子どもの泳ぐ力を育む学校の水泳授業だが、プール施設の老朽化などが原因で、窮地に立たされている学校が増えている。教室で座学の水泳授業を余儀なくされている実態を取材した。
プールがあるのに学校で水泳授業ができない現実
夏休みシーズンも終盤戦。海や川でのレジャーの季節。その一方で、水難事故も相次いでいる。
17日、新潟市北区の海に友人と遊びに来た小学6年の男子児童が溺れ、死亡する事故があった。
溺れた男子児童は救命胴衣を着用していなかったという。

川や海など万が一の事故に備え、子どもが身を守る力を養う場が学校のプール授業だ。
しかし今、プールの授業機会が減少するなど、子どもたちが水泳を学ぶ環境に変化が訪れているのだ。
取材班が向かったのは、福井県鯖江市にある小学校。まもなくプールの授業が始まるということだが…。
水筒を持って、まるで遠足にでも行くかのような児童たち。
バスに乗り込み、走ること約10分。子どもたちが到着したのは、一般の人も利用する民間のスイミングスクールだ。
実は、鯖江市にある小学校の半数が、学校にプールがあるにもかかわらず、3年前からスイミングスクールで授業を行っている。
児童:
楽しい〜!
(Q.学校のプールは入らない?)壊れている。

学校のプールを使わない理由の一つが老朽化だ。
先生の立ち会いのもと、プールを見せてもらうと…。
取材班:
なんか錆びちゃってるんですかね。

鯖江市立豊小学校 島田教頭:
私が来て2年たつけど開けてないですね。
しばらく開けていないため、錆びつく鍵を開けるのに一苦労。
ようやく鍵が開き、中に入ると、水が緑色に濁った状態で、長い期間放置されているのが分かる。
鯖江市立豊小学校 島田教頭:
なんとか使ったとしても、今のこの天候は子どもたちには厳しい状況ですし、プールサイドが傷んでいるところを考えると、子どもたちがケガする恐れがあるので(使えない)。

水中の汚れを分離するろ過装置は、製造から40年たち劣化。
このプールを使えるようにするためには、修繕に約1億5000万円以上かかるという。

スポーツ庁の調査によると、学校内のプールで授業を実施している割合は小学校で74.9%、中学校で62.3%にとどまっていて、学校外での実施が広がりつつある。
また、民間施設でのプール授業にはメリットもある。
専門のインストラクターが教えるため、教員の負担軽減にもつながるという。

福井・鯖江市教育委員会 堀泰隆課長:
教員の方からは、負担が軽減されているっていうところと、子どもたちの意見としては、泳げるようになったとか、そういった意見も聞きますし。
児童:
泳げるようになりたい。クロールとかできるように。
そもそも学校で水泳授業が広まったとされるのは、今から約70年前に起きた船の沈没事故がきっかけだった。

乗っていた修学旅行中の小中学生など、合わせて168人が犠牲になったことから、子どもたちを水難事故から守るため、学校にプールが設備されたという。
実技を廃止し「座学」に切り替える中学校も
しかし、設備されたプールも時代とともに老朽化した中、実技そのものを見直した自治体もある。
今年、前の年を上回るペースで水難事故が発生している静岡県。
沼津市では市内すべての中学校でプール施設が使われていないという。
こちらの中学校でも、プールの塗装は剥がれ、草木が生い茂っていた。
どのような授業が行われているのだろうか。夏休み直前、教室を覗いてみると…。

保健体育の先生:
夏休みの水難事故を防ぐために、ということでちょっと授業していきたいと思うんですけど。
教室で生徒たちが投げ合っているのはペットボトル。
プールの実技の代わりに、座学が行われている。
保健体育の先生:
溺れた人に浮く物投げて助けるのを学ぶ、水泳授業の一環です。

沼津市では、民間プールの確保も難しいことなどから、市内にある17校の中学校全てで、全学年での水泳の実技が廃止され、座学に切り替わったのだ。
保健体育の先生:
実はさ、ビニール袋だって一つ取ればね、こうして膨らませて、浮くことができるかもしれない。
事故の事例などを交え、その場面に遭遇した際の対応を学んでいく。

生徒:
実際に(事故が)起きたときに助かる可能性を高められる授業だったと思います。
生徒:
でもやっぱり泳げないと何かが起こったときに危ないからちょっと半々です。うれしい気持ちと。
座学で命を守る知識を学ぶが、実際に泳ぐ機会はない。
吉永貴洋先生:
水泳の授業で大切にしたかったことを座学で教えるということは、ものすごく難しいことがあるなと多々感じておりまして。学校だけでない外部を上手に利用した水泳の授業というのも、今後活用が必要になってくるかなとは感じております。
子どもたちの泳ぐ力は低下傾向…専門家は
こうした環境の変化もあってか、子どもたちの泳ぐ力は低下傾向にある。

埼玉県が行った調査では、小学6年生がクロールで25メートル以上泳げる割合は、2011年は男女とも8割を超えていたが、最新のデータでは5割前後と大きく減少している。
国が定める学習指導要領では、水泳の実技は小学1年生から中学2年までは必修。やむを得ない場合は座学も可とされているが、専門家は…。

日本大学文理学部 野口智博教授:
マイナスではないかと考えています。小学校から中学校は体形が変わる世代になりますから、成長に応じて学習していく必要がある。

日本大学文理学部 野口智博教授:
水難事故があったときに自分の身を守る面と防災の側面、そういったところから様々な知識を学んでいくための機会であるというふうに捉えることができる。
山﨑夕貴キャスター:
老朽化などでプールの授業、したくてもできないところがあるって驚きましたね。
三宅正治キャスター:
スイミングスクールに通える家庭はいいけれども、そうでない家庭はどうやって子どもたちに泳ぎを教えたらいいのって思いますよね。
榎並大二郎キャスター:
座学も大事だと思うので、そこで得た知識をどうやって実践する場を設けるか。まさに力が抜けると浮くんだよっていう感覚をどうにか養う場っていうのを、民間施設でも借り上げてでもやってほしいんですね。
山﨑キャスター:
国会でも議論進んでいまして、超党派の議員連盟が立ち上がり、水泳教育の人材確保、また水難訓練の必須化に向けた検討を推進していくということです。
(「イット!」8月20日放送より)

