「懲役1年以下」または「罰金」

新型コロナウイルスに対する感染対策を強化するため、政府は感染者の入院拒否に対し、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金とする感染症法の改正を検討し、調整している。

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また、感染経路把握のための積極的疫学調査を感染者が拒否した場合は、6カ月以下の懲役、または50万円以下の罰金で調整が進められている。

野党側からは、罰則に反対の意見も出ていて、政府は与野党との議論をふまえ、1月18日に召集される通常国会に感染症法改正案を提出する方針だ。

国民の信頼を勝ち取ることが課題

三田友梨佳キャスター:
哲学者で津田塾大学教授の萱野稔人さんに聞きます。入院拒否で刑事罰を検討という流れをどうご覧になりますか?

津田塾大学・萱野稔人教授:
政府の対応が不十分だったり、遅れたことがそもそも問題なのではないかと批判したくなるかもしれませんが、たとえ政府の対応が十分だとしても入院拒否の問題は起こり得るので、分けて考える必要があります。強制的な措置の妥当性については、目的に照らし合わせて、その措置が必要不可欠なのかどうかを見る必要があります。その点で言うと、すでに感染していて入院が必要というかたちで医学的な根拠も示されている人に対して、感染拡大という他者への危害を防止するという明確な目的があるので、そのことからすると刑事罰の検討という政府の判断は妥当だと考えられます

三田友梨佳キャスター:
一方で課題や懸念されることはどんなことが挙げられますか?

津田塾大学・萱野稔人教授:
例えば刑事罰が科されるということで、萎縮してしまって病状を報告しなかったり検査を受けなかったりする事例が生まれることが懸念されます。実際にこれを理由に反対が表明されています。ただこれに関してはより安心して入院できる環境を整備するとか、感染したことによる社会的差別や不利益をどう救済していくのか、そういったところで対応していくのが妥当だと思います

三田友梨佳キャスター:
ヨーロッパなどではロックダウンなど罰則を科して行動制限をする流れもありますが、今後日本も検討する必要があると思いますか?

(イメージ)
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津田塾大学・萱野稔人教授:
戦後の日本ではこれまで、政府が刑罰などの強制的な措置をとらなくてもいろいろな問題を乗り越えてきました。そうした政治文化、国民性といってもいいかもしれませんが、それが変容してしまうのではとの懸念があることはよくわかります。できるだけ刑罰が下されない方がいいことは確かです。そのためには政府がいかに感染症対策に国民の信頼を得ていくのかが問題だと思います。刑罰を厳しくしても、それだけでは上手くいきませんので、政府にはいかにして国民の信頼を勝ち取るかということを課題として求めたいです

三田友梨佳キャスター:
国民に自粛をお願いするだけではなく、新たな方向性で対策を講じなければ終わりは見えてこないと感じます。入院に対する罰則規定を検討することも一歩かもしれませんが、入院したくてもできない方がたくさん居る現状に早急に対応することが国民の信頼を得るために必要だと思います

(「Live News α」1月14日放送分より)