安否確認のために「連絡手段を決めておく」のも大切です。災害時は電話もつながりにくくなることもあります。
なるべく日常で使っているツールを選び、LINEで連絡を取り合っているのであれば、「災害時もLINEで連絡を取ろう」といった話をしておきましょう。もし親御さんが使い慣れていないようでしたら、帰省時に練習してもよいかもしれません。
例えば、「災害時の連絡の練習をしてみよう」とメッセージを送り、親から「無事です」と返信してもらう。普段使っている連絡手段で、一度やり取りしてみるところからでもよいのです。もちろん、衝突してまで使わせる必要はありません。可能な範囲でサポートできれば十分です。
「教えてくれない」のにも理由がある
子ども側ができることとして「常備薬の確認」を挙げましたが、これは配慮が必要です。
飲んでいる薬の把握やかかりつけ医を知っておくのも大事ですが、親御さんによっては自分の健康状態を話さないケースもあります。
子どもには「医者にはかかっていない」と言いながら、長い間、糖尿病の注射を打ち続けていたという方もいました。
親が健康状態を話さない背景には、「子どもに心配をかけたくない」「迷惑をかけたくない」といった思いがあることもあります。なかには、自分自身が親の介護で大変な思いをした経験から、「子どもには同じ思いをさせたくない」と考えている方もいます。
普段飲んでいる薬や健康状態を知っておくことも大切ですが、そうした親の心境を汲み取って、無理やり聞き出すようなことはしないようにしましょう。隠すのにも親なりの理由があるのです。
子どもにも親には知られたくないことがあるのと同じように、親にも子どもに知られたくないことがある、と考えてみてもいいかもしれません。
「何かあったら駆けつける」は難しいことも
もうひとつ、「何かあったら私が駆けつけなければ」と考えている人もいます。
親が心配で、駆けつけようと考えるのは当然です。ただし、災害時は徒歩圏内でも安全に移動できるとは限りません。まず自分自身の安全を確保し、すぐには駆けつけられないことも想定して備えておきましょう。東日本大震災や私の親戚が暮らす熊本県で2016年に起きた豪雨災害のときも、すぐに駆けつけられない状況でした。
だからこそ、先述した「子ども側もできること」をやっておくことが、いざというときの安心につながります。
帰省したとき、「これも備えていない」「あれもできていない」と、防災チェックリストで親を採点するような話し方になっていないでしょうか。心配して伝えているつもりでも、親には、自分の暮らしを否定されたように聞こえるかもしれません。
親もこれだけ災害が起きているなかで、何も考えていないとは限りません。まずは「防災についてどう考えている?」など、親がいま考えていることを聞くところから始めてみましょう。
防災意識を変えることをゴールにするのではなく、親の考えを聞きながら、自分たちができることから始めてみましょう。親と会話して同意してくれるなら、備蓄食や簡易トイレを実家に置いておくだけでもよいかもしれません。
親を動かすことよりも、親が変わらなくてもできる備えをしてみる。どれだけ備えても、親への心配をゼロにすることはできません。できる備えを一つずつ進めながら、自分の中にある心配とも付き合っていく。そのためにも、親と話し合える関係を保つことが大切なのだと思います。
川内 潤
NPO法人となりのかいご代表理事。社会福祉士、介護支援専門員、介護福祉士。著書に『親不孝介護 距離を取るからうまくいく』(共著、日経BP刊)、『親の介護の「やってはいけない」』(青春出版社刊)ほか多数。

