2021年こそは新型コロナウイルスの収束へ。
その「希望の光」となりえるのか-。

イギリスに続き、感染者世界最多のアメリカでも12月14日、ファイザー社などが開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。

FNNは、このワクチンの接種を受けた日本人医師に話を聞くことができた。ファイザーのワクチンといえば、日本政府も既に1億2000万回分の供給を受けることで合意している。

ほかの予防接種との違いは?
留意すべき点は?
そして日本が参考にすべき「追跡調査システム」とは?
今、最も気になるワクチンの詳細を聞いてみた。

「もう終わり?」コロナワクチンの“量” 

15日夕方、テキサス小児病院感染症科の池田早希医師は、勤務先の病院でワクチン接種を受けた。池田医師は、翌日から病棟勤務となるため、この病院での接種初日に投与が決まった。池田医師は他のワクチン同様、体調に変化がないか経過を観察するため、30分ほどその場で待機。

ワクチン接種から一時間後にFNNの取材に応じてくれた。

池田早希医師:
体調には問題ないですね やっと待ちに待ったワクチンなので接種できてうれしかったです。

ワクチン接種の感想を「待ちに待った」と表現した池田医師。

テキサス小児病院 感染症科 池田早希医師
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――他の予防接種と手順に違いはあったのだろうか?

池田早希医師:
手順や接種は普通のワクチンと一緒です。今回投与したファイザーのワクチンは0.3ミリリットルですが、インフルエンザワクチンなどのワクチンより量が少ない。個人差はありますが、私の場合、薬液がしみることもありませんでした。もう終わったのか、あっという間、という感じでした。

――ワクチン接種後、生活で気をつけることはありますか?入浴などはしても良い?

池田早希医師:
基本的には通常どおりの生活で大丈夫で、お風呂も大丈夫です。以前から言われていることは、免疫を獲得するための反応が出てくることもあります。特に2回目の接種のあとに熱や疲労感、頭痛が生じることがあります。2回目の後は仕事を休めるようにするとか、念のための措置をとるほうがいいとも言われています。

接種後、腕を見せてくれた池田医師

池田医師もインタビューの際は、特に痛みは感じていなかったが、接種から4時間ほど経つと、腕に痛みが出てきた。しかし、これらの反応は、免疫ができつつある証拠なので、特に心配する必要がないという。

ワクチン接種後に身体にどのような反応が出るのか、事前に医師の説明をよく聞き、冷静に対応する必要がありそうだ。

例えば、ワクチンの接種後に発熱した場合はどうすべきなのか。現在日本では、「発熱したら出勤しない、人と接触しない」というのが基本的な考え方となっている。池田さんはこの点についても、さらに検討が必要だと指摘する。

池田早希医師:
私たちの病院でも、ワクチン接種後に発熱の症状が出た場合、出勤していいのかどうか、現在議論されているところです

携帯メールで追跡「気分はどう?」

今後日本でも接種が見込まれている新型コロナウイルスのワクチンだが、日本でも行政レベルで、参考にすべき課題が見えてきた。

池田医師には、接種に先立ち、病院からV-safeというサイトのリンクが送られてきた。そこにアクセスし、ワクチン接種予定者が名前と携帯番号、接種する日時、さらにどの製薬会社のワクチンを接種するのかを入力する。現段階ではファイザーのみだが、アメリカではまもなくモデルナ社のワクチンも承認される見込みだ。いつ、どこでどのようなワクチンを打ったのか、基本データを管理することで、異なるワクチンの併用など誤用を未然に防ぐことができる。

池田医師も接種後に健康状態を回答

また、接種した後にも、池田医師の携帯にメールが届いた。そこに記載されているリンクに飛び、「気分はどうですか」「発熱や倦怠感などの症状はありませんか」などのアンケートに回答していく。

これらはCDC=米疾病対策センターが開発したシステムで、ワクチン接種の安全性をモニターする仕組みだ。副反応などワクチンの影響を即座に把握できるだけでなく、今後接種者が増えた際、どれくらいの人に症状が出るのか、などの大規模な追跡調査も可能になる。

更に、2回目のワクチン接種のタイミング(ファイザーワクチンであれば3週間後)も知らせてくれるというものだ。池田医師は、「日本にワクチンが導入された後も、保健所職員がすべて電話で追跡調査をするのは無理が生じる。こういった自動化システムは必要だと思う」と語る。

救える命-ワクチンは“希望”

池田医師の病院では、ワクチン接種の初日である15日は「お祝いムード」に包まれていたという。接種会場に並ぶ廊下は、カラフルな風船でデコレーションされ、一様に明るい雰囲気だった。

この「お祝いりムード」というのは、裏を返すと、これまで医療関係者や患者が、想像を絶する苦労や悲しみを経験してきたことの証だ。「パンデミックの“終わりの始まり”が来たかもしれない、希望が見えたかもしれないという雰囲気だった」と池田医師は話す。

池田医師自身も、新型コロナウイルスに感染した子供たちの治療にあたった。勤務する病院で、感染した子供が命を落とした、という知らせに接するたび、心を痛めてきたという。

池田早希医師:
すでにアメリカでは30万人亡くなっているので、ワクチンがもっと早くあったら失わずにすんだ命があるとおもうと心が痛みます。ワクチンがあったら防げたかもしれない命があったと、(これまで)つらい思いをしていたので。

ワクチンを「現段階では接種したくない」という人もアメリカでは一定程度いるのは事実だが、“集団免疫”を獲得し、パンデミックから脱するには、できるだけ多くの人が接種を受けることが重要だと、池田医師は強調する。

池田早希医師:
どんな治療法もワクチンもリスクがゼロというものはないですが、現在たくさんの人がコロナで命を落としていて、多くの人の生活が脅かされていいます。ワクチンはわたしたちにとって希望です。接種する機会が与えられた人は、より積極的に接種してほしいと思います。

【執筆:FNNニューヨーク支局 中川眞理子】