未だ収束の気配がないコロナ禍では、アーティストとファンが同じ空間を共有する「ライブイベント」の開催可否の判断は難しいことだろう。

政府は、昨年12月から大規模イベントの人数制限を上限5000人とする方針を打ち出し、さらに1月7日に緊急事態宣言が再発令される中、音楽ライブエンタテインメント業界の4団体は12日、「緊急事態宣言下におけるライブイベント公演の開催に関する共同声明」を発表している。
 

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日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、コンサートプロモーターズ協会、日本音楽出版社協会の4団体で、その内容は「政府や自治体が示した条件に基づき、感染対策を徹底したうえで公演を開催する」というもの。

声明によると、公演1回の人数制限は上限5000人、または会場キャパシティに対する収容率を50%に制限するという。営業時間の短縮については20時までの終演に可能な限り応じるとしている。

ただし、これらは緊急事態宣言の対象期間である12日以前にチケットを発売した公演は含まれず、さらにライブ配信の無観客公演には終演時間の制限を適用しない。

前回の宣言解除後230万人動員も感染者なし

昨年5月25日に緊急事態宣言が解除されてから4団体の会員社が全国で開催した公演は、無観客250公演、有観客約7100公演に上り、有観客公演の総動員数は約230万人だったという。

そこでは「大声を出す」「密集する」「地域間移動」などの感染リスクを徹底的に低減し、今までこのライブイベント会場からの感染者発生は認められていないとのことだ。

また声明は、ライブイベントを支える様々な事業者が、公演の中止や延期で事業継続が困難な状況にあることにも言及。さらに、公演事業者はライブイベントを通じて社会に元気や活力を与える使命があるとして、ライブエンタテインメント産業を継承し発展させることに理解を求めていた。

このような思いから発表したのが共同声明であるが、では具体的にはコロナ禍でライブイベントはどう変わったのだろうか? そして、これからのライブイベントはどうなるのだろうか? 
担当者に聞いた。
 

2020年の公演市場規模は前年比8割減

――新型コロナによってライブイベントはどう変わった?

大変厳しい状況です。公演開催にあたり人数や収容率が制限され、公演収支の悪化により開催を見合わせ、多くの公演が中止、延期を余儀なくされました。公演事業者としましては感染拡大防止ガイドラインの徹底により公演開催を行っておりましたが、残念ながら開催された公演の出演アーティストや公演主催者に対して批判が寄せられた例も少なからずございました。

前回の宣言解除後も当面の間、観客を迎えての公演は叶わず、無観客の配信公演を行っていました。その後も収容人数に対する入場制限がかけられましたので、全体の市場規模としては2020年通年で前年比80%減まで縮小しています。


――今回の緊急事態宣言で、公演中止や観客のキャンセルは増えた?

すでに中止を決定した公演を多数確認しておりますし、現在も各公演主催者が中止ないし延期を検討するなど、対応に苦慮しているところです。また、チケット購入者からの問い合わせも多数寄せられており、この対応に追われています。


――公演の数は例年と比べてどう変わった?

開催発表され中止延期を発表した公演の他に、発表前に計画を取りやめた公演も少なからずあり、中止延期公演数の集計は現状出来ておりません。すでに全国各地で公演を行うコンサートツアーをとりやめ、代わりに無観客の配信公演を行っている状況から、開催予定の公演数は相当減少していると思われます。
 

ネット配信は「ライブの体感」の代わりにならない

――ライブイベントはこれからどう変わっていく?

すでにあらゆるジャンルの公演において、来場者には検温やマスク着用、声を発する声援の禁止など新たな鑑賞スタイルが定着しています。当然のことながらコロナ禍の収束までは、感染拡大防止対策を徹底したライブイベント運営を行ってまいります。

コロナ禍が長期化するなか、会場におけるライブ公演の代わりにデジタル技術を活用した配信公演が急速に普及しています。しかしながら、配信公演によってお客様が会場で実際に生で体感する価値の代替となるものではありません。リアルな実演を起点とする新たなライブ体験価値を提供するものとして、今後の進化が期待されます。 

私共公演事業者は引き続き、政府および自治体によって示される方針のもと、コロナ禍が収束に至るまで決して気を緩めることなく感染拡大防止対策に万全を期し、音楽、演劇をはじめとする文化芸術・エンタテインメントを愛するお客様に安心してご来場していただける環境創りに注力し公演を開催してまいりたいと考えます。
 

こうした中、今週、政府が条件付きではあるがイベントを中止・延期した事業者に対し、会場のキャンセル費用など最大2500万円を支援することが明らかになり、早ければ2月から申請受付を始める見通しだ。

今回の共同声明は、緊急事態宣言が解除される予定の2月7日までの公演開催としている。エンタメ業界はwithコロナでの新たな楽しみ方をさまざま提供しているが、ライブイベント関係者の支援とともに、気兼ねなくライブ会場に行けるという選択もできる日が早く来ることを願いたい。
 

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プライムオンライン編集部
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