タイ政府は新年早々、新型コロナウイルス感染抑制のため活動制限を再強化する方針を決めた。

これまで国内感染を比較的抑え込んできたタイだが、2020年12月以降に感染再拡大が始まり感染者数が急増しているためだ。厳しい活動規制で再び感染拡大を抑制できるのか。タイは新年早々、正念場を迎えている。

日本より格段に厳しい規制

「(休業が決まった)1月2日もお客さんの予約がありました。お客さんは戻りつつあり、まだまだ頑張れると思っていた。一体どうしようか、という気持ちです」

バンコク市内でマッサージ店を経営するジュンさんはこう肩を落とす。地元当局が年明け早々に営業禁止を命じたためだ。マッサージ店は2020年3月にも休業を余儀なくされていて、その後の営業再開から、わずか半年で再び休業に追い込まれた。

休業となったマッサージ店(バンコク市内・2021年1月3日)
休業となったマッサージ店(バンコク市内・2021年1月3日)
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年明けのタイでは連日、規制強化に関するニュースが報じられている。首都バンコクでは既に規制が始まっていて、娯楽施設やパブ・バーなどのナイトライフ産業、フィットネスやスパ・マッサージ店などが1月2日からの一時休業を命じられた。さらにタイ政府は、感染リスクが高い施設の閉鎖や在宅勤務、県をまたぐ移動の自粛などを求める規制強化を決めた。

学校や塾も例外ではない。バンコクを含む28県の全ての教育機関は1月末まで休校を命じられた。こうしたタイの規制は、日本のような要請ベースではなく義務であり、違反すれば厳しい罰則が適用される。

厳しい入国制限策も…「不法入国」で崩壊

タイは新型コロナウイルスの感染抑制に成功してきた国の一つだ。タイ政府は入国する全ての人に14日間の隔離を義務付けるなど厳しい入国制限を行うことで、12月上旬まで感染者総数を4000人程度(死者は61人)に抑え込んできた。

しかし今回は、陸続きの隣国から不法に入国した外国人から感染が再拡大したとみられている。主な原因となったのが、2020年12月にバンコク隣県の水産市場で発生したクラスター(集団感染)だ。ここで働くミャンマー人労働者を中心に1000人以上が感染し、新型コロナウイルスは瞬く間に各地に広がった。東部ラヨーン県では違法な賭博場でクラスターが発生するなど、新たな集団感染も次々と判明している。

こうした影響を受けて、タイでは国内感染事例が急増していて、新規感染者の数は1月3日には315人(うち国内感染は294人)を記録した。最近では1日あたりの新規感染者数が三桁になるのが当たり前になりつつある。

WHO Thailand
WHO Thailand

経済回復のカギ「観光業」にも

新型コロナの感染再拡大は、徐々に回復傾向にあった国内観光にも影を落としている。

タイは観光業が国内総生産(GDP)の約2割を占める観光立国だ。外国人観光客がいない中、低迷する経済を立て直すためには国内観光の活性化が最重要課題で、政府は「タイ版GoToキャンペーン」や4連休を増やすなどの観光振興策を次々と打ち出してきた。

しかし新型コロナウイルス感染の再拡大によって、すでに旅行自粛の動きは広がっている。タイの民間調査会社は12月28日、年末年始の連休における観光業界の収入が当初予想より6割近く減少するとの見通しを発表した。今回の活動制限では県境をまたぐ移動の自粛を求めていて、国内観光がさらに苦境に陥るのは必至だ。

観光客が少ないビーチエリア(タイ・プーケット島 2020年12月)
観光客が少ないビーチエリア(タイ・プーケット島 2020年12月)
 

経済との両立を目指す姿勢も

ただ今回の規制内容からは、経済への影響を最小限に抑えようとするタイ政府の配慮も見て取れる。たとえば最初に国内で感染が広がった2020年3月には、ショッピングモールの営業や飲食店での店内飲食も禁じられたが、今回は営業継続を認めている。理髪店や美容室も引き続き営業可能だ。一方で、タイ政府は今後、感染拡大が収まらない場合には、さらなる規制強化も検討している。

コロナ禍の長期化で、すでにタイの経済は疲弊している。今回の感染再拡大を短期間で再び乗り切ることができるのか。2021年年初はタイにとっては正念場となる。

【執筆:FNNバンコク支局長 佐々木亮】