九州新幹線長崎ルートについて国と佐賀県は「ルートを特定しない環境アセスメント」の実施に合意した。着工の合意ではないが、財政負担や在来線などの論点が整理され、今後、長崎県やJR九州との協議に焦点が移る。

「フル規格整備の合意ではない」

佐賀県の山口知事と国交省の水嶋事務次官は7月17日に佐賀県庁で会見し、九州新幹線長崎ルートについて、環境アセスメントの実施に合意したと発表。合意書にサインした。

合意書にサインする国交省の水嶋事務次官と佐賀県の山口知事(2026年7月17日・佐賀県庁)
合意書にサインする国交省の水嶋事務次官と佐賀県の山口知事(2026年7月17日・佐賀県庁)
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国土交通省 水嶋智事務次官:
今回の合意はあくまで環境アセスについての合意であり、着工そのものについての合意ではない。しかし、これから佐賀県と国土交通省が連携して、西九州新幹線の整備や佐賀県の地域振興、さらには九州北部の活性化に向けた新しい一歩を踏み出すことができるのではないかと期待している

佐賀県 山口知事:
環境アセス実施までの合意であり、フル規格整備の合意ではないが、この議論を深めていくための糸口となる複雑な方程式の係数というか論点をわかりやすく示すことができたと思う

環境アセス実施範囲は最大幅12km

整備方針が決まっていない長崎ルートの新鳥栖-武雄温泉間をめぐり、佐賀県の山口知事と国交省の水嶋事務次官は去年の秋から面談を重ね協議を行ってきた。

国交省の水嶋事務次官(左)佐賀県の山口知事(右)
国交省の水嶋事務次官(左)佐賀県の山口知事(右)

水嶋次官は今年4月、ルートを特定しない環境アセスメントを提案。しかし山口知事は、佐賀空港周辺を含む南部エリアが対象に含まれていないとして難色を示し、その後の協議の行方が注目されていた。

今回の合意で注目されたのは環境アセスの実施範囲だ。
佐賀駅を通るルートがベストとの考えを示していた水嶋事務次官は会見で「今回は北陸新幹線のケースを例にしながら幅のあるアクセスを行う。ただ、現時点で特定のルートを念頭に置いているわけではない」と述べた。

国交省の水嶋事務次官
国交省の水嶋事務次官

合意文書には「北陸新幹線・敦賀-新大阪間の環境影響評価の実施状況、最大幅12kmを参考に、技術的な課題等を確認しながら進める」と明記されていている。

アセスの実施範囲について佐賀県の山口知事は「空港の近くを通るルートも入っていると認識している」と述べた上で、様々な技術の問題を検証して判断すべきとの考えを示した。

佐賀県の懸念を払拭する合意内容

これまで佐賀県は、1400億円以上の地元負担が発生すること、長崎本線が並行在来線となる場合に利便性が損なわれること、特定のルートに選択肢が絞られてしまうことを主な理由としてフル規格整備について慎重な姿勢を示してきた。

佐賀県の山口知事
佐賀県の山口知事

今回の環境アセス合意には、財政負担、在来線、地域振興について佐賀県の懸念を払拭する内容が盛り込まれている。

佐賀の負担に上限、在来線の本数確保

財政負担については、佐賀県の負担に「上限」を設け、「長崎県と佐賀県が受益の程度等を踏まえて共同して負担をすることが適当」としている。
つまり財政負担については全額を佐賀県が負担するのではなく長崎県と分け合うということになる。

また在来線については、国がJR九州に対して、在来線の経営を引き続き行うことや普通・特急列車の一定の本数の確保を求めることが明記されている。

「他の整備新幹線とは事情が異なる」

今回の合意の背景には「フリーゲージトレイン」の開発断念がある。
フリーゲージトレインは車輪の幅を変えることによって幅が異なる新幹線と在来線の両方の線路を走行できる新幹線。長崎ルートはその導入を前提に議論が進められていたが、最終的には技術面に不安があるとして国が導入を断念したという経緯がある。

山口知事は「今回の議論は国の責任が出発点」と述べ、水嶋事務次官も佐賀県は他の整備新幹線と事情が異なることを強調した。

あくまで国と県の二者による合意

水嶋事務次官は環境アセスについて来年度(2027年度)予算の概算要求に盛り込み進めていきたい意向を示した。
しかし、今回の合意はあくまで「国と県の二者」によるものでJR九州や長崎県との調整はなされていない。

山口知事は「論点が整理され、議論がしやすくなる」と述べたが、財政負担についての長崎県との協議、在来線の本数確保をめぐるJR九州との協議など、今後、一筋縄ではいかない難しい課題に直面することになる。

サガテレビ
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