16歳で急にリテラシー高まるのか
そもそも、16歳になって急にリテラシーが高まるわけでもない。16歳はすでに親の言うことを素直に聞く年齢でもない。
その時になって初めてSNSを利用し、親による啓発や家庭内ルールも形骸化してしまえば、結局深刻な失敗をする可能性もある。規約上利用可能な13歳から、各家庭に合ったやり方で段階的に利用を進めておけば、そのような事態は防げる。
加えて、青少年がSNSを利用することには多くの利点もある。情報収集や表現の機会、創作活動、時間や場所に縛られないコミュニケーションは、現代社会において重要な資源となっている。
学校や家庭では相談しづらい悩みを、SNSを通じて外部に打ち明けられる場合もある。全面的な禁止は、こうした機会まで一律に奪ってしまう可能性を含んでいる。
実際、海外の人権機関や専門家の間では、年齢による一律禁止が、子どもや若者の表現や社会参加の権利を過度に制限し得るとの懸念を示す声もある。
日本では家庭に委ねている
日本では、青少年インターネット環境整備法に基づき、フィルタリングの利用促進やペアレンタルコントロールの普及が進められてきた。これは年齢制限とは異なり、家庭と事業者の関与を前提とした制度である。
ただし、運用の多くが家庭に委ねられており、すべての家庭で十分に活用されているとは言い難いという問題を抱えているのも事実だ。保護者のITリテラシーや問題意識の差が、そのまま子どもの利用環境の差につながっている現実もある。
ここで重要なのは、制度が果たすべき役割を過大評価しないことである。制度は、リスクを下げるための枠組みを提供することはできるが、すべての問題を解決する万能薬ではない。
青少年のSNS利用をめぐる制度設計は、「どこまでを制度で担い、どこからを別の手段に委ねるのか」という線引きを常に伴う。
だからこそ、年齢制限を含む制度的対応の是非を議論することは重要だが、それだけで完結する話ではない。制度には限界があり、その限界を補う視点が不可欠である。
青少年の安全を守るためには、制度を起点としつつも、それを超えた多層的な取り組みが求められているのである。
山口真一
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター教授。著書に『炎上で世論はつくられる』『スマホを持たせる前に親子で読む本』『ソーシャルメディア解体全書』『正義を振りかざす「極端な人」の正体』などがある

