高市総理は、30日昼行われた自民党の臨時役員会で、食料品の消費税率を来年4月から2年間1%に引き下げる方針を示した。

我々消費者にとって減税は嬉しい。
しかしスーパーなどを含め店側は手放しで喜んでいるわけではなさそうだ。
なかでも深刻なのが飲食店。

「食料品の消費税1%が導入されたら、飲食店は何段階もの打撃を受けることになります。個人経営や小規模飲食店の倒産はさらに増加する可能性があります」

と警鐘を鳴らすのは飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さん。
様々な背景の中には“飲食店ならではの特殊な税事情”などもあるという。
詳しく聞いた。

■需要が増えると物価は上がる…

【飲食店専門経営コンサルタント 成田良爾氏】
食料品の減税の対象は「現行の軽減税率8%の範囲」。
つまり、スーパーやコンビニなどでの買い物、テイクアウト、デリバリーなどで、飲食店は対象外です。

導入された場合、まず想定されるのが“飲食店のお客様の減少”です。

長引く物価高で節約志向が定着するなか9%の差は大きいです。
外食するより、ちょっと高級な食材を買ったり、デパ地下などで総菜を買ったりして帰ろうという動きになるのは容易に想像がつきます。

飲食店も仕入れ(食材費)が安くなるのだから値下げすればいいとの声もありますが、そう簡単にはいきません。

なぜなら、外食が減る一方で食料品の需要が増え、品薄になることで(食材の)さらなる仕入れ価格の上昇が予想されるからです。

ここ数年の物価高ですでに高騰している中でのさらなる値上げ。
消費税が7%安くなっても、実際の仕入れ値が下がるかは不透明です。

そもそも多くの飲食店は自助努力で、できるだけメニューの値上げを抑えています。
「食料品が減税されたから」と単純に値下げできるわけではないのです。

そして、スーパーなども“今後の値上がり”を考えると、手放しで喜べないのが実情です。

■「手数料40%超」も!デリバリーは簡単ではない

では飲食店もテイクアウトやデリバリーをすればよいのではと思われるかもしれません。

しかし業態によって向き不向きがありますし、今はナフサ不足で容器が2倍ぐらいに値上がりしています。
高くても買えればよいですが、「生産が追い付かず順番待ち」と手に入らないケースも少なくありません。

更にデリバリーは、デリバリー会社に支払う“手数料”が大きな負担になっています。
意外に知られていないのですが、飲食店がデリバリー会社に支払う手数料は、デリバリー会社によって、それぞれ「売り上げの35~43%」という契約になっています。

また、デリバリー会社主導で割引やクーポンの配布などのプロモーションが頻繁に行われていますが、多くの場合、その際の販促費用は飲食店負担になっています。

他にもいくつか要因はありますが、これらの理由もあり、「個人経営の飲食店や小規模飲食店もデリバリーやテイクアウトに力を入れれば良い」とは安易には言えないのです。

■導入から一年後に悲劇が…

私が大きく懸念しているひとつが「導入から一年後の“消費税の納税”」です。

飲食店が納める“消費税額”が一気に増える可能性があるのです。

飲食店は軽減税率が導入されているので、今は8%の税率で購入した食材を税率10%で売り上げ、その差の2%分を納税しています。

それが「消費税1%」になると9%分を納めることになります。

仮に毎月の売り上げが200万、年間で2400万円だとしましょう。
規模としては、夫婦2人でやっている個人経営店など小規模店のイメージです。

ざっくりの計算ですが、現行の税率8%だと納める消費税は40~50万円程。
それが「1%」になると、仕入れや経費の構成によって変わりますが、納税額はだいたい2倍ぐらいになる可能性があるのです。

もちろん、これは本来納めるべき税金です。

食材費の税率が1%になったら、その都度の支出は7%分少なくなりますから、毎月きちんと蓄えておけばよいわけですが、実際に小規模店でそこまできっちり管理できるところがどれだけあるのか。

物価高が進んで、減税分より支出が増えるかもしれませんから、「7%安くなった」効果を感じられない可能性もあります。

結果として、消費税の納税時期に資金不足になる飲食店が増えると私は考えています。

お客様が減る中、なんとか工夫を凝らして頑張っている小規模飲食店の中には、ここで力尽きてしまう店も出てくると思います。

■“売り上げ”ではなく“キャッシュフロー”を意識して!

そして最も心配なのが、消費税が8%に戻った時です。

2年後、「じゃあ税率戻しますよ」となっても、飲食店にお客様はなかなか戻ってこないと思います。

人は慣れます。食材を買って自宅で作ったり、持ち帰りを食べたりすることが当たり前になると、わざわざ外食してお金を使わなくてもいいんじゃないかとなってきます。

これはコロナ禍で多くの飲食店が経験したことです。

2020年、コロナ禍が始まり飲食店の倒産件数は過去最多になりました。
国の支援もあり、その後2年間はいったん動きが止まりましたが、2023年以降、再び飲食店の倒産件数は増加し続け、2026年の上半期も過去最多を記録しています。

物価高など様々な要因がありますが、「コロナが終息した後も客足が戻らなかったこと」が大きな要因とされています。また同じことを繰り返すのでしょうか。

食料品の需要増加による高騰だけでなく、人件費や光熱費も上がり続けるでしょう。

資金に余裕がなかったり、海外進出で活路を見いだしたりできない、個人経営の飲食店や小規模飲食店を守るためにも、慎重に議論していただきたいと思います。

そして、不安を抱える飲食店の皆さまは、もし実際にこの制度が始まるなら、生き残るために“売上ではなくキャッシュフロー”を意識してください。
あなたのお店が長く続けられますように。
(飲食店専門経営コンサルタント 成田良爾氏)

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