一度は〈廃業〉も考えたものの、お客さんの熱い声を受けて復活です。震度6強の揺れに見舞われた宇城市小川町。甚大な被害が出た商店街の一角で老舗のかまぼこ店が営業を再開しています。
熊本地震で被災した老舗かまぼこ店
8月1日の朝、地震で被災した店の軒先に座っていた男性に出会いました。安井敏雄さん、76歳。宇城市小川町の商店街で『安井蒲鉾店』を営んでいます。地震から5日目のこの日は、早朝から妻の久留美さん(67)と工場の片づけに追われていました。

久留美さんは「この鍋は(土台の)レンガから外れて斜めになっていた。油もこぼれしまった」と話し、かまぼこ店としては約90年、それ以前は白玉粉の製造と先祖代々、小川町での商いは、約120年になるといいます。

床はめくれ上がり、重さ400キロ以上もある機械が大きくずれ動くなど、店舗と工場と住宅を兼ねた建物には、大きな被害が出ました。地震の直後は店を畳むことも頭をよぎったといいます。

久留美さんは「『大丈夫かなぁ…』って、夜中は考えたりもするけど、昼になったら何かしら元気になって。『いやいや、ちゃんとするって自分で決めたんだからって』。お客さんがとにかく『続けて、続けて』『辞めないで』って言ってくれるから。お客さんたちの力を借りながら」と話します。

営業再開のめどが立たない中でも、安井さん夫婦は前を向いていました。敏雄さんは「(営業)再開はさせたい。まだがんばるよ。まだがんばる」と話し、久留美さんも「くよくよしたって仕方がないでしょう。どうやって再建していくか、そればっかり」と話します。
『なりわい再建』課題は資金面
『いかに、なりわいを再建させるか』。地震で被災した多くの事業者にとって、喫緊の課題です。9月8日に被災地を視察した経済産業省の越智俊之政務官は、安井さんの店を訪れ支援制度などについて、直接説明しました。

越智政務官は「今回は『局激』といって、局地的な激甚災害だが、それでも10年前にできるだけ近い形の〈なりわい並み〉という形の支援をする」と話し、説明を受けた久留美さんは「使いやすいような補助金かなと思った。少し、資金の方は安心というか…やっていけそうかなという。お客さんの期待を裏切らないように頑張る」と話します。

そして9月17日に再び訪ねてみると、まだあたりが薄暗い早朝から従業員とともに仕事に励む安井さん夫婦の姿がありました。約1カ月半の休業を経て、営業を再開しています。

敏雄さんは「地域密着だから、うちは地域の人が買ってくれるから」と話し、すり身を揚げて、天ぷらやちくわをひとつずつ丁寧に作り、袋詰めしたら卸先に配達に向かいます。向かったのは近くのスーパーマーケットです。

久留美さんが商品を並べていると、早速、常連客と話が弾みます。資金面など営業再開には心配なこともあったそうですが、久留美さんは店を続けることで、地域を守りたいと話します。

久留美さんは「こんなにありがたいことはないなあと思う。『ちくわ屋冥利』に尽きる。喜んでくださる姿を見れば、大変だったけど良かったなあと思う。小川町も辞める店が増えてきたから、残ってできるところはしていかないといけないと思う。あの町を守りたい。風景、優しさ、真心…守っていく一員になれたら」と話します。
(テレビ熊本)

