災害のあと、家族が夜中に眠れずに歩き回わったり、つじつまの合わないことを言っていたりする場合、それは単なる不眠ではなく、「せん妄」かもしれません。
睡眠研究の第一人者として知られる医学博士・三島和夫さんは、せん妄は不眠と間違えやすい一方で、対処法はまったく異なると注意を促します。
せん妄とはどのような状態を指すのか、不眠とどうやって見分ければ良いか解説していただきます。
文=三島和夫
せん妄とは?
せん妄は、脳が一時的にうまく働かなくなり、意識がぼんやりと濁った“寝ぼけ”のような状態に、落ち着きのなさや興奮が加わるものです。強いストレスや体の不調をきっかけに、数時間から数日のうちに急に起こるのが特徴です。
典型的には、夜に眠れずにもうろうとしたまま歩き回ったり、興奮して大声を出したりします。
反対に昼間はウトウトして過ごし、昼夜が逆転してしまいます。症状には波があり、話しかけても状況が理解できないときもあれば、比較的しっかりしている時間帯もあります。
認知症と違うのは、原因が取り除かれ、睡眠のリズムが整って意識の濁りが晴れれば、元の状態に戻ることです。多くは数日から1週間程度で軽くなりますが、数週間続くこともあります。
高齢者だけのものではない
せん妄は、ふだんは高齢者や入院中の患者さんに多く見られます。
しかし災害時には、強いストレス、睡眠不足、急激な環境の変化といったきっかけが一度に重なります。そこに脱水や熱中症、けがや感染症による発熱、持病の悪化などが加わると、年齢に関係なくせん妄が起こりやすくなります。
若い世代や働き盛りの方で特に注意したいのが、お酒と薬です。

