北陸新幹線の大阪延伸をめぐる議論が、また振り出しに近い地点へと引き戻されたかもしれない。北陸新幹線の与党整備委員会で共同委員長を務める、日本維新の会の前原誠司氏が「ひょっとしたらどのルートでも難しいという可能性がある」と述べ、国と地方の負担割合の見直しを先決課題として上部組織に申し入れる方針を表明したのだ。目標として掲げてきた「今国会中のルート決定」に暗雲が立ち込めている。

「どのルートでも難しいかも…」――委員長の口から飛び出した驚きの言葉

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5月26日の朝、北陸新幹線の整備委員会が開かれた。この日の議題は、大阪への延伸ルートについて関西経済連合会から意見を聴取することだった。会合そのものは粛々と進んだが、問題は終了後の記者団との取材で起きた。

前原共同委員長は記者たちを前に、こう述べた。
「ひょっとしたらどのルートでも難しいという話になる可能性、私は実はあると思っていまして。そもそもの枠組みというもの自体を見直さないと、なかなかハードルとして越えられないんじゃないかなというふうには私は思ってます。」

ルートの優劣を比較・検討する立場にある整備委員会の共同委員長が、「どのルートでも難しい」と口にしたのは、関係者にとって予想外の発言だったと言える。これまでの議論は、候補となる複数のルートのなかからどれを選ぶかという「選択」の段階に進みつつあるとされていた。しかし前原氏の言葉は、その前提そのものに疑義を呈するものだった。

そもそもの「枠組み」とは何か――2対1という国と地方の負担割合

前原氏が「見直し」を求めた「枠組み」とは、整備新幹線の建設費における国と地方の負担割合のことだ。北陸新幹線を含む整備新幹線は、貸付料を除いた建設費を国と地方が「2対1」の割合で分担するルールが定められている。

この制度のもとでは、地方側がかなりの額を負担しなければならない。なかでも、すでに新幹線をはじめとした交通インフラが高度に整備されている京都にとっては、この巨額の財政負担が大きなネックとなる。新たな路線の恩恵が相対的に小さいにもかかわらず、建設費の3分の1を担うという構造は、地方自治体にとって容易には受け入れがたいものだろう。

前原氏は会見のなかでさらに踏み込み、次のように述べた。
「負担の見直しがないとルート決定までたどり着くことができないと思っていますので、ルートを決めてから親委員会に申し入れるのではなくて、親委員会にしっかりと国と地方の負担割合について一定の考え方をまとめていただかないと、我々としてはルートをこれにしましょうとはならないのではないか。」

北陸新幹線の与党整備委員会
北陸新幹線の与党整備委員会

つまり、「まず負担割合を議論・解決してもらわなければ、ルート選びの段階には進めない」というのが、前原氏の主張だ。これは、ルート決定を整備委員会の範疇で処理するのではなく、上部組織である与党プロジェクトチーム(PT)に先に問題を投げ返すという手順の転換を意味する。

議論の構図が逆転――ルート先行から負担割合先行へ

北陸新幹線の大阪延伸をめぐっては、2016年に、『小浜京都ルート』で決定したはずだった。しかし建設費の高騰に京都での反対運動、さらには工期の大幅な遅れが見込まれるとの試算が出たことでいまだ着工に至っていない。そして日本維新の会が与党となったことから、あらためて8つのルートを検討し、今国会中にルートを決定する方針だった。

次回の整備委員会では、いよいよ「8ルート」の費用対効果について国の算定結果が示される予定だ。しかし費用対効果の算定結果が出たとしても、そもそも地方がその財政負担を受け入れられなければ、ルートを絞り込んでも意味をなさない。前原氏はそこを突いた形だ。

「今国会中のルート決定」は達成できるのか

委員会側がこれまで目標として掲げてきたのが、「今国会中のルート決定」だ。しかし、負担割合の問題が与党PTに委ねられることになれば、そこでの議論・調整に相応の時間がかかることは避けられない。整備委員会単独では結論を出せない構造になってしまったとも言える。

北陸新幹線の大阪延伸は、単なる交通インフラの整備にとどまらない。関西経済圏の活性化、北陸と大阪・京都を結ぶ人流・物流の拡大、さらには観光振興や地域経済への波及効果が期待されているプロジェクトだ。

しかし、その期待の大きさとは裏腹に、財政負担の問題が議論の足を引っ張り続けている。確かに京都は、すでに東海道新幹線が通り、在来線を含めた交通網が充実しているため、北陸新幹線の延伸によって得られる新たな利便性の向上が他の地域に比べて相対的に小さい。それにもかかわらず、建設費の3分の1という重い負担を求められる事が、なかなか議論が前に進まない背景になっているのだろう。

「原点」へ引き戻された延伸ルート問題――その本質

北陸新幹線の大阪延伸は、関西と北陸をつなぐ大動脈として多くの人が待ち望むプロジェクトだ。だからこそ、「どのルートでも難しい」という言葉の重みは大きい。与党PTがこの難題にどう向き合い、どのような答えを示すのか。その動向が、今後の議論の行方を左右することになる。

(石川テレビ)

石川テレビ
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