激甚化する災害で避難生活が長期化する現実がある。高齢化や激甚化に伴い「災害関連死」のリスクが高まる中、私たちはどう生き延びるべきか。避難所の環境改善に取り組む企業の動きと、今すぐできる「命を守る備え」を紹介する。

19年前の震災から続く課題

2007年7月16日、最大震度6強を記録した新潟・中越沖地震が発生した。15人の尊い命が奪われ、2000人を超えるケガ人、4万棟以上の住宅被害が発生した。

大きな災害が発生すると、常に大きな課題となるのが「避難」だ。2004年の中越大震災では10万人を超える人が避難したが、中越沖地震でも約1万2000人が避難を余儀なくされた。半月が経過した時点でも約1600人が避難所生活を続け、すべての避難所が閉鎖されたのはそこからさらに1カ月以上が経ってからだった。

2007年中越沖地震の避難所の状況
2007年中越沖地震の避難所の状況
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東京通信大学特任教授で防災マイスターの松尾一郎さんは、次のように指摘する。
「2011年の東日本大震災や2019年の東日本台風の時のように、災害直後から自宅に戻れず、長期間にわたって避難生活を送るケースは多くなっている。災害が多発化・激甚化する今、避難生活をどうやり過ごすか、日頃から考えておく必要がある」

避難は決して他人事ではない。その過酷な環境を改善すべく、現在、さまざまな取り組みが進んでいる。

高齢者には命に関わる避難

避難生活が長期化する中で、最も防がなければならないのが「災害関連死」だ。
2024年の能登半島地震で被災地支援にあたった、福島赤十字病院の渡部研一医師はこう語る。「最初の段階ではケガをされた方が多いが、その次の段階で増えてくるのは、生活習慣病の悪化や感染症」

避難中に持病が悪化するなどして亡くなる「災害関連死」は、避難生活の長期化や高齢化によって増加傾向にある。能登半島地震でも、災害関連死の数は直接死の2倍を超えた。

復興庁の検討会が調査した関連死の原因
復興庁の検討会が調査した関連死の原因

復興庁の検討会が調査した東日本大震災(発災から約1年後まで)のデータによると、関連死で亡くなった人の原因(複数選択)の約半数は「避難所生活などによる肉体的・精神的疲労」が関わっていると見られている。さらに、亡くなった人の約9割は70歳以上の高齢者だった。特に高齢者にとって、避難生活の環境はダイレクトに「命の危険」へと直結する。

避難所の環境改善へ 段ボールベッド

避難生活の質を向上させるため、民間企業によるアプローチも活発化している。
身近なパッケージである「段ボール」を製造する、福島県須賀川市の神田産業。ここで作られているのが、避難所で使える「段ボールベッド」だ。開発のきっかけは2011年の東日本大震災だった。

神田産業の段ボールベッド
神田産業の段ボールベッド

同社取締役の神田雅恵さんはこう振り返る。
「震災当時、実際に避難所生活を体験した。衛生面や睡眠の質など環境的に厳しい部分が多く、段ボールを使うことでこの環境を少しでも良くしたいと考えた」

エマージェンシールームや仮設クールスポットも
エマージェンシールームや仮設クールスポットも

同社は多くの自治体と災害時の段ボールベッド提供協定を結んでいるほか、緊急の医療スペースや暑さをしのぐための「組み立て式の個室」なども製造している。
「地震だけでなく豪雨なども頻繁に起こっている。避難所の生活の質も、以前に比べてより良いものになっていってほしい」と神田さんは語る。

フェーズフリーの視点

能登半島地震の被災地では、避難所の“空気”を改善する取り組みも行われた。
導入されたのは、高性能空気清浄機「エアドッグ」だ。販売会社であるエアドッグジャパンは、能登半島の被災地に700台を寄付した。同社取締役の吉川純代さんは「空気の環境を変えることで、災害関連死のリスクの低減をしたい」と思いを語る。

能登半島地震の被災地へ 700台を寄付
能登半島地震の被災地へ 700台を寄付

しかし、発災直後の混乱もあり、すべての避難所に設置が完了したのは発災から2〜3カ月が経ってからだった。この教訓から、同社が重要視するのが「フェーズフリー」の考え方だ。

普段から学校の体育館などに空気清浄機を設置しておき、日常的に使用する。そうすることで、災害時にも「いつも通り」スムーズに機能させ、日常と非日常の垣根をなくすことができる。
「全体的な防災の取り組みができれば、日本はもっと強くなる」と吉川さんは話す。

日常と非日常の垣根をなくすことが重要
日常と非日常の垣根をなくすことが重要

避難所環境の重要性が叫ばれる一方で、渡部医師は課題も指摘する。
「避難所の住環境の改善は、なかなかスムーズに進まないのが現状だ。災害が起こってから考えようとしても、疲労や混乱で頭が回らなくなってしまう。だからこそ、事前に改善のための枠組みをしっかり決めておくべきだ」

命を守る新基準「TKBA48」

では、過酷な長期避難を乗り越えるために、何が必要なのか。
防災専門家の松尾一郎さんは、避難環境の改善に必要な要素を総称した「TKBA48」の重要性を訴える。

T(トイレ環境): 衛生的なトイレの確保
K(食事環境/キッチン): 温かく栄養のある食事
B(就寝環境/ベッド): 雑魚寝を防ぐ簡易ベッドの導入
A(屋内の空気環境/エアー): 感染症を防ぐ換気・清浄化
48: これらを「発災から48時間以内」に整えること

避難所というハード面の強化には、自治体による「KBA」などの予算化と装備品の事前整備が不可欠だ。

松尾さんは「TKB48」に「A」を加えることを提案
松尾さんは「TKB48」に「A」を加えることを提案

同時に、松尾さんは「個人の備えは、何もない平時から進めるべき」と強調する。私たちが今すぐ家庭でできる対策として、以下の準備を呼びかけている。

●常用薬の確保: 最低でも数日〜1週間分は多めにストックしておく
●携帯トイレの準備: 避難所で最も問題になりやすいトイレ対策を個人でも行う

個人でできる準備を
個人でできる準備を

高齢化と災害の激甚化が進む日本において、避難生活の環境改善は一刻を争う。災害関連死という「防げる死」を出さないための社会づくりと個人の備えが、今まさに求められている。

(福島テレビ)

福島テレビ
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