銀座の街を象徴する存在にもなっている「和光」。そのショーウィンドウは街歩きに彩りを添え、訪れる人の気持ちをわくわくさせてくれる。

一足早くクリスマスモードに変わる、ショーウィンドウの飾り付け作業に密着した。
一晩ハイピッチな飾り付け作業

午後7時、和光はこの日の営業を終え、閉館。
まだ人の流れが途切れない銀座の中心で、まずディスプレーされていたオブジェの解体から作業が始まった。

午後8時。わずか1時間でショーウィンドウの中は何もない状態に。
ここからが新しい展示の本番。大掛かりな部品が次々に運ばれてくる。

午後10時。いつのまにか人影はまばらに。
今回のテーマである星座を写した森のオブジェのパーツが運ばれ、新しいショーウィンドウの姿が徐々に現れる。
照明の当たり具合などを確認しながら、微調整が繰り返される。

午前0時。タクシーが多くなり、道ゆく人はほとんどいなくなる。
すっかり暗くなった銀座。
ショーウィンドウから漏れる明かりが、人のいない銀座の歩道を照らし出す。

午前3時。車もまばらになる時間。近くでは車線を閉鎖して道路工事が行われている。
開店に間に合わせようと作業する明かりが輝く。

予想外のトラブルも
午前6時。始発電車が走り始め、通勤する人がちらほら見受けられる。
辺りはすっかり明るくなったものの、作業はまだ終わっていない。
どうやら照明のトラブルがあったようだ。最善を尽くそうと必死に作業している。

午前9時。開店まであと2時間。ディスプレー完成。
ショーウィンドウはおもてなし
ショーウィンドウの入れ替え作業が終わったばかりのデザイン企画部の武蔵淳さんに話を聞いた。年に8回ほど変わる和光のショーウィンドウのデザインは全て武蔵さんが考えている。

武蔵淳さん:
ショーウィンドウはお店が閉まっている時間に全部準備をして生まれ変わるというのが理想だと思っています。
ショーウィンドウの役割としては、銀座を訪れる人々をおもてなしする。あとは、私たちはこのように大きな時計を持っている建物なので、時を知らせるというのがもう一つの役割だと思っています。時を知らせるというのは新しい季節をいち早く知らせるということ。
必ずしも商品だけをお見せしている訳ではなくて、私たちのおもてなしの気持ちを的確な時間、タイミングでお見せしたいということですね。

午前10時半。和光はこの日の営業を開始。新たな装いで銀座に訪れる人をおもてなしする。
撮影後記
ショーウィンドウの入れ替え。普段はなかなか目にすることができない作業に密着した。閉館後から翌日の開館までのわずか半日の間に、今までとは全く違った世界観を表現する。
どんどん姿が変わっていくのを目の当たりにした。楽しい取材だった。
新しいショーウィンドウはクリスマスを意識したもので、夜空の星座を写した森のオブジェがまず目に入る。オブジェはゆったりと揺れる仕掛けになっていて、コロナ禍の喧噪をいっときでも忘れて、おおらかな時間を感じてもらいたいと考えたそうだ。

また、ブルーを基調としたライトアップには医療従事者への感謝の気持ちが込められている。

和光は銀座の中心に位置していて、そのショーウィンドウの前には、和光を訪れる訳ではない人も当然多く行き交う。
そのショーウィンドウの前を行き交う人たちは、和光目当てではない人もいる。
デザイナーの武蔵さんは、「小さい子も、年配の方も、皆さんにとって銀座の記憶に結びつく、このウィンドウを見たという記憶と結びついてくれると、楽しい時間になるのかなと考えています」と語る。
「ショーウィンドウは、その店舗の商品を宣伝するために使う」と、これまで考えていた自分にとって、この街を訪れた人に「銀座の記憶」と「楽しい時間」をプレゼントしたいと考えていることを知り、大変感銘を受けた。

<取材・撮影・編集・執筆>石黒雄太
<撮影>矢野冬樹