新型コロナウイルスの感染拡大はいまだに終息の兆しが見えない。
シリーズで連載する「名医のいる相談室」では、各分野の専門医に病気の予防法や対処法をわかりやすく解説してもらう。

今回は、「腸内環境の改善法」について、辻仲病院柏の葉で便秘の専門外来をしている大腸・肛門外科医の前田孝文先生に話を聞いた。

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前田孝文先生:
人間の腸は大きく分けて「小腸」と「大腸」があります。
「小腸」はご飯を食べた後、食事の栄養分を消化して吸収するという役割を主に担っています。

「大腸」は水分を吸収して便を形にして出すという役割があります。

腸内フローラ

前田孝文先生:
消化のスピードは食事によって様々ですが、早いものだとご飯を食べて4~5時間で大腸まで流れていきます。
大腸の中に便の元が入ってからは、だいたい1~2日で出て行くのが通常です。

人間の腸の中には、腸内細菌がたくさん住んでいます。
小腸にはあまり菌は住んでなくて、大腸にたくさんの菌が住んでいます

大腸の中には、だいたい1000種類以上の菌が合計100兆個以上住んでいると言われていますが、それを野原にたくさんの花が咲いているように見立てて「腸内フローラ」と呼んでいます。
綺麗な言葉ですが、それで腸内の細菌の様子を表しています。

善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌

前田孝文先生:
腸内フローラ」は大きく分けて、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」という言い方がされます。
「善玉菌」は、体に良い菌で、乳酸菌、ビフィズス菌がよく言われます。

「乳酸菌」は乳酸を作り、「ビフィズス菌」は乳酸と酢酸を作り、体に良い働きをします。

一方、「悪玉菌」は、体に悪い働きをする菌で、よく言われるのは、ウェルシュ菌やO-157のような大腸炎を起こす大腸菌です。

「日和見菌」は、普段は大きな働きをしないのですが、腸内の環境によって良い働きをしたり、悪い働きをしたりします。

「乳酸菌」や「ビフィズス菌」は毎日摂り続けることが大事

前田孝文先生:
「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」と言っても、実際は、善で良い働きばかりだとか、悪で悪い働きばかりとは考えなくて、状況に応じて良い働きをすることもあるし、悪い働きをすることもあると考えているので、単純に「善」とか「悪」という風には分けられません。

「乳酸菌」や「ビフィズス菌」は発酵食品にたくさん含まれていますが、イメージしやすいのはヨーグルトや漬け物、味噌などに乳酸菌が入っています。

乳酸菌やビフィズス菌をたくさん摂りましょうと言われますが、そういった菌は大腸の中で定着しにくいと言われています。毎日摂り続けることが大事です

ヨーグルトはたくさん飲んだ方が良いと言われています。
あまり少ないと役に立たないので、たくさんの量を継続して少なくとも2週間以上飲んでみないと、自分の体に合うかどうかは判断できません。

善玉菌が活動する良い働きのことを「発酵」と言いますが、悪玉菌の場合は「腐敗」と言います。

悪玉菌が好む食べ物はタンパク質が多い食事。お肉を食べ過ぎると悪玉菌が増えやすい環境になります。

腸内環境が乱れるとメンタルにも悪影響

前田孝文先生:
腸内環境が乱れるといろいろな悪い影響が出ることが分かっています。
例えば、メンタル面。気持ちと腸には関係があると最近よく言われています。

腸内環境が悪くなると気持ちに変化があって、鬱になったり、イライラしたりすると言われています。

また、太りやすい、痩せやすいというダイエットも腸内環境がすごく関係していて、痩せやすい体質にするためには腸内環境を良くした方がいいということが分かっています。

食物繊維をたくさん摂ると善玉菌が元気になると言われています。

腸内環境が変わる3つの要素

前田孝文先生:
週2~3回以上、1回30分以上の運動
を定期的にすると腸の環境が良くなると言われています。

また、腸内環境が変わる大きな要素としては、食事です。

脂肪が多く、かつ食物繊維が少ない食事を多くとると、タンパク質を好むいわゆる「悪玉菌」が増えると言われています。

逆に、食物繊維が多くて動物性脂肪が少ない食事をすると食物繊維を好むいわゆる「善玉菌」が増えやすいと言われています。
ですから食事は非常に大事です。

もう一つよく言われるのが抗生物質で、これは菌を殺す薬ですから、腸内にはたくさんの菌が住んでいますので、抗生物質を飲むとその影響を受けてたくさんの菌が死んでしまい、腸内環境が変わりやすくなってしまう。

ですので、抗生物質を飲んだら下痢をすることが時々副作用としてありますが、それは腸に対する副作用として起きています。
 

名医のいる相談室
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