北陸新幹線の敦賀以西ルートを自民・維新両党の北陸新幹線整備委員会は「小浜−京都・桂川案」を最終案として採択した。石川県民にとって聞きなじみのない「京都・桂川」とは一体どんな場所なのだろうか? 石川テレビの秋末械人アナウンサーが現地リポートした。
再開発で発展する京都市・桂川エリア
秋末械人アナウンサー:
京都・桂川にやってきました。与党整備委員会が北陸新幹線のルートとして決定した桂川、いったいどんな駅でどんな街なのでしょうか?
北陸新幹線の敦賀以西ルートに関しては7月15日、自民・維新両党の与党整備委員会で、日本維新の会が再検討を提示した8ルートから絞った3ルートについて協議。その結果、両党ともに支持していた「小浜-京都・桂川案」を与党最終案として決定した。
北陸新幹線の延伸案で突然脚光を浴びることになったJR桂川駅は、京都駅の南西約5キロ、2駅、約6分の場所にある。かつてこの地にあった大手ビール工場の移転による広大な後地24.6ヘクタールの再開発に伴い、2008年に開業した。
JR京都線(東海道本線)の桂川駅を通る在来線は1本、ホームには1番線と2番線しかない。大きな駅ではなく原則として普通列車だけが停車する小さな駅だ。
桂川駅前で一際目を引くのが2014年10月にオープンした駅直結の商業施設・イオンモール京都桂川。それを機に周辺の開発は進み、大型マンションが相次いで建設されるなど、今では若い世代に人気のエリアになっているそうだ。

町の人は:
(桂川はどういう街ですか?)
今すごく引っ越して来られて新しい住民も増えて、いい町にはなってきている感じ。新しいマンションも続々と建っているし

高校生:
この京都桂川イオンができてから結構賑やかな街になった。このあたり10年ほど前は本当にビルとかあんまりなかった。
一緒に居た高校生も「ずっとこの辺はあんまり栄えてへんかった、畑とかも結構多かったし」と振り返る。
再開発で桂川エリアの人口も急増中
桂川駅がある久世(くぜ)中学校の学区では、駅開業当初の2008年は約2万人だった人口が、2026年4月時点では24000人余りに。18年間で20%も増加した。
専門家は北陸新幹線が桂川駅周辺のさらなる発展につながるチャンスだと話す。

富山大学都市デザイン学部・金山洋一特別研究教授(鉄道工学)は、「鉄道駅の有無は街にあたえるインパクトが大きい。桂川駅も地元住民が考えるきっかけになるし、開業に向けて都市政策を打つ一つの大きなきっかけになるので、チャンスとして受け止めると非常にいい」と波及効果を指摘する。
またJR西日本の倉坂昇治社長は与党のルート決定に関して「新たな玄関口として地元行政による駅前広場を始めとした駅周辺の街づくりが重要になると認識し、鉄道事業者の立場で協力して参りたい」とコメントした。
京都市民はどう思っているのか
一方、住民からはこんな声も…。
地元住民:
そんな得する人は沢山いないんじゃないかな。
地元住民:
地下から行くのか地上から行くのか。地下でもあんなの(ショピングモール)建っちゃってるし。どんな風に行くんだろう…
住民への理解を得ていくのはまだまだこれからのようだ。
ではどんな経緯で桂川案が採用されたのか。
与党整備委員会の8ルートから3つに絞られた際に残っていたのが「滋賀県の米原ルート」、「小浜−京都の南北案・京都駅を通るルート」、そして「小浜−京都の桂川案」だった。
米原ルートを押す維新と京都・南北案を押す自民の間で駆け引きが行われてきたが、最終的には両者ともに挙げていた桂川案に寄り付いた形だ。

京都市民の理解という点では京都の伝統産業を支える地下水への影響への懸念から反対運動も起きている。地下水に関しては、国交省と鉄道運行機構はそもそも「小浜―京都ルート」で整備する場合、地下水利用に影響はないとの分析結果を示しているが…。
延伸には千年の都・京都ならではの課題も
別の課題も見えてきた。京都市文化財保護課長の馬瀬さんは、京都ならではの問題点を指摘する。
京都市文化財保護課・馬瀬智光課長:
京都はずっと都で人が生活を繰り返して来たので、民家が建っている所にも商業ビルが建っている所にもずっと遺跡はある。平安京の条坊(じょうぼう/土地区画の構造など)はある程度は調査成果から解っていて、出土物にもある程度想定もつくが…
京都全体の他の発掘調査は、今なお地道に続いていると語った。

例えば天正10年6月(1582年)、あの織田信長が明智光秀に討たれた有名な本能寺の場所は、京都市埋蔵文化財研究所によると、地図の黄色い位置だと判明したのは僅か19年前の2007年の発掘調査によるものだ。まだまだ解っていない悠久の歴史が、京都の地下には眠っている。
馬瀬さんが見せてくれた京都の地図。青や紫に塗られているのは文化財保護法に基づき建物を建てる際などに地下調査が必要で、同市に届け出が必要なエリアだ。JR京都駅のすぐ北側、かつて平安京があった場所にはびっしりと色が塗られている。
桂川に近いエリアには長岡京が存在した一方で、桂川駅周辺は…。
馬瀬さん:
桂川駅の近辺でいうと、上久世(かみくぜ)遺跡、中久世(なかくぜ)遺跡、大藪(おおやぶ)遺跡。それからここに長岡京跡がある
桂川駅の近くは784年から10年間にわたり長岡京が置かれた場所だった。僅か10年の都といえども何が出土するか解らない。地下水問題とは異なり、京都ならではの課題が浮上する。
掘れば掘るほど遺跡が出てくる可能性がある──それが千年の都・京都なのだ。
京都の歴史を解き明かす文化財は地下数メートルの所に埋蔵されていると想定される。一方、新幹線建設では地下数十メートルの深さにトンネルを作るので一見影響はないように思える。
しかし掘削工事によって地下水量が変わると地表近くの地下水も減少し、埋蔵文化財が腐敗して歴史探求の手がかりが毀損される懸念もあるという。
将来を担う子どもたちの反応は?
最後に秋末械人アナは、京都の未来を担う子ども達にも話を聞いた。「なんか地盤が緩くなって、どんどん地面が下になんか落ちていくかもしれないから、ちょっと不安だなぁって」と話す一方で、「早く乗りたいなぁみたいな」との声も。
新幹線ができるの何年後ぐらいだろうねと訪ねると、「3年後ぐらい?」と答えた子。30年ぐらいかかるらしいよと教えて上げると「エ〜ッ、すご!」と、驚き、何歳になっているか尋ねると「40歳です…。乗ります。できたら自分の子どもと一緒に」と答えてくれた。
京都市の桂川地区には、遠い未来に夢を抱く子どもがいる一方で、不安を抱えている子どももいた。数十年を要する北陸新幹線の京都延伸。現代を生きる大人達が次世代を担う子ども達にどんな将来を残せるのだろうか。
(石川テレビ ・7月29日放送)

