15日に要望書提出…訪問看護師が優先接種の対象に

新型コロナウイルスの感染抑制が期待されるワクチン。2月には医療従事者を対象に優先接種が行われる予定だが、1月25日に厚労省が発表した資料で、新たに訪問看護師が対象に追加されたことがわかった。

ワクチンの接種開始については、ワクチン接種を担当する河野規制改革相が、1月22日の会見で「できる限り2月下旬までに、医療従事者から接種を開始できるよう準備している。」と語り、接種の順番については、まずは、国立病院を中心とした約1万人の医療従事者、次に全国約370万人の医療従事者が続き、3番目が高齢者。そして、4番目として基礎疾患のある人で検討している状況。

しかし、この医療従事者の対象について、当初厚労省が発表した資料には、自宅などを訪れて看護を行う訪問看護師は明記されていなかった。そこで、1月15日に日本看護協会、日本訪間看護財団、全国訪問看護事業協会の3団体が、優先接種の対象に入っていない訪問看護師を早期接種の対象である医療従事者の一員として明記し、自治体等に周知することをお願いする要望書を厚生労働省に提出した。
 

要望書の内容をまとめるとこうだ。

・訪問看護師は、在宅の新型コロナウイルス感染者の療養を支え続けている。訪問看護利用者や家族が新型コロナウイルスに感染した場合や感染の疑いがある場合であっても、休みなくサービスを提供し続けている。
・訪問看護師の状況は、病院や診療所の看護師と何ら変わるところはない。
・感染が急拡大している現状では、入院対象であっても入院調整に期間を要するために自宅待機を求められるケースが発生しており、今後も増大するものと予想される。
・訪間看護ステーションは小規模事業所が多く、感染者が発生するとたちまち体業に追い込まれる。在宅医療を担う訪問看護従事者がいかに感染を予防し、悪化を防止するかは、地域の医療崩壊を招かないための最重要事項の1つである。
・訪問看護ステーションの訪問看護師等を早期接種の対象である医療従事者の一員として明記し、自治体等に周知していただきたい。

実際、厚労省が1月18日に発表した優先接種の対象となる医療従事者の範囲には、訪問看護師の記載はなかったが、その後、1月25日に厚労省が自治体に向けた説明会の資料で、医療従事者の範囲について以下の内容が加えられていた。

医療従事者等の範囲は以下とする。
○病院、診療所において、新型コロナウイルス感染症患者(疑い患者を含む。以下同じ。)に頻繁に接する機会のある医師 その他の職員
(中略)
※訪問看護ステーションの従事者で、新型コロナウイルス感染症患者と頻繁に接する場合には、病院、診療所に準じて対象に含まれる。

このように、訪問看護ステーション等で働く訪問看護師も優先接種の対象に含まれることとなった。
それでは、今回、訪問看護師が優先接種の対象として明記されたことを要望書を出した団体はどう思っているのか?また、コロナ禍での訪問看護師を取り巻く現状はどうなっているのか?
要望書を提出した団体の1つである日本訪間看護財団の常務理事、佐藤美穂子さんに詳しく話を聞いた。

訪問看護ステーションの22%でコロナ感染(疑い含む)の利用者

――そもそも、訪問看護師は日本にどのくらいいる?

日本の訪問看護は、訪問看護ステーションと病院・診療所の看護師等が、医師の指示に基づき介護保険法と健康保険法等に基づき訪問看護を提供しています。
日本全体でどのくらい訪問看護師がいるかは正確に把握できませんが、「訪問看護ステーション」についてはデータがあります。

介護保険法に基づく訪問看護ステーションの訪問看護従事者は令和元年10月1日現在の実数で、看護師(保健師・助産師含む)が76,626人と准看護師が7,758人ですが、その他に訪問看護の範疇で訪問を行う理学療法士19,095人、作業療法士が8,226人、言語聴覚士が2,442人います(令和元年介護サービス施設・事業所調査の概況:令和3年1月13日公表)。

――訪問看護師たちの状況は?

訪問看護ステーションの利用者でコロナ感染(疑い含む)の発生は、2020年8月末までに22.1%の訪問看護ステーションが「あり」と答えていました(日本訪問看護財団Webアンケート:第3弾)。要するに、5か所の訪問看護のうち1か所はそのような対象者に訪問しているということです。

具体的なケアの状況です。訪問先では手指消毒をし、ゾーニング内でPPE(個人用防護具)に着替えます。療養室はまず換気をするとともに利用者にも家族にもマスク着用を依頼します。利用者の血圧、体温など確認後、できるだけ短時間で必要な看護を行って、使用後のPPEはプラスティック製のごみ袋に入れて密封し、多くの場合は家族に3日後にごみ出しをお願いします。最後に手指消毒をして辞します。

所内感染を予防するため、当該対象者に訪問する看護師を決めておき直行直帰で対応することも多く、看護師自身が体調管理を徹底しています。

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訪問看護ステーションが入っていないのは驚きでした

――これまで訪問看護師が優先接種の対象に入っていなかったことをどう思う?

訪問看護師は誰が感染しても感染させてもおかしくない状況下で、在宅医療の最前線を担い、介護保険又は医療保険の訪問看護を行っています。病院・診療所・薬局が早期ワクチン接種医療従事者となっているにもかかわらず訪問看護ステーションが入っていないのは驚きでした。

――なぜ優先接種の対象に訪問看護師が入らなかったと考える?

当該指定感染症は、高齢者又は基礎疾患のある人はすべて入院対応とされてきたので、在宅で療養する人はいないとの認識があったのかもしれません。
 

「良かったです」現場の訪問看護師の声

――今回、訪問看護師が早期接種の対象に入ったことをどう思う?

現場の訪問看護師たちの不安軽減につながると思います。


――これは、要望書の思いが厚労省に届いたということ?

入院できないで自宅療養者が急激に増えていることが背景にあると思います。3団体は、現場の訪問看護師の思いを受け止めて要望しましたが、さらに在宅医療に携わる医師の皆様からもご支援いただきました。

――訪問看護師が早期接種の対象に入ったことについて、現場の訪問看護師たちの声は?

「良かったです。どのような手続きで受けるようになるのですか」と聞かれていますので、次のステップにとりかかります。


――まだまだ自宅療養の患者が多い現状、どう思う?

PCR検査等の陽性者が増えると、軽症者・無症状感染者、入院待機や入院できない在宅療養者、退院の基準を満たさないまま自宅療養となった軽症者が増えると思います。その中には訪問看護の利用者も含まれ、訪問看護師は感染防護をしっかり行って、本人・家族のみならず関連する他サービスの従事者も、自立して感染予防ができるようにする必要があります。

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ワクチンについて課題はまだまだあるものの、感染者の自宅療養が増えている中で、訪問看護師も優先接種の対象に入ったことは最前線で懸命に働く方々にとってはひとつの安心材料になるだろう。
 

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