新型コロナウイルスの感染拡大はいまだに終息の兆しが見えない。
シリーズで連載する「名医のいる相談室」では、各分野の専門医に病気の予防法や対処法を解説してもらう。
今回は「薬に頼らないうつ病の治療法」について、心療内科の名医・田中奏多先生に話を聞いた。

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田中奏多先生は、東京TMSクリニックの院長。
ハーバード大学のTMSコースに留学して、薬に頼らない“うつ病治療”のプロフェッショナルとして、東京TMSクリニックを2020年5月に開業した。

欧米ではスタンダードな「TMS治療」

田中奏多先生:
日本ではうつ病の治療は現在4つあります。
(1)薬物治療
(2)電気けいれん療法
(3)認知行動療法(精神療法)

この3つがいままでありましたが、
「薬物治療」は、中等度以上の人たちには抗うつ薬の効果があるとされていますが、海外では軽症の人には効果が無いと考えられています。

「電気けいれん療法」は、麻酔が必要なので体に負担がかかります。
副作用として記憶が飛ぶなど認知機能に影響がでたり、入院での治療のため気軽に受けられる治療ではありません。

「認知行動療法(精神療法)」は、日本ではなかな受けられる場所がありません。

なので、メインはやはり薬物療法になってしまう。

ただ、薬物療法の問題点は効果がえられない人もいることと、副作用です。
仕事の時に頭がぼーっとしたり、吐き気が強かったり、若い人は逆に焦燥感が強くなってしまったり、女性であれば妊娠の時に子供に影響があるのではという不安が多いです。
 

となると、薬物療法はあまり効かないかもしれないし、電気けいれん療法は受けにくい。
この2つの間にあるのが(4)「TMS治療」というものです。

TMS(Transcranial Magnetic Stimulation)、「磁気刺激治療」です。
TMS治療は、アメリカやヨーロッパではスタンダードなうつ病治療の一つになっていて、日本でも2019年6月に保険診療化されました。

少ない副作用 TMS治療

TMS治療は副作用が少ないことが特徴です。

薬物療法の認知機能への影響は少なく、臨床の印象では副作用が無い人の方が多いです。少ない中でも良くある副作用は、軽い頭痛や軽い吐き気です。

大きな副作用としては痙攣です。
当院では、安全なTMS治療の提供のため事前にスクリーニングを行うことで痙攣しやすい方は治療対象外としています。
 

自分が安全に効果的にTMS治療がうけられるか、相談を受け付けております。まずは、お気軽にお問合せください。

TMS治療の効果

磁気で脳を刺激します。
痛そうだと思われますが、実はそれほど痛くなくて、具体的にはデコピンのような痛みです。

神経伝達物質のセロトニンやドーパミンが調整される、脳の血流や代謝が調整される、TMS治療は様々な機序で抗うつ効果が明らかになっています。

私が個人的に好きなのはその中でも「脳のネットワークの改善」です。

仕事をするとき、人間の脳は、3つのネットワークが関わっています。
(1)集中力のネットワーク(セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク)
(2)グルグル思考のネットワーク(デフォルト・モード・ネットワーク)
この2つを調整するのが、
(3)セイリエンスネットワーク

脳のネットワークを調整する

TMS治療は、グルグル思考寄りになっている脳のネットワークを集中力のネットワークの方にバランスを戻してくれる治療です。

背外側前頭前野を刺激することで、頭にモヤがかかったような感じがする、文章が頭に入ってこず何度も読み直すなどの集中力・思考力の上位の脳ネットワークを調整できるのが特徴です。
薬物療法は、落ち込む気分などの生物学的な下位の脳ネットワークを改善できる一方、この集中力・思考力の上位ネットワークへのアクセスが弱いことが近年の研究でわかってきています。

仕事をする人、勉強をする人など脳機能を落としたくない、改善したい人にはピッタリの治療です。

今、保険診療で行われているTMS治療の多くは入院治療で、大体2~3ヶ月で行っています。検査して、TMS治療して、検査をする。
働いている中で3ヶ月入院は現実的ではなく、なかなか受けられない治療です。

これを通院で受けられる形で短期集中治療にアレンジメントしているのが「東京TMSクリニック」です。
1回10~20分の刺激を行っています。
土日や休日に1日2回刺激するなどして治療を凝縮することで対応しています。

「東京TMSクリニック」では、初診にお試しのTMS治療が受けられます。
脳に刺激を与えるときくと、やはり大丈夫なのかな、と不安に感じられる方もいます。

まずは初診の時に、自分がTMS治療の適応になるのか、安全に効果的に受けられるのか、不安なことなどを相談した後に、TMS治療を実際にやってみて、その結果治療を本格的にやってみたいかを決めることができます。

ですので、やるか、やらないかの一大決心をしてから来るよりも、まずは相談に来てください。

名医のいる相談室
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