福岡県議会の17日の臨時議会では、動議が可決され、蔵内議長に対する辞職勧告決議案の採決が取りやめとなりました。

この“奇策”に至るまでに一体何があったのか、舞台裏を取材しました。

17日の福岡県議会。

◆吉松源昭県議
「蔵内議長の辞職を勧告します」

◆林泰輔県議
「動議!採決を中止するよう求めます」

蔵内議長に対する議長職の辞職勧告決議案を採決するはずが、動議により一転して中止に。

想定外の展開となった臨時議会。その開会前には密室での協議が重ねられていました。

自民党県議団は3度にわたって議員総会を開くなど議論を続けていましたが、そこでは若手議員が渡辺勝将会長にこんな直談判する場面も。

◆若手議員
「進退を含めた話を議長に直接聞きたい」

蔵内議長不在のまま進められた会議の中で、若手が辞職勧告決議案への賛成討論を行う姿勢を示すなど、強い態度で渡辺会長に詰め寄ります。

これを受けて、渡辺会長が蔵内議長の元へ。

◆自民党県議団 渡辺勝将 会長
「『下の後輩たちも議長と意見を交わしたいという声がありますよ』と。『議長が発信してくれる機会をもらえませんか』ということをお願いしてきた」

この結果、蔵内議長が午後3時半からの3回目の議員総会に参加することになり、そこでこう話したといいます。

◆蔵内議長
「第三者委員会の設置や政治倫理条例案などの制定にめどが立ったら辞めるつもりだ」

これまで「辞任の考えはない」と話していた蔵内議長が、めどがついた時点とはいえ、議長職を引くことを表明した瞬間でした。

◆自民党県議団(2期目)井上正文 県議
「場所は議員総会ですね。その中でご自身が、おそらく私たち2期、また若い期の意見だったり、またいろんな事情を酌んでいただいた上で、ご自身のお考えを初めて表明されたと思うんですね」

◆自民党県議団(2期目)大田満 県議
「我々も本当に、こう言っちゃあれなんですが、可決の方にも回るんじゃないかっていうような意見もあったんです。でも、それを我々共有した中でですね、やっぱり一番響いたのは直接議長から、もう進退の話まで。これ一番重たいと思います」

一方、自民以外の会派へも、採決を避けるための根回しが進んでいました。

その結果、臨時議会で蔵内議長の元秘書である林泰輔県議が手を上げます。

◆林泰輔県議
「動議!」

◆板橋聡 副議長
「採決中止の動議について採決を求めます」

辞職勧告決議案を採決させないための緊急動議という“奇策”。

党議拘束をかけた自民党は1人を除く全員が、そして第2会派の民主県政県議団も半数が起立して、賛成多数で決議案の採決中止を可決しました。

◆自民党県議団 渡辺勝将 会長
「会派をまとめるためにはこういう形を取らざるを得なかったというのが実情です。きょう、どこかの新聞には『踏み絵』という文字もありましたが、私たちはそういう議論をしたいわけじゃないので」

蔵内議長に関するいわゆる“踏み絵”を避けるため、これまで批判されてきた「密室での政治」が、また繰り返されたのです。

自民党で唯一反対した江藤県議は、県民の意識とのズレを指摘します。

◆自民党県議団 江藤秀之 県議
「今、議会がやっていることと県民が思っていることの違いというのはものすごく大きいと思います。簡単に言うと、信頼が全く議会に対してない。これを少しでもやっぱり回復しなくちゃいけない」

肩すかしを食った形のほかの会派からは、あきれや怒りの声が聞かれました。

◆公明党 新開昌彦団長
「1人の動議が出て、そういうことがやっていくという。2人賛成すればいいのか、そういった意味では、よくよくちょっとルールというのを考えなきゃいかんのかもしれませんね」


◆新政会 椛島徳博 会長
「小手先ではなくて、もう正々とこの不信任決議案に賛成なのか反対なのか、意思表示をはっきりすべきだったという風に。まぁ結果的にできなくなった。非常に残念な思いはあります」

街頭でも批判的な意見が聞かれました。

◆50代男性
「『うーん』って首をかしげた、あれを見て。『独裁的なのが、まだまだあるのではないか』と思った」

◆30代女性
「往生際が悪いな。『議長に対する忖度(そんたく)でしか動けない県議会議員が多いのかな』という印象。県民の声が届いていない状況で、うやむやにしてしまったのかなと思う」

「決議案への賛否」という1人1人の考えを示すことを避けた、福岡県議会の議員たち。

私たち有権者は、来年の県議選で自らの意思を示すことが重要となりそうです。

動議の賛否は…各会派の動きを詳しく

福岡県議会の議長と副議長を除く84人が、蔵内議長への辞職勧告決議案の採決を中止する動議に賛否を示しました。

会派ごとに見ていくと、自民党県議団は38人のうちほぼ全員の37人が「採決取りやめ」に賛成しました。 

ただ1人反対したのが金銭授受疑惑を証言した1人の江藤秀之県議で、党議拘束に反したことになるため、今後何らかの処分を受ける可能性もあります。

それでも江藤県議は、採決取りやめについて「議会と県民に大きなギャップがある、議会にはもう全く信頼がない」と自民党の内部から厳しく批判しています。

そして注目は第2会派の「民主県政県議団」です。

20人の議員のうち賛成10人、反対10人とちょうど半分に割れました。

議会改革や蔵内議長の進退について第一野党として厳しく追及するはずの立場ながら一枚岩に意見をまとめきれず、野党としての機能を十分に果たしていないことが露呈した形になりました。

そして他の会派の結果も含めて賛成49、反対35で中止動議が可決され、辞職勧告決議案は採決取り止めとなりました。

自民党の若手県議は…

取材に対し自民党の当選2回の若手県議は「一部の若手は厳しい立場に追い込まれることを覚悟の上で、蔵内議長の辞職勧告決議案に賛成するつもりだった。しかし、議長が採決直前の議員総会で辞職することを表明した。そもそも決議案が可決されても法的拘束力は無いし、我々としては中止動議を通すことで、議長の辞職という『実利』を取りに行った形だ」と釈明しました。

また、別の自民若手県議は「議長辞職を引き出したことは、むしろ県民の思いが叶う事になったのではないか」と主張しました。

テレビ西日本
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