酒に酔うなどして道路上に寝てしまう「路上寝」。
タクシー運転手などプロのドライバーでさえ、夜間は発見が難しいという「路上寝」で、倒れ込んだ人を車がひいてしまう事故が多発している。
2018年12月の夜、仙台市内。タクシーのドライブレコーダーの映像。
車線を変更した直後、右側の路上に横たわっていたのは酒に酔った人だった。暗闇の中から、突然、視界に飛び込んできた。
道路で寝込んだり座り込んだりしていて車にひかれる人が、福岡県内でも相次いでいる。
2020年10月3日未明、福岡市の中心部を走る渡辺通り。
車道に座り込んでいた44歳の男性がひき逃げされ、重傷を負った。
また福岡市南区では、酒に酔い道路にうつ伏せで寝ていた36歳の男性がタクシーにひかれて死亡した。
路上に横たわった人が車にひかれる、いわゆる「路上寝」による事故は、身体へのダメージが大きく、車のスピードに関わらず死に至る割合が高いといわれる。
交通事故防止コンサルタント・上西一美さん:
今、全国で起きているのが、年間120件くらい。全国で、1年間で亡くなっています。速度が速ければ速いほど亡くなるっていう訳でもなく、例えば時速10km、15kmで踏んだ、それで死亡事故もあります
警察庁のまとめによると、路上寝による事故は減少傾向にはあるものの、全国で年間300件以上発生し、2019年は約120人が死亡している。
福岡県内でも2020年、すでに5人が命を落としている。
タクシー運転手などプロのドライバーでさえ、夜間は発見が難しいという路上寝。
しかし、ひいてしまえば刑事上の責任に加えて民事上の賠償責任が生じる。
紫牟田国際法律事務所・隈慧史弁護士:
普通の歩行者と比べて重傷化しやすいので、よく裁判とか刑事事件になりやすい。昼間の場合は、路上横臥者が「30」悪い、運転手が「70」悪いという過失割合になっています。一方、夜間だと倒れている人を発見するのは難しいということで「50」対「50」
路上寝による事故を防ぐためにはどうすればいいのか。
交通事故防止コンサルタント・上西一美さん:
ひとつは絶対に速度超過しないということ。速度が落ちたら発見しても守れる、止まれる可能性がありますからね。薄暗い場所だったらハイビーム走行することですね。基本、道路交通法ではハイビーム走行が基本ですから
周囲の車への眩しさを抑えた下向きのロービームと、遠くまでを照らせるライトが上向きのハイビーム。
100メートル先がどれほど見えるのかを比較してみると。
記者リポート:
現在、ロービームの状態ですが、先方に何かあるのは分かるんですが、何なのかは確認出来ません。
記者リポート:
次にハイビームの状態にしてみます。あ、人がうずくまっています。人が座っているのが見えます
法律では車のロービームは40メートル先、ハイビームは100メートル先が見えるよう規定されている。
専門家も指摘した車のスピードと組み合わせてみてみると、時速60kmで走っていたドライバーが危険を察知してブレーキをかけ、停車するまでの停止距離は約44メートル。
ところがロービームで見えるのは40メートル先までなので、路上寝を発見してブレーキをかけても間に合わない計算となる。
これに対してハイビームは100メートル先まで見えるため、ブレーキをかけると50メートル以上余裕を持って止まれる計算になる。
また、40メートル先までしか照らせないロービームであっても、停止距離が32メートルの時速50kmまで速度を落とせば、衝突は避けられる。
交通事故防止コンサルタント・上西一美さん:
人が寝ているっていう想定なかなかないですからね。ブレーキ踏むのも遅くなるし。事故って、やっぱり想定外ですよね。起こそうと思って起こす人はなかなかいないし。だいたい「まさか!」っていう言葉を使うんですけど、その「まさか!」を減らすには、ひとつひとつの事故を意識として持っておくというのは必要ですね
路上寝が多いのは、8月と12月。夕方から夜中の0時にかけての発生割合が高い。
道路交通法では、以下の2点は禁止されている。
・ 道路において酒に酔って交通の妨害となるような程度にふらつくこと。
・ 道路において交通の妨害となるような方法で寝そべり、座り、しゃがみ、または立ち止まっている行為。
コロナ禍ではあるものの忘年会や新年会のシーズン。
車を運転するドライバーも最大限注意しなければならないが、そもそも路上で寝てしまうことがないように心がける必要がある。
(テレビ西日本)