8月11日は山の日、今週は富山の山に生きる人たちの物語をシリーズでお伝えしています。
今回は朝日町の小屋を守る名物女将です。
北アルプスの最北部に位置する朝日岳。
雪解け水に育まれた高山植物が夏になるとお花畑になり、足元を彩ります。
その鞍部に建つ小屋に、「厳しい」との噂が絶えない「名物女将」がいます。
朝日小屋。
到着時間は「午後3時まで」と呼びかけられています。
しかし、この日は、3時を過ぎても姿を見せない登山客がいました。
「名物女将」の清水ゆかりさん、68歳。
*浅黄小屋管理人 清水ゆかりさん
「普通の旅館とホテルのように何時でもついていい場所ではないので、今日遅かったり、体調が悪かったりすると、それが明日の行動にも影響するので常に、先行者から目撃情報を聞いたり、ピリピリしながら、お客さんの様子を気にかけている」
*浅黄小屋管理人 清水ゆかりさん
「このグループは何時に着くかわからない」
朝日小屋までの道のりは、どのルートを選んでも長く険しい行程。
最短の富山県側・北又ルートでも7時間かかります。
標高差約1700メートルの急登が続き、深い森を抜け、ときには鎖場も…
時間の流れは私たちの暮らしより早く進みます。
*浅黄小屋管理人 清水ゆかりさん
「夕食の準備ができましたので食堂へお越しください」
夕食にはホタルイカや昆布締めなど山の上とは思えないほど、彩り豊かな料理が並びます。
*宿泊客
「家庭的な小屋だと思う。すごく親切だと思いますよ、他の小屋だとあまりいってくれないようなことをちゃんといってくれたり」
*宿泊客
「女将さんが本当に登山客に優しい。食前酒で乾杯とか、スタッフを労う言葉とか、お食事の紹介だとか、全てが感激で胸いっぱい」
朝日小屋は、地元の山岳自然保護団体が所有する山小屋です。
初代管理人は、ゆかりさんの亡き父・下澤三郎さん。
ゆかりさんはその看板娘として育ち、山好きの父に導かれ、管理人を引き継ぎました。
*浅黄小屋管理人 清水ゆかりさん
「どなたか違う人に譲るというかお願いするという選択肢がなかった。自分がやろうと!まさにこんな長くやると思わなかった。もし父親が生きていたら、それなりに頑張っていると言ってくれると思う。病室で父が最期に言葉にならない言葉で、『う~うう』って言ったんですけど、私は『朝日小屋を頼む』って言われてると思っている。頑張ってやり抜きたい」
管理人になって26年。
苦しい時期がありました。
新型コロナです。
*浅黄小屋管理人 清水ゆかりさん
「営業しなかったが小屋には常駐した。1シーズンなにも手をかけないと草ボーボーになって次の年に登山道を復活させるのは至難の業。誰もお客さんがいないのに、小屋にいたという不思議な時間だった」
それでも小屋をやめるという選択肢はありませんでした。
*浅黄小屋管理人 清水ゆかりさん
「使命というか責任。ここの周辺を歩きたいと言う人がいる限り営業をやめるわけにはいかない」
*浅黄小屋管理人 清水ゆかりさん
「ここに泊まってよかった、楽しかったというのが一番大事。ウエルカムドリンクは疲れて着いた登山客がパッ表情が変わる。その瞬間が嬉しい。お客さんに何をしてあげられるのか毎日考えている」
Q厳しいという評判だが?
「3時までに着かないと怒られるって噂になっている。怒りはしませんけど遅く到着したら、次の日またつらい思いをしなきゃならない」
スタッフの多くは、初めて山小屋の仕事を経験する人たちです。
ゆかりさんは、打ち合わせや休憩の時間を大切にして、一人ひとりと向き合います。
*小屋スタッフ
「女将さんはなんでも全力、叱る時も全力だし、褒めてくれる時も全力。頑張った分だけ、労ってくれる」
*小屋スタッフ
「時には厳しくて、でも優しくて、お母さんみたいな人」
登山客にもスタッフにも愛情を込めて全力で。
それが「名物女将」清水ゆかりさんの流儀です。
