わいせつ教師を二度と教壇に立たせないようにする教員免許法の改正が暗礁に乗り上げる中、教師による性暴力の被害者である女性と支える会が、教師による性被害者らにアンケートを実施し10日結果を公表した。「ポストコロナの学びのニューノーマル」第26回。

教師による被害当事者らが自ら実態調査

「このアンケートで思うのは、教育委員会も教員も児童生徒にしても親にしても、性暴力が起こったときに大変なことが起きているという意識が非常に薄い。本当にそういう犯罪を起こしている教員がいたら学校にいてはいけないのに、そのままいさせてしまう」

石田郁子さんは中学生時代に教師からの性暴力被害に遭い、性被害でPTSDを発症したとして札幌市教育委員会と教員に対し2019年2月に東京地裁に提訴した。

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会見する石田郁子さん(12月10日)
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現在係争中である石田さんは、教育現場での性暴力被害の実態調査に取り組んでおり、今回2回目のアンケート調査を実施、分析結果を公表した。

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調査は石田さんと札幌市中学教諭性暴力被害者を支える会が、今年7月9日から7月31日までインターネット上で実施した。

調査の目的は大きく4つ。教師がどのように生徒に対して性的行為・性暴力をするのか、教師がどのように加害を継続させるのか、周囲からの介入または周囲へのSOSはどのような状況だったのか、被害者の被害認識と開示にどのくらいの時間がかかるのかだ。

性被害の8割は日常の学校生活で起こった

対象者は教師による性被害にあったことがあるか、またはあいそうになった人で、回答総数 159(有効回答149)のうち、小学校教師からの被害が64、中学校教師が45、高校・高等専門学校教師が28、専門学校・大学・大学院教師からの被害12だった。

4割以上が小学校教師から被害を受けている(学校教師による生徒への性的行為・性暴力被害アンケート集計結果より)

調査によると最初に被害を受けた年齢は9歳から17歳、小学校4年生から高校までの被害が多い。被害を受けた場所は教室や体育館、プールなど学校内が約8割となっていた。授業中との回答が31.5%あったことから、性暴力が密室で起こるとは限らず、また日常の学校生活の中で性暴力が起こるため、気がついたらいつの間にか被害にあっているケースが半数を超えていた。

被害を受けた「場所」

教師による性暴力は「体の接触」が最も多く(24.8%)、ついで「性的な発言」(20.8%)、「性的な行為」(12.7%)と続く。回答の中には、「ドライブに連れて行かれた」「自分の飲み物を勝手に飲まれた」「部屋の画像を送るように言われた」など、教師と生徒という立場を利用したものもあった。

最初の被害は「体を触られた」が最も多い

半分以上の被害は教師に会わなくなるまで続く

被害は1回のみが26.8%、2から3回が20.1%だったが、一方で1年以上との回答も14.8%あった。被害は自分が卒業するか、教師が異動するなど教師に会わなくなるまで続くケースが半分を超えている。

最初に被害を受けたときに被害と認識できたのはわずか22.1%で、性被害を受けたときの気持ちは「怖い、気持ち悪い」が46.3%、「何が起きたかわからない」が30.9%となっている。被害者のうち教師に苦痛や拒否を表明したのは3割程度だった。

性被害を受けた時の「気持ち」

先生を疑う発想が無いため被害と認識できない

最初に被害と認識できなかった被害者は、教師からされた行為が被害だと認識するのに「10年以内」かかったとの回答が最も多かった。時間がかかった理由として、「学校の先生を疑う発想が無かった」など教師の地位が関係する回答が4割近くある。

石田さんは「多くの性暴力は教師という信頼を利用し、警戒心を持たせないばかりか、教師の言うことが正しいとさえ思い込ませるので、非常に悪質。中学生や高校生の場合は、恋愛を口実とした性暴力が発生し、交際という口実で長期化するためより深刻だ」と強調する。

相談した被害者の6割以上が否定的な反応を受ける

被害者が被害を訴えることは極めて難しいことも調査で明らかになった。

「被害」だと認識できたのは、わずか2割

最初に被害だと認識した約2割の被害者のうち、誰かに相談したのはおよそ半分(相談した相手は友達が33.3%、保護者が25.6%、学校の他の教師が17.9%)。つまり他者に相談できた被害者は1割程度ということになる。

しかも相談した被害者のうち6割以上が、相談した相手からまともに取り合ってもらえなかったか信じてもらえないなど否定的な反応を受けた。

また、学校の他の教師が被害に気づいていたとの回答が3割近くに上り、うち9割が見て見ぬふりをするなど被害を止めなかったことも調査からわかった。

「第三者委員会による調査」を強く要望

石田さんは10日文科省に対して、再発防止策としてわいせつ教師に対する文科省の懲戒処分の基準・調査方法の統一(原則、懲戒免職)や、第三者委員会による調査、教員免許の再取得を不可とする教員免許法の改正、他の教師による通報の義務化と連携できる職場環境を作る、疑いのある教員を一時的に現場から離れさせるなどを要望した。

また、未然に防ぐために教員への性暴力やその対応に関する研修や、児童生徒・教員への定期的な実態調査、教員採用時の子どもへの性暴力の可能性チェックと恋愛など教師と生徒以外の関係の禁止を訴えた。

特に強調したいこととして石田さんは、第三者委員会による調査と他の教師による通報の義務化、連携できる職場環境を作ることを挙げている。

「調査の回答149件のうち、学校や警察が介入して被害を止めたのはわずか5件でした。教員による性暴力の再発を防ぐために、加害教員と関係性が強い学校や教育委員会に調査や判断を委ねずに、弁護士、虐待や性暴力の専門家精神科医、児童福祉司、臨床心理士等で構成される『第三者委員会による中立的な調査・判断の義務化』を強く要望します」

教員免許法改正は性暴力撲滅の1丁目1番地

先月13日の国会で、わいせつ教師を二度と教壇に立たせない教員免許法改正の検討状況について萩生田文科相は、「内閣法制局との調整に時間がかかっている」としたうえで、「日本の法システムの中で、わいせつ教員だけが二度と教壇に立てない仕組みがどうやったらできるのか頭を痛めている」と説明した。

何度も繰り返すが、わいせつ行為を犯した教師の職業選択の自由と子どもの精神や身体の自由のどちらを優先させるべきなのかは自明の理だ。

教員免許法の改正は、教師による性暴力を撲滅するための1丁目1番地だ。

文科省は子どもを守り育む役所の矜持を持って、ぜひ次の国会に向けて取り組んで欲しい。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】