東日本大震災から10年。岩手・陸前高田市で被災したロッテの佐々木朗希(19)は、あの日、父と祖父母を失った。「10年という節目ですけど、僕にとっては毎年忘れることはなかったので、特に10年だから何か変わるわけじゃないんですが、3月11日は毎年、特別な日だと思っています」

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佐々木は震災当時、小学3年生。小学校にいて高台に避難したため無事だったものの、津波で父と祖父母を亡くした。母と兄弟で避難所生活を余儀なくされた。日常が一瞬にして奪われた。

それでも、一つだけ夢中になれることが野球だった。「野球をしている時が一番楽しかった。夢中になれる時間というのがあったおかげで大変だった時、つらいときも頑張れた。野球をしていて良かったなと思う。10年前の僕はたくさんの人から支えられ、勇気や希望をもらいながら、頑張ることしかできなかったが、今は勇気や希望を与える立場にあると思う」

そして、ついにその時は訪れる。昨季は実戦登板なしに終わったものの、1年間の体力作りを経て、12日の中日とのオープン戦(ZOZOマリン)でプロ初実戦を迎える。

「僕にはプレーでしか恩を返せないので、まずはそこに集中したい。今年は試合でたくさん投げて活躍し、たくさんの人に勇気や希望を届けることができるように頑張りたい。何より諦めないで一生懸命頑張ることを言葉だけじゃなくてプレーでも見せることができたら」10年分の思いを胸に初実戦のマウンドへ。父、祖父母、そして故郷・岩手へ勇気と希望を届ける。

岩手・陸前高田市「奇跡の一本松」
岩手・陸前高田市「奇跡の一本松」
加藤忍
加藤忍

早稲田大学卒業。フジテレビ入社。スポーツ局すぽると!ロッテ担当、ヤクルト野球中継などを経て現在は報道局兼スポーツ局。