「本当に驚いた」とスーパーマーケット研究家が語るほどの衝撃ニュースが北陸を駆け巡った。富山県射水市に本社を置くスーパー「アルビス」が、大阪に本社を構える食品スーパー大手「ライフ」の傘下に入る見通しとなった。県内で38店舗を展開し、地元の食卓を長年支えてきたアルビスに、いったい何が起きているのか。そして、私たち富山県民の日々の買い物はどう変わるのか。専門家の声をもとに、この動きの背景と影響を読み解く。
「食品スーパーだけならダントツ1位」 ライフとはどんな会社か
これまでに訪ねたスーパーは1000軒以上。全国各地のご当地スーパーに精通するスーパーマーケット研究家の菅原佳己さんは、今回の動きをこう受け止めた。
「本当に驚いたっていう感じ。お互い大きなところ同士でも、やはり弱いところを補完し合うという考え方で、より大きなスーパーに対抗していかないといけない時代なんだなと思った」

買収する側の「ライフ」は、首都圏と近畿圏で323店舗を展開する国内大手の食品スーパーだ。菅原さんによると、総合スーパー大手のイオン、イトーヨーカドーに次ぐ業界第3位の規模を誇るが、食品スーパーだけに絞ればダントツの1位という。
「都市型スーパーとして300店舗以上を展開。非常に大きな規模のスーパーマーケット。店舗数も多いし、ファンも非常に多い。私も好きなスーパー」と菅原さんは話す。

ライフの大きな強みのひとつが、豊富なプライベートブランドだ。低価格のものから素材や製法にこだわった高品質のものまで4つのプライベートブランドを展開し、オリジナル商品は1800種類以上にのぼる。なかでも近年注目を集めているのが、健康志向の自然派プライベートブランド「ビオラル」だ。
「健康志向の方に支持されている。トレンド感と高い商品開発力で、若い層も取り込んでいるという感じ」と菅原さんは説明する。
「地元の舌」をよく知るアルビスの実力

一方のアルビスは、石川・福井を含む北陸地方だけでなく、近年は岐阜や愛知といった中京圏にも積極的に進出し、合計68店舗を展開している。県内の店舗数は38店舗で、富山市に本社を置く大阪屋ショップの43店舗に次ぐ県内2位の規模だ。

北陸にとどまらず中京圏にまで勢力を広げるアルビスが、あえて大手の傘下入りを選んだことに、菅原さんは驚きを感じたという。それでも菅原さんはアルビスの持つ力を高く評価する。
「アルビスは『地元の舌』をよく知っている」
長年にわたり富山をはじめとする北陸の食文化に根ざし、地域の消費者ニーズをきめ細かく把握してきたアルビスの強みは、簡単に代替できるものではない。
なぜ今、傘下入りなのか――業界を揺るがす経営環境
アルビスが買収を受け入れた背景には、スーパー業界が直面する厳しい経営環境がある。アルビスの池田和男社長はその理由をこう語る。
「人口の減少、高齢化もある。ドラッグストアなど違う業種との競争も激化している」
人口減少による市場縮小は、地方のスーパーにとって深刻な課題だ。さらに、食料品を扱うドラッグストアの台頭により、かつてスーパーが独占していた顧客を奪われる状況も続いている。こうした課題への対応として、アルビスは「業務の効率化や品揃えの充実などを通し、さらなる成長につなげる」としており、ライフの傘下に入ることで輸送コストの削減をはじめとした経営効率化を図る狙いがある。
菅原さんによれば、地方スーパーと大手スーパーの再編はアルビスだけの話ではなく、北海道や四国などでも同様の動きがあり、今後もこの流れは加速するとみられている。「再編が進む中で、店のカラーをどう打ち出すかがカギになる」と菅原さんは指摘する。
富山県民にとってのメリットとは

では、今回の動きは富山県民の買い物にどんな変化をもたらすのか。
菅原さんが最大のメリットとして挙げるのは、ライフの豊富なプライベートブランド商品が、地元アルビスの店頭で購入できるようになる可能性だ。健康志向の「ビオラル」をはじめとする1800種類超のオリジナル商品が身近に手に入るとなれば、これまで首都圏や近畿圏の消費者が享受してきた商品を、富山の消費者も得られるようになる。
逆に、首都圏や関西圏の消費者にとっては、富山をはじめとする北陸の海の幸などが身近に食べられるようになるという恩恵も生まれる。双方の消費者にとって「いいとこ取り」となる可能性を秘めた今回の再編だ。
なお、「アルビス」の店名や従業員の雇用は維持される見通しで、日常の買い物の場として大きく変わる点はないとみられる。
「地元愛」は守られるか

菅原さんが強調するのは、傘下入り後も富山の食文化が守られるかどうかという点だ。
「今まで通り地元愛がしっかりと残ったうえで、東京や大阪でもファンが増えるような、いいとこ取りの舵取りをしてもらえたら嬉しい」
大手の資本力と効率化の恩恵を受けながら、「地元の舌」をよく知るアルビスらしさをどう維持するか。それが今後の大きな課題となる。
業界再編の波は、富山の食卓にも静かに押し寄せている。アルビスとライフの新たな歩みが、北陸の食文化をどう変え、どう守っていくのか。地域の消費者として、その行方を見守っていきたい。
(富山テレビ放送)

