命を助けてもらった恩返しを…介護タクシードライバーの思い

救急車に代わって新型コロナの患者を専門に搬送する民間の介護タクシー。重症者の対応に追われる自治体の業務を支える、1人のドライバーの思いに迫った。

ストレッチャーに車いす。それに、運転席と後部座席を仕切る2重のビニールカーテン…。

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救急車に代わり新型コロナの患者を病院へと搬送する民間の介護タクシーだ。運営しているのは、介護タクシーグループ「ACT」。

「ACT」の担当者:
コロナ禍の中で患者搬送が増えてきて、本来の救命救急という社会的資源が確保できないということで始めた

搬送するのは、1人で動けない陽性者や中等症の患者。2020年12月、名古屋市から要請を受けて、患者の入院や転院を助ける業務を始め、消防から許可を得た4人のドライバーがコロナ患者の搬送にあたっている。

そのうちの1人、迫田累さん(43)。

この日、名古屋市内の高齢者施設から病院へ患者の搬送依頼があった。防護服、マスク、フェイスシールド、手袋は3重にする念の入れようだ。

2020年12月には多くて1日1件だった搬送件数だが、最近では3件ほど担当することもあるとのこと。

現在は家族と離れ、同僚と2人で生活している迫田さん。

迫田さん:
僕の子どもが幼稚園で「お前の父ちゃんコロナやっとるだろ。コロナ菌持っとるだろ」とかなったりしたら、いじめられたらやだなって

家族への誤解を恐れて、クリスマスも正月も家には帰らず、部屋から患者のもとへ向かった。生活を支えるのが、毎日妻から届く家族の映像。その映像で子供の笑顔を見ることが活力のひとつだ。

迫田さんが介護タクシーに乗り始めたきっかけは18年前、25歳の時に起きた出来事…。運転していたバイクが車と衝突。一時意識不明になるほどの大事故だった。

迫田さん:
10日間くらい意識を失って全く動けなかった。助けてもらいすぎて、それをいつか返したいなと

介護される側から介護する側へ。それまでは自動車整備会社に勤めていたが、事故から回復後、介護タクシーのドライバーに転身した。

迫田さん:
(自分を)犠牲にしてっていうふうに言われますけど、僕は犠牲にしているとは思っていないので。こんなことを言ったら馬鹿かと思われるかもしれませんけど、誰かがやらなきゃいかんのだったら俺がやると

命を助けてもらった恩返しを今こそ…。重症者の対応に追われている自治体の業務を支えていた。

(東海テレビ)

東海テレビ
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