涼しくなり始めたからといって、油断は禁物だ。蚊は真夏よりも、気温が落ち着いてくるこれからの時期に最も活発に活動する―そう聞いて、意外に感じる人も多いのではないだろうか。
「黒い服を着ていると刺されやすい」「日焼けすると蚊に狙われる」など、知っているようで知らない蚊の生態を、専門家への取材をもとに深掘りする。

9月が「蚊のピーク」になる理由
富山県衛生研究所によると、近年は厳しい暑さの影響で、真夏は蚊の発生が少なくなる傾向がみられるという。そして気温が下がり始める9月中旬にかけて、蚊の数は多くなるとされている。
猛暑が続いた夏を乗り越えた後、涼しさを感じて外出する機会が増えるタイミングと、蚊の活動ピークが重なる。秋の行楽シーズン本番を前に、しっかりと対策を頭に入れておく必要がある。
「蚊のマイスター」が語る生態

虫刺され薬「ムヒ」で知られる池田模範堂では、商品開発につなげるため、蚊を飼育しながらその生態を研究している。社内で「蚊のマイスター」と呼ばれる伊藤潤さんは、約300匹の蚊を飼育する部屋を管理しながら、日々研究を続けている人物だ。


蚊はどのようにして人間を見つけるのか。伊藤さんによると、そのプロセスは段階的に進む。


まず、10メートル以上離れた場所では、息に含まれる二酸化炭素を感知して近づいてくる。次に5メートルほどの距離まで接近すると、視覚を使って人の姿をとらえる。そして至近距離に達すると、今度は体温を感知し、刺す場所へと近づいてくる。

二酸化炭素、視覚、体温という三段階のセンサーを駆使して、蚊は着実にターゲットへと迫るのだ。


また、蚊は一度に自分の体重の2〜3倍もの血を吸うという。ただし、十分に血を吸えなかった場合などは、すぐに別の場所を刺そうとする。一匹の蚊に複数箇所を刺されてしまうのは、このためだ。
刺されやすいのはどんな人?
子どもが狙われやすいのはなぜか
「子どものほうが活発に動いたり、体温が高かったり、汗をかきやすいということが、大人よりも刺されやすいんじゃないのかなと思う」と伊藤さんは話す。

実際に、蚊の入った容器の一方に冷たい氷、もう一方に暖かいカイロを近づける実験を行ったところ、蚊は明らかに暖かいほうに集まった。体温が高い人ほど蚊に狙われやすいというのは、こうした習性によるものだ。
蚊を引き寄せる服の「色」
蚊は人間と同じような色の見え方はしていない。色の濃淡や周囲とのコントラストを目印にして接近する習性があるという。

8色の手袋を用意し、ヒトスジシマカが入ったケージに約3分間手を入れて蚊が飛んできた回数を調べた実験では、最も多く蚊が寄ってきたのは「黒」だった。次いで「赤や紫」といった濃い色が続いた。
「一番、蚊の目に入りやすい黒が刺されやすい色といえる」と伊藤さんは説明する。

日焼けも要注意

さらに意外な事実もある。日焼けによってメラニンが増えると、蚊に刺されやすくなるという報告があるというのだ。伊藤さんは「肌の露出を減らすこと、服の色に注意してほしい」と呼びかける。
蚊のターゲットになりやすい人の特徴をまとめると、以下のようになる。
・体温が高い人・汗をかきやすい人
・濃い色の服を着る人
・日焼けをしている人
「厚手の服なら安心」は間違い
長袖・長ズボンで肌を覆えば刺されないと思いがちだが、それも過信は禁物だ。蚊の針の長さは約1.5ミリ、太さは約0.08ミリ。一見分厚そうなジーンズでも、蚊に刺されることがあるという。
肌の露出を減らすことはもちろん大切だが、それと同時に服の「色」にも気を配ることが重要なポイントだ。
対策のまとめ

涼しくなるこれからの季節、外出の機会が増える前に蚊への備えを整えておきたい。体温や汗をコントロールすることは難しいが、服の色を明るいものにする、肌の露出を減らす、といった工夫は今日からでも実践できる。
真夏の暑さが落ち着いた9月中旬にかけて、蚊の活動はむしろ活発になる。「涼しくなったから大丈夫」という油断が、思わぬ結果につながらないよう注意してほしい。
(富山テレビ放送)

