人口減少が続く地方都市で、地方銀行=「地銀」の役割が改めて問われている。

人口が減れば、企業や商店も減り、融資や預金、決済など地銀の顧客基盤にも縮小圧力がかかる。地域経済の衰退は、地銀にとって決して他人事ではない。

これまで地銀は、地域企業への資金供給を通じて経済を支えてきた。
だが、人口減少が長期化する中、それだけでは十分とは言えまい。

地域にどの産業を残すのか。どんな事業なら持続できるのか。
企業や人材、資金を結びつける役割が、これまで以上に重要になる。

米子がいな祭花火大会(8月9日)
米子がいな祭花火大会(8月9日)
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「資金を貸す金融機関」から、「地域経済を組み立て、支える金融機関」へ

全国で芽生えている地銀の新しい地域関与の一例として、島根の山陰合同銀行が「米子がいな祭」の花火を巡って進めた取り組みは、その一端を示している。

資金不足などから一時は花火大会の休止方針が示される中、同行は寄贈型私募債を活用した取引先に共同寄付を呼びかけ、20社が賛同した。
私募債発行額の一定割合を原資に、企業と銀行の連名で寄付する仕組みである

注目したいのは寄付額ではない。

銀行が取引先企業とのネットワークを、地域の課題解決に生かした点である。

銀行が間に入り、一企業の善意だけに頼らず、地域に必要な資金を集める。
従来の融資とは異なる役割だ。

既に新潟では第四北越銀行が「長岡花火」を対象に、同じようなスキームを実施するなど、融資先を束ね、地域課題に民間資金を呼び込むことは、全国の地銀の新たな役割になりつつある。

山陰合同銀行本店(松江市)
山陰合同銀行本店(松江市)

山陰では、経営者の高齢化が進み、後継者不在率も全国平均を上回っている。
事業承継が進まなければ、地域に必要な企業が廃業するリスクはなお大きい。
そうなれば地域の雇用や取引網も傷む。

後継者探しやM&Aだけでなく、似た課題を持つ企業の統合や共同化、設備や管理部門の共有、外部人材の招聘、販路の共同開拓などにも踏み込む必要がある。

地銀はその間に立ち、資金だけでなく、人や企業を結ぶことができる。

個別に支援するのではなく、地域全体を見渡しながら事業を組み合わせる必要にも対応可能だ。
多くの企業と取引し、地域経済を横断的に見ることができる地銀の強みを生かしたい。

松江市街地(資料)
松江市街地(資料)

注意すべきは地域の主(あるじ)ではない

ただし注意も必要だ。

地銀が地域経済を支えることと、地域の将来を地銀が決めることは別である。

融資に加え、地域活性化事業まで関与すれば、企業に対する影響力は大きくなる。

取引銀行から協力を求められれば、断りにくいと感じる企業もあろう。

銀行が有望だと判断した企業や事業に資金や人材が集中し、地域の経済構造が一銀行の判断に左右されるようでは本末転倒だ。

地銀は地域の有力な「担い手」ではあっても、地域の「主」ではない。

行政には政策をつくる役割があり、企業には事業を担う責任がある。住民には地域の将来を選ぶ立場がある。
金融機関は、その間に立って資金や人材をつなぐ存在であるべきだ。

山陰合同銀行本店(松江市)
山陰合同銀行本店(松江市)

地銀は地域に何を残したのか?

これからの地銀には、地域の課題に目を配り、企業をつなぎ、事業が続く形を考え、民間資金を呼び込む役割が求められる。

同時に、自らの影響力が大きくなり過ぎないよう節度を保たなければならない。
地域の将来を決めるのではなく、地域が自ら将来を選べる環境を整える。
その姿勢こそ、顧客の信頼につながるのではないか?

山陰の人口減少を短期間で止めることは難しい。

だからこそ人口が減っても企業が残り、働く場所があり、地域の中で資金が回る経済をつくらなければならない。

問われるのは、融資額の多さだけではない。地域に何を残したのかもしれない。

(TSKさんいん中央テレビ・小泉陽一)

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小泉陽一
小泉陽一

TSKさんいん中央テレビ・常勤顧問。
1991年フジテレビジョン入社。アナウンス室、ニュースキャスター、社会部、経済部、報道番組ディレクター、NY支局、パリ支局長、秘書室、WE編集長・フジテレビジョン上席解説委員・危機管理を経て現職