「なんでこんなに疲れているのかわからない」、「何をしても満たされない」というのは、心が「休めていない」サインかもしれません。
休むことの大切さを裏づける科学的根拠はたくさんあります。
科学雑誌Natureに掲載された研究では、連続17時間以上の覚醒状態にあると、血中アルコール濃度が約0.05%と同等の反応速度や判断力になると報告しています。
また、上司の睡眠時間が短いと、自我消耗が進み、日常的に虐待的な言動をとりやすくなるという研究もあります。
休むことで逆に効率が上がる
上司のそんな行動が、部下にストレスを与え、ワーク・エンゲージメント(仕事への熱意・没頭・活力)を低下させ、さらに、このパターンが日単位で繰り返されると、職場全体のエンゲージメントが下がる可能性が指摘されています。
睡眠だけではなく、仕事の合間の休息に関する研究もあります。ニュージャージー州のワコビアにある銀行に勤める106人を対象にした調査があります。
意図的に仕事の合間に休息時間を設け、仕事に集中する時間をつくるという進め方を指導された従業員は、そうした指導を受けなかった従業員と比較して、融資および預金業務の対前年比からの伸び率が、平均的に13~20%高くなったことが報告されています。
スラックタイム(余裕時間)が増えると、議論や振り返りの時間も増え、暗黙知と形式知の変換(個人の経験や直感として得られる暗黙知を、他者と共有・伝達可能な形式知へ変換することで組織学習に役立つとされます)が活性化されるプロセスを通じて、新製品開発の創造にプラスの影響があるとされます。
スラックタイムを削減すると、開発の終盤で創造にブレーキがかかり、チームの学びと協働が阻害されます。
おそらく誰しも、休むことの大切さを頭では理解しています。しかし、休むことについての書籍が世に多く出て、手に取られているのは、実際に休む、手をとめる、何もしないことに時間をとるというのはそれだけ勇気のいることだからでしょう。
休むことには、勇気や決断力、行動力が必要なのです。
関屋裕希(せきや・ゆき)
東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員。博士(心理学)・臨床心理士・公認心理師。

