茶色く濁った水が福井県内を襲った記録的大雨。最も被害が大きかったのは、レベル5の大雨特別警報が出た場所ではなく、レベル4の坂井市丸岡町周辺だった。なぜこれほどの被害が拡大したのか。防災の専門家は「短時間の集中豪雨に加え、城下町ならではの地理的条件が重なった」と指摘する。
「ここまでは初めて」住民語る前例なき水位
8月29日午後7時頃から降り始めた雨で、坂井市丸岡町にある丸岡城に近い田島川では、危険水域とされる1.6メートルへと一気に近づいた。同日午後11時頃には、すでに道路が冠水し、車のタイヤは半分ほどが浸かっていた。
実は、この地域では過去にも浸水被害が起きてきた。ただ住民は「道路は福井豪雨のときは冠水したけど、歩道まで来るのは初めてですね」と語る。過去の経験をはるかに超えた浸水の規模だったことが分かる。
今回の浸水被害の原因について、防災分野の研究を行う福井工業大学の西川隼人教授に分析してもらった。
西川教授はまず、被害拡大の大前提として「非常に短時間にたくさんの雨が降ったことが今回の被害の大きな要因」と述べる。
そのうえで、その想像を超える雨量に2つの地理的要因が重なったと分析する。
1つ目は、地域に多く存在する用水路だ。通常であれば、増水した用水路の水は支流の田島川へ、さらに大きな本流である竹田川へと順に流れていく。
しかし今回は、その流れが機能しなかった。
西川教授は「全体的に川が満水状態で、一番末端である用水路から水が行くところがなく、あふれてきてしまった」と説明する。
本流から支流、支流から用水路へと水が行き場を失い、最終的に街へと溢れ出たということになる。
城下町の特有の“直角”の川が起因
2つ目の要因は、丸岡城という歴史的な城下町ならではの川の形状にある。丸岡城を囲む田島川は、かつての堀を囲むように直角に流れている。この直角に曲がる箇所で、増水した水が川岸を越えてあふれ出たという。
歴史的な街並みを形成してきた城下町の地形が、城の防御のために設計された水路の構造が、今回の被害拡大につながったということになる。
では今後、こうした被害を防ぐためにはどうすればいいのか。
西川教授は「丸岡城付近の上流側については、公園や学校のグラウンドで水をためるという対策を増やしていくことが現実的な対策」と提案する。
川の容量そのものを増やすことや、城下町の地形を大幅に変えることは現実的に難しい。それだけに、雨水を一時的に受け止めることができる空間を上流側に確保することが、被害軽減への現実的なアプローチとなるという。
短時間の集中豪雨、用水路の多さ、そして城下町由来の直角の川、
この3つの条件が重なったことで、レベル4の警報下でも大きな被害につながったと西川教授。警報のレベルだけでは測れない、地域ごとのリスクが存在することを知り、改めて防災への意識を高める必要がある。

