待ち受ける無数の防護服

成田空港からおよそ2時間半。

2月半ばすぎ、北京に赴任するため隔離施設がある山東省・青島に到着すると、全身防護服姿の中国当局に迎えられた。

機体の下で待機する全身防護服の係官
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窓からは待機する係官が目にとまり、機体に取り付けられるボーディングブリッジにも同様の防護服が数人。

新型コロナウイルスの発生から1年以上経った今、その徹底的な管理が伝えられる中国では、いまだに厳重な体制が敷かれていることが一目でわかった。

この体制だからこそ感染の再拡大を最小限に押さえ込めている、といった方がいいかもしれない。

機内に入る係官を撮影したが、すぐに止められた。

実は機内では、通常求められる入国審査や税関審査以外に、検査への同意や健康状態、中国国内の連絡先などを記入する数種類の書類が配布されていた。

書類には身元や会社名、連絡先など多数の項目があった

出国直前にはPCR検査・抗体検査の陰性証明や自分の健康状態の申請をスマートフォンで済ませておく必要があり、手続きはかなり煩雑だ。

私をサポートしてくれた旅行業者によると、手続きが不完全で搭乗できなかった人もいるという。

徹底検査とこまめな対応

到着した機内では数人の係官が状況をチェックし、乗客は空港へと案内された。

中国に一歩を踏み入れ、書類を集める係員がなぜか私に「お前は中国人か?」と話しかけてきた。もちろん中国語だ。

かつて北京に赴任していたことがあり、少しだけ中国には馴染みがあるが、外見だけで「中国人か?」と言われたのには笑ってしまった。

どうやら私は「中国人顔」のようだ。

通路にはいくつものブースが設置され、乗客が日本でのPCR検査の結果や機内で記入した書類などのチェックを受けた。

周囲には防護服姿の係官が無数にいるものものしい雰囲気だ。

空港の出入り口にも多くの防護服姿が

日本語を話せる通訳が数人いてこまめに対応してくれたこと、必要な手続きを伝える、日本語のアナウンスが流れていたことには少々驚いた。

かつては公の施設でも日本語はもちろん、英語が使えることも少なく、また乗客の扱いもかなり雑だった印象があるが、対応はかなり丁寧になったようだ。

次に行ったのはPCR検査。

ビニールで覆われたいくつかの小部屋に乗客が振り分けられ、検査を受ける。わずか2日前に日本で実施し、陰性証明を提示したばかりだというのに、まさにその対策にはぬかりがない。

私の担当は、小柄で優しい雰囲気の女性だったが検査は容赦がなかった。鼻の穴の奥に綿棒を突っ込むのだが、両方とも喉まで抜けた。唾液の摂取も喉の奥までかき回され、咳き込もうがえずこうがおかまいなし。

検査自体はそれほど時間のかかるものではないが、一人の検査が終わると部屋中を消毒して次の乗客を入れていた。

もはや習慣化された作業だろうが、その徹底ぶりには目を見張るものがあった。ちなみにその日は鼻の奥がずっとヒリヒリし続け、日本での検査がいかに優しかったかを痛感した。

その後、体温のセンサーを通過し、入国審査を済ませ、預けた荷物を受け取った。スーツケースはなぜか濡れていて、雨でも降ったかと思わせたが、すぐに合点がいった。

消毒液を念入りにかけたのである。

ホテル到着時の消毒の様子

ホテルに到着した際にも荷物に消毒液をかける担当者がいて、これでもかと言わんばかりに消毒液を撒いていた。

空港の出口では、その便に搭乗した外国人の乗客がグループ毎にまとめられてバスに搭乗し、隔離施設に向かった。

大型のバスに乗ったのは15人程度。シートには全てビニールがかけられていた。

バスのシートには全てビニールが被せられていた

空港到着からバスの搭乗まで、外国人への対応は全員が全く同じである。防護服を着ていない、一般の人は一人も見ることがなかった。私の後ろに乗った乗客の一人が独り言で「こりゃキツいわ~」とつぶやいたのが印象的だった。

日本の対応との明らかな違い

人権、自由に配慮し、ギリギリの対応を取る日本と、有無を言わせず決められたルールを厳格に履行する中国。何を持って「成功」「失敗」とするかは一概には言い切れないだろう。様々な対策も、許容できる範囲は人によって違う。

新型コロナの感染拡大防止という課題を前に個人と国家のあり方、権利と義務の関係を考えさせられた。

【執筆:FNN北京支局長 山崎文博】