福島県喜多方市の老舗酒蔵を襲った火事から2カ月。絶望から復活へ…いよいよ出荷を控えるのが、火事から生き延びた「奇跡」とも言える日本酒だ。仲間の絆が繋いだ酒は、再建に向けた希望の光となっている。

■各地から寄せられるエール
福島県内50以上の酒蔵が集まった6月のグルメイベント「ふくしまの酒・味噌醤油まつり」(2026年6月6日・7日)。
福島の酒を堪能し、笑顔が溢れる会場の中で、数多くの支援が寄せられているブースがあった。
神奈川県から訪れた人は「絶対頑張ってほしいと思って最初にブースに行った。義援金を入れ、応援しています」とエールを送る。

■「気の引き締め時…」社長の思い
2026年6月1日、喜多方市の笹正宗酒造を襲った火事。
1818年に創業した老舗酒蔵の倉庫や仕込み蔵がほぼ全焼し、焼け跡には酒造りを共にした道具が無残にも散乱していた。
蔵に保管していた約2万5000本分の酒も焼失した。
岩田悠二郎社長は「どこかで甘えとか、良い酒もできてきて『慢心』みたいな気持ちもあった。逆にいまが気の引き締め時なのだと、先祖に教えられたのかなと最近は思っています」と語る。

■蔵が火災「悪夢」
兄弟二人三脚で理想の酒を追いかけてきた笹正宗。社長が弟の岩田悠二郎さん、製造を任されているのが兄の高太郎さんだ。
火事が起きたのは、2人で東京出張から帰っている途中のこと。「全焼も覚悟しろ」現場にいた別の酒蔵から、電話でそう伝えられたという。
兄の岩田高太郎専務は「1週間くらいは本当に悪い夢なんじゃないかと思って。朝起きたら会社があるのではないかと正直思っていました。どういう感情だったか…ごちゃごちゃしていたなっていう感情ですね」と振り返る。

■仲間たちの思い
失ったものの大きさは計り知れなくても、笹正宗の周りには手を差し伸べてくれる仲間がいる。
火事の直後は連日連夜、会津の酒蔵や酒店が集まり、再建に向けた話し合いが行われた。
宮泉銘醸の宮森義弘社長は「まだまだ打ち合わせに長い時間がかかりますけれども、岩田君のために頑張っていきたいと思うので、みんなで頑張りましょう」と呼びかける。

「お客さんとしては何がどうなっているのか、聞いて良いのか悪いのかやきもきしているところではある」
「どうやって笹正宗酒造の酒造りを繋いでいくのかが大事になってくる。手を挙げてくれる酒蔵さんのところで酒造りをやって、岩田兄弟の酒を毎年造っていくのがベストかなと思う」
(話し合いより)

仲間を決して見捨てない。その絆が一つの希望を繋ごうとしていた。

■奇跡の酒
火の手を免れた貯蔵庫。その中から、奇跡的に生き残った酒が見つかった。
曙酒造の鈴木孝一社長は「大奇跡ですよ。奇跡っていう言葉じゃ片付けたくないくらいの何かすごいこと。辛い中にも一筋の光が出る」と喜ぶ。

火事から4日後の6月5日、酒を別の酒蔵へと移動する作業が行われた。そこに集まったのも会津の仲間たち。「酒を救いたい」蔵は違えど、日本酒に対する造り手の思いは同じだ。
酒は無事だったのか。製造を担当する兄の岩田高太郎専務が味を確かめる。
「いや良かった良かった。ほっとした」

繋がった“ささまさ”の味。
岩田悠二郎社長は「まぁちょっと、うるっときますね。周りの蔵がいないとできないことなので。これからの復活の一歩、復活の一滴ですね」と語った。

■“覚悟”の復活
救い出された約5000本分の『ささまさむね』は、8月2週目から福島県内に出荷される。
岩田高太郎専務は「往生際が悪いなっていう、まだまだ頑張れるぞと。土俵際で往生際が悪いのは私の方の性格なので、何とかしてやろうっていうのは常々思っている。そういうところが酒にも表れたのかなと、ほんの少し思っています」と話す。

また岩田悠二郎社長は「守らなくちゃいけない文化・伝統だと思う。私の代で終わるものではないと信じていますし、この地でこの水・この場所でしかできない酒造りを継承できればと思っています」と語った。

「必ず再建する」絶望から這い上がる覚悟が、笹正宗復活の灯だ。

福島テレビ
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