半世紀前に誕生し、コロナ禍にあっても地域の人たちを元気付けている未確認生物「ヒバゴン」。その歴史に迫った。
静かな町が大騒動…相談係も設置
広島・庄原市西城町、比婆山(ひばやま)のふもと…。
1970年7月20日、ここである事件が起こった。
元西城町職員・恵木剋行さん:
自宅へ帰っていたマルサキさんという方が、車で帰っていたら突然山から出てきた
これが、後に町を大きく揺るがす謎の未確認生物「ヒバゴン」の初目撃談だった。
この記事の画像(13枚)元西城町職員・恵木剋行さん:
全身毛だらけで、二本足で出てきて、猿でもないし熊でもない。普段見る生き物ではなかったというのが当時の話なんです
この目撃情報を皮切りに、ヒバゴンを見たという人が次々と現れた。目撃者の1人、宮本和俊さんにお話を聞いた。
ヒバゴンを目撃した宮本和俊さん:
小学校で6年ですかね。おじいさんとおばあさんにナバ(キノコ)を採って食べもらおうと思いましてね。それで山に入ったんですよ。クマザサの方に歩いてたんですけども、下の方からのっそりのっそりと、黒い何か人みたいなのが見えたんです。ゴツかったですね、本当に。(身長)160cm~165cmぐらいだと思うんですよ
ヒバゴンを目撃した宮本和俊さん:
顔が逆三角形で、髪が立っていた。目があったんですけどね。それは恐ろしいですよ、本当に。もう足がすくんだ状態で、その場から動けなかったですね。今でもやっぱり思い出しますからね、怖かった事は
ヒバゴンの出現で、普段静かな町は大騒動に。そこで町は「類人猿相談係」を設置。対応にあたることになった。
最初の目撃地点を案内してくれた恵木さんは、その担当者。
元西城町職員・恵木剋行さん:
目撃者へ、報道関係の方を含めて非常に多くの方のお問い合わせがあったり、押しかけがある。見た方、目撃者が非常に迷惑をしとるんだよという話になりまして、ひとつ相談の窓口を作ろうやと。少しでも見た方、目撃者の負担を軽減しようやということで情報の提供、あるいは目撃者へのアプローチを含めて、私が担当しようということになったんですね
元西城町職員・恵木剋行さん:
ひとつなんらかの解消しようやということになりまして。当時のお金で、迷惑料という形で5,000円をお支払いをするということが決まったというのが状況で。私の初任給1万4,900円です、月給が。忘れもしません。「えー、5,000円ですか!」と言うたら、「そのくらいしよう」や言うて
長年愛されるヒバゴン 小説や映画の題材にも
町をあげての大事件は、現在も語り継がれている。西城町で90年近くの歴史を持つ和菓子屋さん「大國堂」。
4代目店主も当時の話を聞いていた。
大國堂・稲垣雅彦さん:
町を歩けば、みんなヒバゴンの話ばっかりで。夕方の時間になると、町はシーンとなって、みんなテレビで「きょうはどこが映った、ここが映った」みたいに、もう大人から子供までニュースにかじりついてたっていう。やっぱり自分の町が出るっていうのが、すごくうれしかったっていうことで
最終的に集まった目撃情報は29件。1974年10月を最後に、ヒバゴンの目撃情報は途絶えた。
しかし、その後もヒバゴンは度々注目され、小説や映画の題材にもなった。
長年愛されるヒバゴン。その理由を恵木さんはこう推測する。
元西城町職員・恵木剋行さん:
地域の方が恐ろしかった、とんでもないものを見た、怖かったいう。ですが、全く人畜は無害
ヒバゴンの着ぐるみも、そのイメージの変遷を表している。
最初は恐ろしい姿だったヒバゴンだが、次第にかわいらしい姿に。
今では町のマスコットとして、さまざまなグッズにその姿を見ることができる。
コロナ禍で人の密集避け…50周年をお祝い
そして、2020年は最初の目撃情報から50年の節目の年。西城町観光協会もさまざまな企画を準備していたが、新型コロナウイルスの影響でほとんど中止に。
そこで2021年、人を集めることなく50周年を祝うことにした。
西城町観光協会職員:
オンラインで西城町を回ってもらって、ヒバゴンの出没地をガイドさんと一緒に回るということでオンラインツアーを企画しました
西城町観光協会職員:
備後西城駅をスタートして、ヒバゴンが最初に目撃されたところを当時、類人猿相談係だった恵木さんと一緒に回って、当時のお話を聞きながらですね、時々ちょっと観光スポットで休憩をしながら出没地を回っていって、西城町の郷土芸能なんかも見ていただいたりして、楽しんでいただくというような内容になっております
さらに、50周年記念のヒバゴン本も刊行する予定。
西城町観光協会職員:
当時、調査隊の方が来ていらして、その方の手記とか調査資料、貴重な当時を知る写真とか雰囲気が伝わっているものですので、ぜひ見ていただきたいと思います
半世紀が経ち、恐ろしい未確認生物は、地元のアイデンティティーになっている。
元西城町職員・恵木剋行さん:
今でこそコロナの中で、握手もできんし、ハグもできんような状況ですけど。僕は見てないだけに、「おぉ、生きとったか!」というような感じで会いたい、ぜひとも見てみたいというのが現実の問題ですね
(テレビ新広島)