チキンカツ5枚で400円、ハンバーグ10個で600円。物価高が続く今、思わず手が伸びるような価格が並ぶ直売所が鹿児島県鹿屋市にある。年間約3600トンの冷凍食品を製造する「鹿鳥食品」だ。県内トップクラスの製造量を誇るこの工場には、66歳で逝った創業者が残した「家族愛」が今も息づいている。
1分間に100個、巨大工場の内側
鹿屋市田崎町に構える鹿鳥食品の工場は、肉料理をメインとした業務用冷凍食品を製造している。160人が働くその現場に足を踏み入れると、コンベヤーでパン粉がまぶされていく光景が目に飛び込んでくる。製造されているのは「チキンチーズ」、すなわちチキンのロールカツだ。1分間に100個、1日に5万個という圧倒的なスピードで生産が続く。

野菜でも梅でも、固体でも液体でも何でも巻けるのがこの工場の強みだという。色合いが鮮やかなチキンロールは1本350円。温めてご飯にかければ牛丼にもなる牛カルビ焼きは1袋220円、晩酌のお供にぴったりなゴボウの唐揚げは500グラム入りで350円と、どれもお財布に優しい価格設定だ。

別の部屋に進むと、香ばしい香りが漂ってくる。長さ約20メートルの巨大なオーブンで焼かれているのはローストチキンだ。まだ残暑が続く時期にもかかわらず、工場ではすでにクリスマスに向けたローストチキンの製造が最盛期を迎えていた。細かくカットされたチキンはピザのトッピング用として、スーパーや量販店へと出荷される。
15分に1回、徹底した衛生管理
作業中、突然ブザーが鳴り響いた。従業員全員が手を止め、手袋を確認し始める。営業課の井口航主任はこう説明する。

「15分に1回必ず行っている。もしそこで破れなどがあったら、15分前にさかのぼって、みんなで破損などないか確認している」
大量生産の現場でも安全と品質を妥協しない。その姿勢が、業務用としての信頼を支えている。
養鶏から始まった男の挑戦
鹿鳥食品はもともと、養鶏業を営む1人の男性が立ち上げた会社だ。5年前に66歳で亡くなった創業者・延時憲人さんは、「自分で育てたものに自分で価格を付けたい」という信念のもと、30歳のときに食品加工も手がけるようになった。

管理課の井口春香主任は、創業者の歩みをこう振り返る。
「次に始めた総菜の仕出し業がすごく好評で、朝早くから夜遅くまで仕込み。でもそれだと自分の子供たちの運動会に行けない。『自分の子供たちの成長を見守りたい』という思いから、冷凍食品の加工業を始めたと聞いている」

仕出し業の成功があっても、子どもの運動会に出られない日々に延時さんは葛藤を抱えていた。家族との時間を守るために選んだのが、冷凍食品工場という道だった。
直売所に詰まった「家族愛」
創業者が大切にした家族愛は、地元住民のために設けられた直売所にも受け継がれている。並ぶ商品は、料理に時間をかけずとも家族と食卓を囲める品々ばかりだ。業務用ゆえの量の多さに加え、プロが使う味の確かさも売りにしている。

さらに、直売所には加工場ならではのユニークなサービスがある。その場で揚げてくれる「揚げ揚げサービス」だ。買い物客からは「出来たてが取りに来られるのはうれしい」と喜ばれている。
井口春香主任はこう呼びかける。「工場は揚げるのが大得意なので、家庭で揚げるよりはるかに楽に私たちサクッと揚げてしまうのでぜひ利用してください」
創業者が願ったのは、自分の家族と過ごす時間だった。その思いは今、鹿屋から全国の食卓を支える工場として形を変え、多くの家族の団らんを後押しし続けている。
【動画で見る▶「子供の運動会に行けない」創業者の思いが生んだ冷凍食品工場 鹿屋・鹿鳥食品、年間3600トン製造の舞台裏【鹿児島】】

