地震発生から1カ月余り、「自分の代で絶やすわけにはいかない」と明治時代からの伝統を守ろうと動き出しています。端午の節句にあわせて飾られる、鯉のぼりなどを製造する八代市の染物工場も被災しました。
工場の窯や煙突、配水管も被害
八代市鏡町の『平本染工場』は1898年(明治31)創業。型紙や版を使い、職人が染料を一色ずつ手作業で生地に刷り込んで模様を表現する『手捺染』(てなっせん)という技法で、鯉のぼりを作り続けています。この技法は『九州で唯一』とされています。

鯉のぼりと共に飾られる『武者絵のぼり』は、戦国武将が色鮮やかに描かれ、そのデザインは圧巻で、県内では『矢旗』とも呼ばれ、県の『伝統的工芸品』にも指定されています。

しかし今回の地震で、作業場や設備に様々な被害がありました。平本染工場5代目の平本裕貴さんは「染料を温めるための窯、ここに煙突があった。地震で崩壊してしまって、ほとんど手つかずの状態」と話し、「ここはのぼりを染める場所。台に茶碗に入れた染料を入れていたが、全部倒れてぐちゃぐちゃになった」と話します。

また、染物には欠かせない水の配管設備にも影響が出ています。平本さんは「水洗いを全般的にするところ。配管の継ぎ目が外れていて、水が噴き出るような状態だった。応急処置をしている。1~2週間は水が吹き出した状態だった。水が無いと何もできない」と話し、建物の安全が確認できていないこともあり、再開のめどは立っていない状況です。
鯉のぼりが再び空を泳ぐ日まで
一時は『廃業』の2文字も頭をよぎったといいますが、周囲からの応援に後押しされ、120年以上にわたる伝統を守ろうと決意しました。

平本さんは「自分の代で絶やすわけにはいかない。これだけ取引先やお客様から応援の電話をいただいているので、あきらめずに再建に向けて頑張っていきたい。一個一個が同じではなく、いうなれば生き物。正解があるわけじゃなく、そういうところも突き詰めていきたいし、多少のばらつきが味を出している、そういう良さを知ってほしい」と、先代から受け継いできた染物の魅力を語りました。

平本染工場では再建に向けてクラウドファンディングで寄付を募っていて、平本さんは自らの手で染め上げた鯉のぼりが、再び空を泳ぐ日を目指して動き出しています。
(テレビ熊本)

