厳しい残暑が続く鹿児島だが、海はひと足早く秋の顔を見せ始めている。日置市の江口漁港では、秋の訪れを告げる魚として地元に親しまれるバショウカジキ、通称「秋太郎」の水揚げがスタートした。旬を迎えたこの時期の味はマグロを上回るとも言われ、地元の人々が待ちわびる季節の風物詩だ。
午前4時、漁港に秋の香りが広がる
9月16日、午前4時前の江口漁港。前日の15日に出港した漁船が港へ戻り、水揚げ作業が始まった。船から次々と運び出されるのは、大きく身の締まったバショウカジキだ。
漁協によると、2026年は多い日で100匹以上が水揚げされており、型も上々だという。漁師は「たくさん取れた時に、大きいのが何本か混ざっている。何に料理してもおいしい。照り焼きにしても刺身にしても」と語り、「刺身でおいしく食べてほしい。鮮度に自信がある」と胸を張る。夜間に沖へ出て魚を獲り、夜明け前に港へ帰り着く——漁師たちの働きが、鹿児島の食卓に秋を届けている。

「秋太郎」とは何者か
バショウカジキは、鹿児島では古くから「秋の訪れを告げる海の幸」として知られ、「秋太郎」という愛称で親しまれてきた。その名が示す通り、秋が旬の魚であり、寒さが増すにつれて脂の乗りがさらに増していくのが特徴だ。
水揚げされた「秋太郎」が並ぶのは、漁協直営の物産館「江口蓬莱館」である。店内には大きな一匹が丸ごと飾られ、売り場の主役として存在感を放つ。身からは脂の乗りがひと目で伝わり、訪れた買い物客の目を引きつける。

「今年初めて来た」——地元客も心待ちに
「江口蓬莱館」には地元の買い物客が次々と訪れた。「一番旬だから秋太郎は。きょうは刺身で食べたいと思って買い物に来た」と話す客の姿があれば、「今年になって、きょう初めて来た。自分は秋太郎の唐揚げが一番好き」と語る客もいた。刺身、照り焼き、唐揚げ——料理の幅が広いことも、この魚が長く愛される理由のひとつだろう。
同館の塩入卓也さんは「徐々に、今から寒くなるにつれて脂の乗りも良くなる。鹿児島では秋と言えばやっぱり秋太郎なので、漁師さんが夜間、頑張って取ってきたものを楽しみに、おいしく食べてほしい」と話す。
11月頃まで、深まる秋とともに味も深まる
「江口蓬莱館」では、「秋太郎」を11月頃まで店頭に並べる予定だ。秋が深まるにつれて脂の乗りは増し、旨さはさらに高まっていく。残暑がまだ続く鹿児島にあって、「秋太郎」の水揚げは、季節の変わり目を体で感じられる数少ない機会のひとつだ。
日置市・江口漁港の夜明け前から始まる漁師たちの仕事が、地域の食文化を支えている。
【動画で見る▶残暑続くも秋の訪れ 売り場の主役・秋太郎の水揚げ【鹿児島・日置市】 】

