新型コロナウイルスへの対応で、2月中旬から始まった山東省・青島での隔離措置は3週間の長丁場だが、今回はその生活ぶりをお伝えしたい。

当局の丁寧な対応と厳重管理から中国の現状と狙いも分析する。

オーシャンビューにきめ細かいサービス

隔離に使用されたホテル「青島紅樹林度暇世界(マングローブツリーワールド)」は穏やかな海を臨む部屋が売り物だ。

向かい側にはガーデンビューの部屋もあるため、私はたまたまラッキーだったようだ。

部屋は50平米程度。シャワー、トイレも清潔で過ごしやすい。

隔離施設はオーシャンビューだった
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ただ寒暖の差が激しく、朝と夜の気温が氷点下まで下がる日もある一方、日中はたびたび40度近くまで上がる。

エアコンも完備されているが、隔離中は感染を防ぐために使用出来ず、各部屋に暖房機が置かれていた。

朝夜は氷点下、日中は40度近くになることも

食事のメニューは野菜、肉、魚のバランスがとれ、フルーツも毎回付いているが、中華料理の特徴である、濃い味付けと油の多さは相変わらずだ。

最初の1週間で飽きが来た。

ただ、時折出てくる肉まんや餃子といった中華の定番は美味だ。

また日本料理のメニューも用意され、別料金で注文することも出来るし、お酒もある。

飲料水は無料で、湯沸かし器、コーヒー、紅茶、緑茶も完備。

困ったことがあればチェックインの際に登録したアプリ「WeChat」を通じ、日本語で不便を解消することが出来るし、その対応はきめ細かく丁寧だ。

個人的には滞在後、ほぼ2週間経って注文した生野菜のサラダが非常に新鮮で美味だったことが印象深い。

サラダは新鮮で驚くほど美味だった

日本語のテレビも料金を払えば視聴が可能だ。

私はせっかくの機会だと思い中国のテレビのみを観ることにした。

インターネットの状況も概ね良好だが、当局のチェックが入るのか、制限がかかることもあり、私も宿泊2日目あたりからいくつかのアドレスにはアクセス出来ず、煩わしい思いをすることになった。

インターネットは日本と同じようにはいかない

念のためお伝えするが、環境は良好だが部屋からは一歩も出られない。隔離措置であるから当然ではあるが、これは最大のストレスである。

厳重管理と丁寧な対応に見る中国の実態

このような隔離期間中の当局の丁寧な対応と、空港やホテルでの厳重な検査・管理体制については、これまでも2回にわたってお伝えした。

(関連記事:中国の新型コロナ水際対策 厳重検査を実体験
(関連記事:過剰?徹底? 中国の新型コロナウイルス対策 ホテル隔離3週間の実態 

過去と比べ、様変わりした中国側の対応の背景には何があるのか。その理由と実態を複数の外務省幹部、北京の大使館関係者に聞いてまとめた。

礼儀の改善と“チャイナスピード”

まず中国側の丁寧な対応については、時代の変化や国際化の波に揉まれ、礼儀やサービスの質が全体的に改善されたという話が聞かれた。

9年前の中国しか知らない私に、ある外務省幹部は「考えられない変化だ」と語ったほか、別の幹部はその変化の速さを「チャイナスピード」と呼んだ。

確かに今、中国のテレビでは、浪費を戒めたり食事などの各種マナーを守るよう呼びかけるCMがよく放送されている。

また、隔離施設がある山東省・青島や遼寧省・大連など中国の東北部は中国内でも開発が遅れ、かつ日本の投資で発展してきたとされる。こうした経緯もあり、「親日」的な土壌が育まれたと思われる。

もちろん、中国が日本との関係改善を模索していることもその根底にあるだろう。

ベランダからはきれいな夜景も見られる

「ノーコロナ」と国家の威信

一方の新型コロナに対する過剰ともいえる対応についてはどうか。まず、コロナへの考え方が日本と中国では全く違う。日本や欧米諸国は「ウィズコロナ」だが、中国では「ノーコロナ」だからだ。

部屋の中でもドアノブや椅子などで(ウイルスを調べるための)拭き取り検査がなされた

徹底的に抑え込む政策が取られる中で万が一感染が広がれば、その地方の幹部はクビだ。中国各地の担当者は自らの職を賭して任務にあたっているのである。

加えてワクチン外交を大々的に展開している中、国内での感染拡大は中国のメンツをつぶすことにもなる。2021年の共産党創設100年を前に「コロナを克服した」という成果を世界にアピールしたい思惑もあるだろう。

コロナに限らずテレビでは連日習近平国家主席の功績をたたえる番組が放送され、その求心力の維持には余念がない。2003年のSARSが拡大した経験から、北京では市民レベルでの自主的な取り組みもあったという。

これだけの理由が揃えば、過剰とも思える対応をするのは国家としても国民レベルでも自然だと言えるのかも知れない。

中国・習近平国家主席

中国は、本当に不思議な国である。

「中国をわかっているという人ほど信用しない」というある外務省幹部の言葉が忘れられない。

かつての「田舎者の大国」というイメージから脱却し、アメリカと渡り合うまでになった中国は、この新型コロナウイルスという未曾有の危機を経てどのような国になっていくのか。

中国とは「引っ越しできない隣人」である日本にとっても、目が離せない。

【執筆:FNN北京支局長 山崎文博】