形で世界に向けて名指しの批判を発信。米バイデン政権と日本の足並みはこれで完全にそろったと言えるのか。

今回の放送では岸信夫防衛相を迎え、アメリカのアジア戦略と日米連携の今後、そして日本の防衛課題についてうかがった。

確認された対中国におけるアメリカの強い決意

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長野美郷キャスター:
16日に行われた2プラス2から日米連携の今後についてお話を伺います。日米の共同声明では、中国海警法などの最近の地域における混乱を招く動きについて深刻な懸念を表明。中国を名指しで批判したことが海外でも大きく報じられています。実際の会談での中国に関する具体的なやりとりは。

岸信夫 防衛相:
2プラス2の前の防衛相会談の中でも中国に対する厳しい考え方はお互いに共有した。具体的には海警船舶の最近の動き。わが国の領海に昨年は57時間連続して入り、接続水域でも111日間入り続け、トータル333日入っていた。日本漁船を追い回すようなこともやっている。これは国際法上まったく受け入れられないということ。

一方、中国で海警法が施行された。管轄海域や武器使用権限が非常に曖昧で、海警という組織自体が中国海軍の直接的な配下にある形となり非常に危険。これも国際法上受け入れられない。これら基本的な認識を共有した上で2プラス2に臨んだが、米国側も同じ認識で来られたと思う。

反町理キャスター:
共同会見では、記者から尖閣の問題について質問されたときさえ、「尖閣」という言葉がオースティン国防長官からもブリンケン国務長官からも出なかった。口にしないようにしないように立ち回っていたというのは勘繰り過ぎですか。

左から、オースティン米国防長官、ブリンケン米国務長官、茂木敏充 外相、岸信夫 防衛相
左から、オースティン米国防長官、ブリンケン米国務長官、茂木敏充 外相、岸信夫 防衛相

岸信夫 防衛相:
会談のときにはそういう感じではなかった。言葉に出すかどうかよりも、実際にこれから日米がともにあるという姿を行動で見せること。アメリカも相当強い決意を持って臨んでいた。絶対に守るという強い言葉があった。これに日本側がきちんと応えていくということ。

反町理キャスター:
「行動で」応えていく?

岸信夫 防衛相:
いろいろな行動があり、余計な行動をする必要はないが、何より必要なのは、尖閣諸島がわが国の領土であるという紛れもない事実が確認される形をとること。

反町理キャスター:
石垣島から来た日本の漁船を追いかける形で中国海警の船が領海に入ってくるようなことが起きている。国際的に尖閣諸島は日本の施政下にあると誰もが認める状況になっているか。

岸信夫 防衛相:
実際今、さまざまな国で「日本と中国が尖閣諸島の領有権を争っている」という見方をしている人もいる。外交的に発信をしてしっかり改めさせなければ。同時に、施政権は日本にあり絶対に渡さないということ。アメリカと日本がしっかりコミットしていくことが重要。

長野美郷キャスター:
日米の発信に対して中国外務省の報道官会見では激しい反発も見られました。中国の外交政策への悪意ある攻撃と著しい内政干渉、日本はアメリカの戦略的属国であると。岸さん、日本は「戦略的属国」なのでしょうか。

岸信夫 防衛相:
中国はそういう言い方をするんでしょうけど(笑)。これまで以上に日米同盟が強くなっていることの裏返し。中国として困る状況ができつつあるということだと思う。

アメリカからは日本のあり方について何も言われていないが、日本自身が決意を持って守る体制を組んでこそ、日米同盟のさらなる強化につながっていく。

反町理キャスター:
共同会見では、尖閣周辺における日米の共同訓練の話もあった。今までも行っていたことをあえて公表したということですか。

岸信夫 防衛相:
そうですね。これまでもやってきたをきちんと説明をしていった方がいいだろうと。
共同訓練の意味はいろいろある。自身の練度の向上は当然。そして相手に対してきちんとプレゼンスを見せること。また国内に対して、さらに言えば国際社会に対して今の状況をきちんとわかるようにしておく必要がある。

反町理キャスター:
海上の訓練だけ? それとも陸海空も全て含めた共同訓練ですか。

岸信夫 防衛相:
陸海空含めた統合訓練。より実践的な訓練を行いつつ、日米がしっかり一つになって動けると証明していくことが必要。

長野美郷キャスター:
視聴者からのメール。「尖閣で中国が強く出てくる原因は日本にもある。国際世論に対しても中国に対しても日本の施政権が不十分と宣伝している」。

岸信夫 防衛相:
日本が上陸や公務員の常駐といったアクションを取れば、中国が「日本が事態をエスカレートさせている」と入ってくる口実を与えてしまう。我々がやるべきは、まず尖閣諸島が日本の領土であること、領有権争いをしているというのではないことを国際社会に認めさせること。

台湾有事は日本有事、邦人保護最優先

岸信夫 防衛相
岸信夫 防衛相

反町理キャスター:
声明では台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した。日本は台湾を国として公的に認知するわけにいかない立場だが、平和と安定のために日本は何をするのか。

岸信夫 防衛相:
「台湾海峡については当事者間で平和的に解決することを期待する」というこれまでの日本のスタンスには沿っている。平和的かどうかという強い懸念を持って注視しているということ。与那国島との近さを考えても、台湾で何か起これば即日本の問題となります。アメリカと一緒に出したことは重要なメッセージになっていると思います。

反町理キャスター:
台湾有事すなわち日本有事という前提であれば、その際に日本の自衛隊はどういう行動を取るのか。

岸信夫 防衛相:
なにより、台湾には今日本人が3万人ほどいる。台湾有事となるとまず邦人保護というのは間違いない。軍事的関与には難しいところがあるが、放ってはおけない。我が事として考えなければ。

反町理キャスター:
台湾のほかに半島有事もあると思うが、邦人を保護し安全に日本に連れて帰ってくることが常に自衛隊の最大の任務であるという理解でよろしいですか。

岸信夫 防衛相:
いろいろ考えなければいけないが、第一は邦人の保護。

好き嫌いではなく、韓国を含めた日米韓の連携が対北朝鮮では重要

長野美郷キャスター:
北朝鮮をめぐる情勢と日米韓の連携のあり方について。
日本との協議後、米韓間でも2プラス2が行われた。日米と米韓それぞれの共同声明を比べると、米韓では中国への言及なし。北朝鮮についても非核化という言葉は使われず。米韓の合意事項は日米で合意した北朝鮮対応と一致していると思われますか。

岸信夫 防衛相:
それぞれ相手あってのこと。まず韓国がどう対応をしたのかわからない。いずれにしても我が国としては、対北朝鮮において日米韓のトライアングルの枠組みは大変重要。

反町理キャスター:
日米の間では危機認識を共有できていても、日韓の間で共有できるのか。危機感を共有できない国とトライアングルの枠組みというのは安全保障上難しいのでは。GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の問題もある。

岸信夫 防衛相:
なかなか答えにくい話。ただ、防衛・安全保障の現場での情報は共有できていると思います。

反町理キャスター:
日韓関係悪化において、レーダー照射事案があった。日本海において不審船に海上自衛隊の対潜哨戒機が接近したところ、韓国の軍艦から対空レーダーがロックオンされた。この問題はまだ解決に至らず。信頼関係は成り立ち得ないと思うが。

岸信夫 防衛相:
日韓の関係は当然ながら日米とは全然違うレベル。ただ北朝鮮の問題があるから対処しなければ。好きだろうが嫌いだろうが、進めていかなければいけない。

反町理キャスター:
トランプ政権からバイデン政権になり、アメリカの北朝鮮に対する姿勢はどうなるか。2+2での感触は。

岸信夫 防衛相:
トランプ政権時は、トランプ前大統領のパーソナリティによる部分もあるかもしれないが、拉致問題については相当自分ごととして北朝鮮に働きかけをしてくれていた。今回も朝鮮半島の非核化問題を話し、2プラス2では拉致問題も含めて認識の一致ができていると思う。

反町理キャスター:
米韓合同軍事演習を受け、北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)氏は挑発的な言葉で反発。北朝鮮への懸念が日韓でこれだけ違う中、ミサイルの懸念に日米韓として対応できるのか。

岸信夫 防衛相:
韓国がどうあれ、わが国は北朝鮮の軍事的動向をしっかり注視している。日米間での連携は取れている。日米韓の関係は対北朝鮮で非常に重要な枠組みだが、まずは日米でしっかりした対処ができる態勢をつくること。

反町理キャスター:
今回、日韓関係への懸念がアメリカからも示されたと聞く。レーダー照射事案なども含め、日韓関係修復に向けた今後の具体的な動きは。 

岸信夫 防衛相:
解決に向けて必要なアクションはとらねばならない。ただ日韓という二国間の関係となれば、今日本から何かをするということはできない。

反町理キャスター:
まず韓国に真摯な姿勢がなければということですね。

BSフジLIVE「プライムニュース」3月19日放送